研究課題/領域番号 |
22H02557
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 豪 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (20263204)
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研究分担者 |
安居 輝人 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ヘルス・メディカル微生物研究センター, プロジェクトリーダー (60283074)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 破傷風毒素 / クライオ電顕 / ダイナミクス / 抗体複合体 / 時分割解析 / 低温トラップ / 構造変化 |
研究開始時の研究の概要 |
破傷風毒素(TeNT)が中枢神経系の細胞でのみ作用する膜透過の分子機構について還元状態からS-S結合の形成に伴って膜透過ドメイン(Hn)が回転し、TeNTが活性型に変化する様子をクライオ電顕を用いた低温トラップ法による時分割構造解析によって明らかとすることを目的としている。また、ヒト由来の機能性抗体のエピトープも解析して、活性化メカニズムと抗体による不活化機構との相関を明らかとし、細胞膜侵入の分子機構解明を行う。
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研究実績の概要 |
破傷風毒素(TeNT)は、同じClostridium属のボツリヌス毒素(BoNT)と細胞膜透過の分子機構が同一であるにも関わらず、BoNTが末梢神経系で作用するのに対してTeNTは中枢神経系のみで働くことが知られている。本申請では、還元型(不活性型)の破傷風毒素(TeNT)をクライオ電顕で用いるグリッドに固定化し、低pH下で酸化剤を添加して酸化型(活性型)へと構造変化させた場合の変化の過程を低温トラップ法で解析し、中枢神経系のみで膜侵入が起こる分子機構について考察することを目的としている。本目的を達成するためには、令和3年度に導入したクライオ電顕を稼働させる必要があり、令和4年度はそのほぼ全てのエフォートを装置の立ち上げに注力した。測定装置の制御装置の部品交換をしたり、1つ1つ原因を検討してはそれを確認したりする作業を繰り返しながら測定装置の立ち上げを行った結果、令和4年度の年度末に入ってから漸く装置が稼働しはじめ、不安定ながらもTEM画像の連続撮影が可能となる場面が徐々に増えてきた。 一方で他の測定装置を用いてグラフェンを酸化し、エポキシ基を導入したクライオ電顕用の新規グリッド(EG-Grid)を開発し、グラフェン膜上にタンパク質を固定化して効率よく構造解析が可能となることを実証し、欧文雑誌に投稿し受理された(Fujita, J. et al., Scientific Reports, 2023)。 実際のEG-Grid上に破傷風毒素(TeNT)を固定化し、それに反応溶液を混合してから凍結するまでの時間を調節して構造変化を追う作業は令和5年度に持ち越すこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該グループでは、グラフェンに気相反応で酸素官能基を導入できる革新的酸化反応の発見を基にしてクライオ電顕用のグラフェングリッドにヒドロキシ基の導入とそれに続くエポキシ基の導入によってEG-Grid(Epoidized Graphene grid)の開発に成功している。これを用いればグラフェン膜上に様々なタンパク質を固定化し、クライオ電顕でデータ収集を行う際のサンプル調製に掛かる時間を大幅短縮できることを実証し、高効率に構造解析が可能となることを欧文雑誌に発表した(Fujita, J. et al., Scientific Reports, 2023)。一方で、革新的酸化剤を用いて導入したヒドロキシ基に対して様々な化学修飾も可能であり、脂質膜を形成させて、エポキシキのみを導入した場合と明らかに異なる粒子の形を反映したTEM画像が得られることも実証し、第143回日本薬学会にて発表した(学生優秀発表賞(口頭発表の部))。 残念ながら本申請の目標となっている破傷風毒素(TeNT)を固定化し、溶液の条件を変化させたときの構造変化を低温トラップで捉えるというプロジェクトについては残念ながら装置の立ち上げにほぼエフォートを割いてしまったために成果が得られていないが、次年度以降に挑戦する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
革新的酸化剤を用いて導入したヒドロキシ基に対して様々な化学修飾が可能であり、種々の化学官能基を導入した新規グリッドの開発が進んでいる。一方で、新しいグリッドを搭載してデータ収集を可能とする装置の立ち上げにも目途が立ちつつある。新たに導入したクライオ電顕の装置(日本電子社製CryoARM200)を用いて研究目的である破傷風毒素の酸化型と還元型の構造解析に取り組む予定である。なお、既に高純度に精製したサンプルを少しずつ調製し、ストックすることができている。先ずは還元型の破傷風毒素をグリッド上に固定化し、構造解析が可能か検討する予定である。
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