研究課題/領域番号 |
22H02434
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中尾 実樹 九州大学, 農学研究院, 教授 (50212080)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 魚類 / 体表粘液 / 免疫 / 補体 / 生体防御 / コイ / 硬骨魚類 / 活性化 / C3 |
研究開始時の研究の概要 |
液性自然免疫因子である補体系の成分は主に血漿および血球に存在し、血中あるいは組織液中で機能すると考えられてきたが、申請者らは近年、魚類において感染防御の第一線として重要視される体表粘液中でも補体の活性化が起こることを発見した。本研究は、近年魚類において重要性が広く認知されてきた粘膜免疫における補体系の機能を解明することを目的とする。本研究によって、魚類体表粘液中における補体活性化の分子機構と白血球へのエフェクター作用が解明されれば、粘膜における自然免疫能の向上や、粘膜を介した浸漬ワクチンによる獲得免疫の新たな強化法の開発に貢献できる。
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研究実績の概要 |
血中の補体系を構成する古典経路(抗体依存的)、レクチン経路(マンノース結合レクチンによる糖鎖認識依存的)および第二経路( 特定の認識分子の関与無しに微生物成分によって自発的に活性化)が、コイ体表粘液中ではどのような物質で活性化されるかを検討した。その結果、哺乳類の補体第二経路・レクチン経路を活性化することが知られているZymosan(パン酵母細胞壁画分)によって、コイ体表粘液中の補体が活性化されることが確認できた。さらに、補体第二経路の強力な活性化物質として知られるウサギ赤血球に対するコイ体表粘液の溶血活性を検討したところ、2価陽イオン依存的な溶血活性が検出され、補体の細胞障害経路が働いていることが示唆された。ただし、抗コイC9を用いたイムノアッセイでC9の結合は検出できていないため、細胞障害経路の活性化についてはさらなる検討が必要である。補体活性化に伴う補体成分C3活性化産物の挙動を解析したところ、活性化物質であるIgMをコートしたELISAプレートに対して、コイC3の活性化断片であるC3bおよびiC3bの結合が認められた。このELISA法により、今後、コイ体表粘液の補体活性化能を定量的に評価することが可能になった。ELISAにおける膜侵襲複合体の沈着を抗コイC5および抗コイC9を用いたイムノアッセイによって試みたが、ここでもC5やC9は検出できなかった。細胞障害経路の活性化を、同経路の構成成分の沈着で直接証明することはできなかったが、ウサギ赤血球に対する溶血活性は認められるので、今後、イムノアッセイの検出感度を高めて再検討する。 粘液中補体活性化の初期成分の検討については、IgMが関与する反応とIgMに依存しない反応が認められた。この実験では、標的異物としてコイの病原細菌を使用したので、体表粘液中補体の実際の病原体への反応が実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、補体活性化経路のなかで細胞障害経路が体表粘液中でも機能しうるかどうか、については、溶血活性の検出によって、その可能性が高いことが示唆された。実際の細胞障害経路成分の標的への結合をタンパク質レベルで証明できていない点が、要検討事項として残されている。 また、補体活性化の初期成分については、IgMが関与する補体古典経路の活性化を証明できた点は有意な進展であると考えられる。 以上の点から、本年の進捗は(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
コイ補体系の細胞障害経路を構成する成分のうち、C5, C9の検出については、イムノアッセイの感度を高めて再検討する。感度の向上には、ビオチン・アビジンによるシグナルの増幅および化学発光によるシグナルの検出を導入する。さらに、障害経路の中間で活性化を媒介するC7の体表粘液中での関与も検討に加えたいが、これには抗C7の作成が必要である。免疫原の準備ができ次第取り組む予定である。
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