研究課題/領域番号 |
22H01990
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田原 弘量 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20765276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | ナノ構造半導体 / 光物性 / 量子干渉 / 超解像 |
研究開始時の研究の概要 |
集団のナノ構造半導体を結合させることで、ナノ構造体の間で量子力学的な協力効果が現れる。この量子協力効果は発光や電気信号を強める重要な効果である。しかし、ナノ構造体間の相互作用には多数の要因が複雑に影響するため、協力効果を強めるには何が必要なのか微視的なメカニズムが解明されていない。本研究では、集団のナノ構造半導体における量子協力効果の形成過程を解明するために、時間的・空間的に高い分解能を有した新しい超解像レーザー分光法を開発する。電子状態の過渡的な位相変化(コヒーレント応答)を計測することで、ナノ構造体間の相互作用と量子協力効果の形成過程を明らかにする。
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研究実績の概要 |
電子コヒーレンスを利用した新しい分光法を開発し、集団量子システムにおける協奏的な量子光機能の発現メカニズムを解明することが本研究の目的である。ナノ構造半導体を精密に配列し結合させた超構造体では、ナノ粒子間の量子協力過程によって集団として位相のそろった状態が生み出されるため、発光や電気信号が強まると期待される。本研究ではコヒーレンス形成過程を可視化し、光放出やキャリア生成における集団ナノ構造体の量子協力過程の全貌を解明する。本年は、光電流量子干渉分光システムの構築とナノ粒子間距離を制御した試料の作製を行った。光電流を検出するこの分光法では、パルス光励起によってナノ粒子に作られた電子をナノ粒子間結合を介して外部に光電流として取り出すため、ナノ粒子間結合の特徴を正確にとらえることができる。集団ナノ粒子の結合構造を制御するために、ナノ粒子表面を覆っているリガンドを化学置換した試料を作製した。レーザーパルス光を照射することでマルチエキシトンを生成し、高次の量子コヒーレント応答を観測することに成功した。またキューブ状ナノ粒子を自己組織化させた超構造体を作製した。顕微分光システムを構築することで単一ナノ超構造体の発光測定を行い、励起強度の増加にともなって急峻に成長する発光ピークが現れることを観測した。このような増強過程は、単一ナノ粒子では生じないため、ナノ粒子集団がもたらす重要な特長を表す現象である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集団量子系における量子協力過程の解明を目指して、新しい分光法の開発と集団ナノ粒子結合系の作製を進めている。光電流量子干渉分光システムを構築することで、光励起によってナノ粒子結合系に生じる光電流信号を計測した。また、顕微分光のシステムを構築し、単一のナノ粒子超構造体からの発光スペクトルを測定した。これらの集団ナノ構造体が引き起こす光量子機能として発光増強や光電流増幅を観測し、その発現メカニズムの解明に向けて研究を進めている。集団ナノ粒子結合を制御した試料の作製にも成功しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
光励起した集団ナノ粒子で生じる電子状態間のコヒーレントな協力過程を計測するために、分光システムの構築を進める。本年度の研究では結合ナノ粒子の光電流計測と高次の量子コヒーレンスの計測に成功した。次年度は、光電流量子干渉分光におけるレーザーパルスの位相ロックを高精度化し、ナノ粒子間距離を制御した試料を比較することで、ナノ粒子間距離と量子協力効果による信号の増強度の相関を明らかにする。また、集団発光増強メカニズムの温度依存性を明らかにするために、顕微分光システムの開発を進める。
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