研究課題/領域番号 |
22H02825
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
大森 義裕 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (90469651)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 脊椎動物モデル / ゲノムワイド関連解析 / シングルセルRNA-seq解析 / キンギョ / 疾患モデル動物 / 網膜変性症 |
研究開始時の研究の概要 |
キンギョはフナを原種とする観賞魚でありデメキンやランチュウをはじめとした80系統以上の遺伝的に確立された品種が存在する。これら多様な表現型はヒト遺伝性疾患と共通するものも多い。私たちは、その分子機構の解明を目指し、これまでにキンギョ全ゲノム解読を完了しゲノムワイド関連解析(GWAS)により表現型の原因となる遺伝子群の同定を進めている。これまでに見出した視覚関連疾患と骨形成関連疾患に関連する遺伝子変異の同定をゲノム解析により行い、ヒト疾患の発症機構の解明に繋げる。原因となるメカニズムを明らかにし基礎医学の分野に貢献するとともに、新たなヒト疾患モデル動物としてのキンギョの研究基盤の確立を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は、研究実施計画の中でも特に②キンギョ変異体の眼球組織を用いてシングルセル遺伝子発現解析(scRNAseq)やシングルセルエピジェネティック解析(scATACseq)などのシングルセルレベルのゲノム機能解析を行うことで網膜関連疾患の発症機構の解明に対して重点的な研究を実施した。キンギョの網膜に対しプロテアーゼ処理を行いインタクトな状態でシングルセルとして分散するための条件を特定し、シングルセルRNA-seq 解析やシングルセルATAC-Seq解析を行った。この解析には10x Genomics Chromium の1 細胞解析の系を用いた。さらに、オープンクロマチン領域の解析が可能なシングルセルATAC-SEQ解析を行った。近年に全ゲノム重複した脊椎動物では世界で初めてシングルセルレベルで重複遺伝子の発現進化の解析に成功した。キンギョの網膜において、全ゲノム重複後の1400万年という比較的短い時間に306ペアの遺伝子対が新たな発現パターンを獲得したことが明らかになった。さらに、シングルセルレベルで全ゲノム重複後に重複した遺伝子対の非対称サブゲノム進化が進行していることが証明された。これらの発見は、現在も謎の多い全ゲノム重複という現象の全体像の解明に向けた重要な一歩となる。また、キンギョをモデルとしたヒトの網膜関連疾患の研究に繋がると期待される。これらの研究内容は、査読付き英文科学雑誌へ投稿し掲載された。学会での発表、プレスリリース、週刊誌や新聞などへの掲載を通じて広く情報発信を行った。また、その他にもキンギョ品種の雑種交配とGWAS解析に関する研究をすすめ、一般にむけた著書(単著)を出版し情報発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キンギョ変異体の眼球組織を用いたシングルセル遺伝子発現解析(scRNAseq)やシングルセルエピジェネティック解析(scATACseq)については、これまでに、キンギョの網膜に対しプロテアーゼ処理を行いインタクトな状態でシングルセルとして分散するための条件を特定し、シングルセルRNA-seq 解析やシングルセルATAC-Seq解析を行った。この解析には10x Genomics Chromium の1 細胞解析の系を用いた。さらに、オープンクロマチン領域の解析が可能なシングルセルATAC-SEQ解析を行った。近年に全ゲノム重複した脊椎動物では世界で初めてシングルセルレベルで重複遺伝子の発現進化の解析に成功した。キンギョの網膜において、全ゲノム重複後の1400万年という比較的短い時間に306ペアの遺伝子対が新たな発現パターンを獲得したことが明らかになった。さらに、シングルセルレベルで全ゲノム重複後に重複した遺伝子対の非対称サブゲノム進化が進行していることが証明された。これらの発見は、現在も謎の多い全ゲノム重複という現象の全体像の解明に向けた重要な一歩となる。また、キンギョをモデルとしたヒトの網膜関連疾患の研究に繋がると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
大規模キンギョ品種GWAS解析による新たな疾患関連遺伝子の同定としては、以前に行った品種解析の規模では、変異体の原因を同定することが困難だった表現型に関してより大規模な解析を行うことで原因遺伝子の同定を試みている。変異をもつキンギョ品種と、野生型の表現型を持つ品種の雑種交配を行い、そのF2世代の作製を順次すすめていく。F2世代のキンギョ雑種系統の作製に成功した家系に関しては、個体の写真撮影など表現型の解析をすすめている。一方で、これらの個体群の高品質なゲノムDNAを精製し、次世代シーケンサーを用いたRAD-seq解析を行っている。RAD-seq解析が進んだ品種に関しては、ハイスペックコンピューターを用いてplinkプログラムを用いたGWAS解析を行っている。必要に応じて全ゲノムリシーケンスを行う予定である。キンギョの全ゲノムは1.7Gbpであり1個体あたり10x程度のカバレージでショートリードの次世代シーケンサーIllumina Novaseqなどで150bpペアエンドシーケンスを行う予定である。これらの解析により表現型とリンクする遺伝子座の特定をすすめていく予定である。得られたリードに関して、リファレンスゲノム配列に照らし合わせ変異を同定することを目指す。
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