研究課題/領域番号 |
22H02653
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 大和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80785444)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 葉緑体分裂 / ミトコンドリア分裂 / 原始真核生物 / 細胞内共生オルガネラ / オルガネラ分裂 |
研究開始時の研究の概要 |
葉緑体とミトコンドリアは始原真核細胞へ共生したバクテリアを起源にもつため、細胞内で新たにゼロから創り出すことはできず、タンパク質複合体である「オルガネラ分裂リング」によって物理的に分断されることで増殖することが出来る。しかしながら分裂リングがオルガネラを切断する本質的なしくみは、未だ殆ど明らかではない。本研究計画では、申請者が提案するオルガネラ分裂リングの動作機構「スライディング収縮モデル」を検証するため、オルガネラ分裂実験系およびリアルタイム超解像観察法によって分裂リングの分子動作機構解析を実施する。同解析により、オルガネラ分裂リングを駆動する分子機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
葉緑体は始原真核細胞へ共生したバクテリアの祖先を起源に持つ。このため、葉緑体は独自の遺伝子発現システムを持つほか、細胞内でde novoに創り出すことは出来ず、分裂することによってのみ数を増やすことができる。葉緑体が分裂する仕組みは長い間明らかではなかったが、1980年代以降、電子顕微鏡観察によって葉緑体の分裂面に電子密度の高いリング構造体『PDリング(Plastid-dividing ring)』が発見された(Kuroiwa et al. 1998 Int. Rev. Cytol.)。さらにその後、葉緑体の分裂にかかわる遺伝子が次々と同定され、これらは巨大なタンパク質複合体である葉緑体分裂リングとして機能していることが明らかとなってきている(Yoshida et al., 2010 Science; Yoshida et al., 2017 PNAS)。だが、いくつかの仮説はあるものの、オルガネラ分裂リングが「どのような分子動作機構」によって駆動し、オルガネラを切断しているのかは、依然として明らかとなっていない。 本研究計画では、オルガネラ分裂増殖機構を真に理解するためには、既存の手法に囚われず革新的な取り組みによって同研究に挑む必要があると考え、様々な試みを行っている。本年度は、単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae(シゾン)から単離した分裂期葉緑体を用いて、葉緑体分裂リングの活性を制御することにより、世界で初めてin vitro条件下で単離葉緑体を分裂させる『単離オルガネラin vitro分裂誘導系』を確立することに成功した(Yoshida and Mogi, in preparation)。同解析により、これまで全くわかっていなかったオルガネラ分裂リングのキネティックメカニズムの全貌が明らかになり始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画初年度においては、シゾンより単離した分裂期葉緑体を用いたin vitro実験系を構築し、単離葉緑体のin vitro分裂誘導実験を試みた。同解析系は予想よりも順調に構築することができ、GTPの有無によって分裂期葉緑体をin vitro条件下で分裂誘導することに成功している。この初期解析結果を基に、現在論文投稿の準備を進めている(Yoshida and Mogi, ion preparation)。また同手法を応用し、ミトコンドリアのin vitro分裂誘導系も構築できる可能性が高いため、系の確立を試みている。 いずれの解析においても、これまで全くわかっていなかった細胞内オルガネラの分裂増殖機構の基本原理を解明できる可能性が高く、引き続き詳細な機能解析を行う予定。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目においては、葉緑体分裂リングを構成するタンパク質分子のコピー数と、それらが創り出す力学的パワーの測定を試みる。精製した蛍光タンパク質1分子の蛍光輝度に基づき、単離葉緑体分裂リングの蛍光輝度を測定することによって、分裂リングを構成するタンパク質コピー数を測定する。また次に、葉緑体分裂リングの動作機構解析として、蛍光褪色回復法によって、葉緑体分裂リング上の分子の動態を解析する。同目的のため、ピンポイントフォトニクス社製の光刺激装置Pixel illuminator-Cを導入し、解析を行う。試験的に行った解析では、想定した解析を行うことが可能であることを確認している。同装置を用いて、GTPaseタンパク質Dnm2やグリコシルトランスフェラーゼタンパク質PDR1、さらにFtsZタンパク質など、分裂リングを構成するタンパク質1種類ずつ解析を実施し、葉緑体分裂リングの分子レベルでの動態解析を試みる。
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