研究課題/領域番号 |
22H02480
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
中村 進一 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (00322339)
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研究分担者 |
肥塚 信也 玉川大学, 農学部, 教授 (30433866)
大津 直子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40513437)
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子バイオ基盤研究部, 上席研究員 (20391287)
伊澤 かんな (佐藤かんな) 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (40456603)
野副 朋子 明治学院大学, 教養教育センター, 准教授 (90590208)
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | グルタチオン / カドミウム / 細胞壁 / アブラナ |
研究開始時の研究の概要 |
グルタチオン(GSH)は様々な生理活性を持つペプチドである。研究代表者は植物の根に部位特異的に与えたGSHが根の細胞壁におけるカドミウム(Cd)の保持、地上部基部(茎と根の境界部分)におけるCdの返送など複数の分子機構を活性化し、植物体の地上部へのCdの移行と蓄積を選択的に抑制することを明らかにした。 本研究ではGSHに応答して根で発現量が有意に変化する遺伝子がコードするタンパク質の中でもCd動態への影響が考えられたペクチンメチルエステラーゼ・ディフェンシンの生理的機能の解明や根におけるGSH動態の制御機構の解明等によって、GSHが根の細胞壁で選択的にCdの保持を活性化する現象の分子機構を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではトランスクリプトーム解析の結果、グルタチオンに応答して根で発現量が有意に増加し、カドミウム動態への影響が考えられるペクチンメチルエステラーゼ・ディフェンシンなどの機能を解析すること及び根におけるグルタチオン動態の制御機構を明らかにすることでグルタチオンがアブラナ根の細胞壁で選択的にカドミウムの保持を活性化する現象の分子機構の解明を目指している。本研究によって植物根におけるカドミウム保持機構に新たな知見をもたらし、重金属(カドミウム)汚染土壌での作物栽培を可能にする新技術の創出に繋げていきたいと考えている。 令和4年度はグルタチオンに応答して発現変動する遺伝子の中でも主にディフェンシンの機能解析に注力した。バイオインフォマティクス解析の結果、発現応答したディフェンシン遺伝子と高い相同性を持つ遺伝子がアブラナには6つ存在していることが明らかになった。現在、それぞれのディフェンシン遺伝子の発現解析を進めている。アブラナ根におけるグルタチオン動態の制御機構の解明するため、根を分画して、グルタチオン代謝に関連するチオール物質の含量及びグルタチオンの酸化還元状態を評価するための実験系を確立した。また、根においてグルタチオン合成能を高めたアブラナを作出する実験にも着手した。複数の系統でグルタチオン合成酵素遺伝子の導入を確認している。加えて、根に部位特異的に与えたグルタチオンはカドミウム以外の重金属元素動態にも影響を及ぼしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルタチオンに応答して発現変動する遺伝子の中でもディフェンシンの機能解析ではバイオインフォマティクス解析を実施して、数多く存在するアブラナディフェンシン遺伝子の中から解析対象遺伝子を絞り込むことができた。その後、解析対象のディフェンシン遺伝子の発現解析実験にも着手している。アブラナ根におけるグルタチオン動態を明らかにするため、根を分画してグルタチオン代謝に関連するチオール物質含量及びグルタチオンの酸化還元状態を評価する実験系を確立できた。この実験系の確立は植物根におけるグルタチオン動態制御機構の解明への端緒になると期待している。また、グルタチオン合成能を高めた形質転換体の作出実験では導入対象遺伝子がアブラナに導入されていることを確認できた。この形質転換体は今後グルタチオンが関与する重金属動態の制御機構を明らかにするための強力なツールとなり得る。以上の点から本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果に基づき、それぞれの研究課題を継続して検討していく。その中でも令和5年度はアブラナ根のグルタチオン動態の制御への関与が予想されるグルタチオン代謝に関連する酵素の機能解析に注力したいと考えている。並行して、細胞壁におけるグルタチオンが活性化するカドミウムの保持機構の解明にも取り組んでいきたい。 また、令和4年度に作出したアブラナ形質転換体のグルタチオン合成能および重金属蓄積能の評価も進めていくことができればと考えている。
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