研究課題/領域番号 |
22H02589
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
西坂 崇之 学習院大学, 理学部, 教授 (40359112)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
|
キーワード | IV型線毛 / バクテリアIV型線毛 / 分子モーター / ATPase / 3次元位置検出顕微鏡 / アーキアモーター |
研究開始時の研究の概要 |
リニアモーターとして知られている「バクテリアIV型線毛 重合/脱重合 マシナリー」に、回転モーターとしての機能が内在しているという科学的仮説を、4年間の研究期間内で厳密に証明する。申請者がこれまでに開発した、生体分子を高精度で検出する光学顕微鏡技術を駆使し、線毛が一方向に回転しながら細胞本体に引き込まれる様子をライブイメージとして直接的に可視化する。最終的には、線毛の構造およびアーキアべん毛モーターとの類似性を詳細に検討することで、分子モーター動作原理の本質的な原理構築を行う。
|
研究実績の概要 |
線毛の重合・脱重合装置によって固体表面を自在に動き回ることのできるシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803 株をモデル生物として扱った。細胞本体はガラス表面に吸着させ、線毛の引き込みについては、微小蛍光粒子を通じて可視化した。この手法は既に我々のグループによって2017年に既に確立しているが、主に実験を進めた修士の学生が改めて実験系の再現を行った。引き込みの様子についても、原著論文の中で報告しているが、これまでに一方向性の回転を示唆する軌道は得られていない。これは当然のことで、光学顕微鏡は2次元平面の観察に限定されているためである。『移動しながらの回転=コークスクリュー運動』の検出には、深さ方向を加えた3次元の座標検出が必要になるからである。そこで2008年に研究室で開発した、2次元の画像から3次元の情報を取り出し、なおかつナノメートルの精度で粒子を追跡する光学顕微鏡による観察を進めた(Yajima, ... & Nishizaka, Nat Struct Mol Biol, 2008. 15: 1119-21)。精製した分子モーターに対して用いられてきた方法論を、生きたバクテリアの一個の細胞に対し、初めて応用したことになる。バクテリアの生育条件に加え、観察に用いるプローブの粒子径や溶液の粘度、撮影条件を絞り込み、これまで2次元でしか論じられてこなかったⅣ型線毛の動きの実体が、世界で初めて、3次元的に明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
未だ世界で誰も可視化していない「線毛の回転運動の検出」の可視化に成功した。定量化にまで至った例数は、まだ決して多くないものの(14例)、そのらせん軌道については90%が左巻きであったことは、大きな発見である。さらにはらせんのピッチが 20 nm であり、この数字をもってこれまで明らかになっている他のバクテリアの線毛の構造との検討が可能になった。研究の初年度に、データと先行文献の情報を定量的に比較するということは、当該プロジェクトの計画時には予想しておらず、この点において予想以上の進展が成されていると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
リニアモーターとして知られている「バクテリアIV型線毛 重合/脱重合 マシナリー」に、回転モーターとしての機能が内在しているという科学的仮説を、今後の研究期間内で厳密に証明する。申請者がこれまでに開発した、生体分子を高精度で検出する光学顕微鏡技術を駆使し、線毛が一方向に回転しながら細胞本体に引き込まれる様子をライブイメージとして直接的に可視化する。最終的には、線毛の構造およびアーキアべん毛モーターとの類似性を詳細に検討することで、分子モーター動作原理の本質的な原理構築を行う。 昨年度までは Synechocystis GT株(前助教の中根大介氏と共に光走性に関する重要な知見を報告、PNAS(2017))を対象に線毛の回転の可視化を行っていたが、今後は好温性の棒状バクテリアである Thermosynechococcus vulcanus を観察対象として採用する。この生物は適性温度45-59℃であり、細胞の極にⅣ型線毛が局在する.線毛の位置特定が容易であることと、指摘温度よりあえて低い温度において顕微鏡観察を行うことができるため、モーターの機能を落とす(つまりは回転の速度もそれに応じて落ちる)ことができるのでは、という見込みである。高速度カメラによる観察を行っているが、観察対象のキネティクスが減ずれば、相対的に角度検出の時間分解能が上昇するのではという見込みである。
|