研究課題/領域番号 |
22H02309
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永井 啓祐 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (30648473)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 耐水性 / イネ / 茎 / 通気組織 / 環境適応 / 洪水耐性 / イネ科作物 / 低酸素応答 / 茎構造 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の急激な気候変動により多発する洪水によって、コムギやトウモロコシにおいて甚大な農業的損失が報告されているが、同じイネ科作物であるイネは水田のような多量に水が存在する環境においても生育が可能である。このことは、コムギなどが持っていない耐水性機構をイネが獲得していることを示唆する。そこで本研究では、主要イネ科作物のうちで唯一、水田環境に適応しているイネを洪水耐性のモデル植物と考え、イネの器官の中でも特に研究例が少ない茎に注目し、イネの茎が有する高い気体透過性の分子メカニズムを明らかにすることで、新たな耐水性作物の創出に向けた分子基盤の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
コムギ、トウモロコシ、イネは全人類の必要カロリーの約40%を供給している重要な穀物である。これらの作物は全てイネ科に属しており基本的な組織構造は類似している。しかし、近年の気候変動に伴い世界各地で洪水が発生しており、コムギ、トウモロコシにおいて甚大な農業的損失が報告されている。一方、同じイネ科作物であるイネは水田という湛水環境で生育が可能である。このことは、コムギなどが持っていない耐水性機構をイネが獲得したことで水田環境におけるニッチを獲得したことを示唆する。本研究課題では、主要イネ科作物のうちイネだけが湛水条件下において生存が可能であることに着目し、イネの茎における耐水性機構の解明および農業的応用を目指す。 2022年度は水生イネ科植物および陸生イネ科植物の節における細胞形態の観察を行った。その結果、イネ科の進化系統とは関係なく、水生イネ科植物は節に離生通気組織を形成しており、これによって湛水条件下でも生存が可能であることが示唆された。さらに、節の通気組織形成と酸素透過性の関連を検証するために光学酸素センサーoptodeを用いた節の酸素透過性を検証するための実験系の確立を行った。この実験系を用いて水生イネ科植物および陸生イネ科植物の節における酸素透過性を検証したところ、陸生イネ科植物の節は極めて低い酸素透過性を示したのに対して、水生イネ科植物の節js高い酸素透過性を有していることが明らかとなった。以上の結果から、水生イネ科植物は節において通気組織を形成し、酸素透過性を向上させることで湛水環境での生存を可能にしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の形態学的解析および生理学的解析においてイネ科の節に形成される離生通気組織の発見および重要性を明らかにすることができた。また、生理学的解析においては新たな実験系の確立を行うことができ、これにより植物の茎の酸素透過性をリアルタイムで計測することが可能となった。当初の研究計画通りに進行しており、これらの内容に関して現在、論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
節に形成される離生通気組織における気体体積量に関しては未解明である。そのため、今後はX線マイクロCTスキャンによる解析を行い体積量の算出を試みる。また、離生通気組織形成の環境応答性に関しても検証を行う。 プログラム細胞死によって形成される破生通気組織に関しては分子メカニズムが明らかになりつつあるのに対して、細胞間隙が拡張することで形成される離生通気組織に関する形成制御メカニズムに関しては不明な点が多い。そこで今後はチューブリン抗体および細胞壁構成成分特異的抗体を用いた抗体染色を行うことで離生通気組織形成に関する組織化学的解析を行う。
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