研究課題/領域番号 |
22H02058
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
猪熊 泰英 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80555566)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 構造有機化学 / ポルフィリン / 歪み化合物 / ポリケトン / マクロサイクル / キラル / ポルフィリノイド / 歪み |
研究開始時の研究の概要 |
ポルフィリン化合物は、機能性有機色素や金属配位子として世界中で盛んに研究されている。その中で、構成要素のピロールが1つ少ない環縮小ポルフィリンは、合成法の乏しさからほとんど研究が進んでいない。本研究では、2021年に発見された脂肪族ポリケトンを鍵前駆体とする環縮小ポルフィリノイドCalix[3]pyrroleの合成法を基盤として、Calix[3]pyrroleのヘテロ原子修飾や鋳型原子の導入を行い、環縮小ポルフィリン類を網羅的に合成し、それらの反応性と機能を追求する。
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研究実績の概要 |
歪みを持つcalix[3]pyrrole類縁体の網羅的合成と反応機構解析から、巨大なcalix[12]タイプ化合物の合成に至る歪み誘起環拡大反応を発見した。環状フランーテトラケトン前駆体に対して、ローソン試薬によるチオフェン環生成、続くPaalーKnorrピロール合成を行うことで、全て異なるヘテロ芳香環で構成されるcalix[3]pyrrole類縁体、calix[1]furan[1]pyrrole[1]thiopheneを合成した。この化合物は、室温下でヘテロ芳香環の環反転が十分に遅いため、チオフェンの面性不斉に由来する2つのエナンチオマーを分割できることが分かった。この化合物は、半減期約2時間でラセミ化を起こすことが分かったが、N-メチル化した誘導体では環反転によるラセミ化を完全に止めることができた。このcalix[1]furan[1]pyrrole[1]thiopheneは、calix[3]pyrrole同様に環内のNHや硫黄原子の立体反発に由来するエネルギーが環歪みエネルギーとして蓄えられていた。そこで、この化合物を酸性条件下に曝したところ、環開裂に続く多量環化反応が起こり、calix[6], [9], そして[12]pyrrole類縁体を単離することに成功した。得られた中で最大のマクロサイクルは、calix[4]furan[4]pyrrole[4]thiopheneであり、この環内ではピロール、フラン、チオフェンが規則正しく配列していることも分かった。さらに、単結晶X線構造解析から、このcalix[12]タイプの巨大マクロサイクルがS4対称性を持つ風車型コンフォメーションを有することを明らかにした。この結晶構造は、同類縁体で知られている中では最大の大きさのものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
歪んだcalix[3]pyrroleの特異な反応性として、初年度では巨大calix[12]pyrroleまでシークエンス選択的に合成可能な歪み誘起環拡大反応の発見に至った。この反応はポルフィリン類縁体の中でも類を見ない形式の反応であり、さらには巨大アニオン認識に不可欠とされる巨大内部空孔を持つcalix[n]pyrroleマクロサイクルの効率的合成法としても価値の高いものとなった。 このように、予想外に素晴らしい反応と化合物が見つかったことで、本研究は当初の予想以上に進展していると考えられる。今後は、ヘテロ芳香環の異なる組み合わせでも同様な反応条件を試みることで、より一層の進展が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3つのヘテロ芳香環から成るcalix[3]pyrrole類縁体を、フラン、チオフェン、チアゾール、イミダゾールなどの異なる5員環ユニットから作り出すことで、新たな歪み誘起環拡大反応の生成物のみならず、発光特性、アニオン認識、金属との錯体形成など歪んだ環縮小ポルフィリン類縁体にしかできない特性を見つけ出す予定である。 また、calix[3]pyrroleのホウ素錯体が示す特異なプロトン化挙動、そして、ホウ素との強固な結合の理由についても詳細機構と共に解明を目指す。
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