研究課題/領域番号 |
22H02703
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
安房田 智司 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60569002)
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研究分担者 |
神尾 道也 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30578852)
邉見 由美 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (40829206)
近藤 湧生 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (10965099)
幸田 正典 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 客員教授 (70192052)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | 認知進化生態学 / 相利共生 / 寄生 / 魚類 / 甲殻類 / テッポウエビ / コミュニケーション / 音声 |
研究開始時の研究の概要 |
海産動物では多様な共生/寄生関係が知られるが、これらの関係は、単純な生得的・反射的行動で維持されると長年考えられてきた。本研究は、「魚類や甲殻類が高度な認知能力を持つ」という新たな「認知進化生態学」の視点から、エビ-ハゼとクマノミ-イソギンチャクの相利共生、ウニ-カニの寄生を対象とし、共生/寄生の実態と維持機構、異種間の情報伝達機構を野外観察や水槽実験、生化学分析により解明する。本研究の成果は、海産動物の共生/寄生の理解に貢献するだけでなく、動物全体の「賢さ」の見直しにも繋がる重要な課題である。
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研究実績の概要 |
本研究では、(1)テッポウエビ-ハゼ、(2)クマノミ-イソギンチャクを相利共生系のモデル、(3)カニ-ウニを寄生系のモデルとし、野外調査、水槽実験、生化学分析などの手法を用いて、認知進化生態学の視点から研究を実施し、共生の実態と維持機構、異種間の情報伝達機構を解明することを目的とする。 (1)テッポウエビとハゼの相利共生関係は多様で、義務的共生種もいれば、希薄な繋がりの日和見的共生種もいるが、なぜ多様なのかは不明であった。しかし、私たちのこれまでの研究で、餌の乏しい環境では、餌で繋がる義務的共生関係を築くと分かった。そこで、共生関係の繋がりの強さが環境中の餌量で決まるという仮説(餌量仮説)を立て、2022年度は異なる餌環境でエビ4種ハゼ7種の行動を比較し、相利共生の繋がりの強さと環境との関係を調べた。舞鶴や西表島、愛南町での野外調査の結果、エビとハゼの共生関係の繋がりの強さが環境中の餌量の違いによって決まることが初めて示された。この他、水中録音を行った結果、テッポウエビが鉗脚(はさみ)を使って出す音、ハゼが出す音声は、同種同性個体に利用すること分かった。一方、種間のコミュニケーションは音を使ってやり取りしているわけではないことが明らかになった。 (2)クマノミの宿主イソギンチャクに対する給餌行動の実態と種間関係に与える影響を明らかにするため、野外調査を実施した。クマノミはイソギンチャクの食性とクマノミ自身の状態に合わせて、積極的かつ状況依存的に宿主に給餌を行うことが明らかとなった。また、クマノミの宿主イソギンチャクへの給餌が、宿主の成長量を増大させることが分かった。現在、論文の投稿を準備中である。 (3)ゼブラガニの雄が雌のフェロモンに反応する様子を水槽実験で観察した。雌の飼育水を雄の水槽に入れると、ウニの下に隠れていた雄のカニはウニの上に移動することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容の(1)テッポウエビとハゼ共生関係の実態解明については、これまでの調査地である愛媛県愛南町に加え、佐渡島、舞鶴、西表島で行ったことで、大きな進展があった。餌環境が実際に泥場と砂地で異なるのかを調べた結果、佐渡島、舞鶴、西表島のいずれも漁港内や川の河口近くの泥場の方が、愛南町や西表沖合の砂地よりもベントス量が多いことが分かった。エビ4種ハゼ7種の行動解析の結果、餌量の異なる2地点ではエビとハゼの行動が大きく異なり、エビとハゼの共生関係の繋がりの強さが環境中の餌量の違いによって決まることが初めて示された。これら新規の結果によって、餌量仮説の証明に向けて大きく前進した。また、認知進化生態学研究としての、エビとハゼのコミュニケーションも明らかになってきており、今後の水槽実験に繋がる結果となっている。エビとハゼの餌量仮説についての研究成果は、現在、論文を執筆中である。 研究内容の(2)クマノミの宿主イソギンチャクに対する給餌行動の実態と種間関係に与える影響については、ほぼ結果が出揃い、現在投稿間近の状況である。これまでは愛媛県愛南町の個体群のみを扱ってきたが、沖縄やアメリカの研究者と連絡を取り合っており、2023年度の沖縄やパプアニューギニアでの研究に向けての準備を整えた。 研究内容の(3)ゼブラガニの雄による宿主ラッパウニの行動操作については、野外で採集してきたゼブラガニを用いて水槽実験を行った。まだ、予備的な実験に留まるが、2023年度のフェロモン分析、行動実験に向けて準備を進めることができた。 以上のように、2022年度はCOVID-19の影響を大きく受けることなく国内での野外調査が実施できたこともあり、共生の実態と維持機構、異種間の情報伝達機構を解明に向けて認知進化生態学的研究を予定通り進めることができた。このことから、概ね順調に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度に引き続き(1)テッポウエビ-ハゼ、(2)クマノミ-イソギンチャクを相利共生系、(3)カニ-ウニの寄生系をモデルとして、認知進化生態学の視点から研究を進める。野外調査を中心に研究を行うが、認知については水槽実験を、フェロモン分析については実験室で生化学分析や行動実験を行う。 (1)2022年度の研究から、エビとハゼの共生関係の繋がりの強さが環境中の餌量の違いによって決まることが初めて示されたが、これまでの研究は種間比較(エビ4種ハゼ7種)であり、種の違いが行動の違いを生み出している可能性を排除できない。2023年度は、ベントス量が徐々に変化するような地点で同種のエビハゼペアを観察することで、餌量仮説を証明する。またエビの認知能力の高さを解明するため、テッポウエビの個体識別能力を水槽実験により調べる。さらに、巣内が見える水槽を用いて、巣内でのテッポウエビとハゼのコミュニケーションを明らかにする。 (2)クマノミの宿主イソギンチャクに対する給餌行動の実態については、学術雑誌へ発表する。執筆と並行して、野外調査を実施する。愛媛県愛南町に生息するクマノミは1種だけであるが、沖縄とパプアニューギニアには同所的にクマノミが数種生息している。クマノミの給餌行動がクマノミ属に広く見られること、さらに自分の宿主イソギンチャクとそうでない宿主とは、区別し、宿主選択的に給餌行動を行うことを検証する。また、これらの種組成の違いが、社会構造に大きく影響を与えている可能性が高く、クマノミとイソギンチャクの種間関係だけでなく、種内関係についても調査する。 (3)2023年度は、雄の行動を引き起こす未同定の匂い物質である雌フェロモンを同定する。雌の尿中の物質を各種クロマトグラフィーで分画し、フェロモン活性物質を室内行動実験で確認しながら単離し、NMRと質量分析で化学構造を決定する。
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