研究課題
基盤研究(B)
多様な病態が想定されているアトピー性皮膚炎に注目して、3つの代表的なマウスモデルならびに患者の皮膚病変部の包括的解析(1細胞トランスクリプトーム解析を含む)を進めて、好塩基球が炎症の場で実際に発現している分子群を洗い出すとともに好塩基球と相互作用する細胞を特定し、好塩基球を起点とした炎症誘導カスケードを明らかにして、ヒトアトピー性皮膚炎の病態解明ならびに新規治療法の開発につなげる。
従来、アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis, AD)に関与する細胞としてマスト細胞、好酸球ならびにTh2細胞が中心的に解析されてきた。2005年に私たちがADモデルマウスにおいて好塩基球除去によりアレルギー炎症が激減することを見いだして以来、様々な炎症疾患モデルにおいて好塩基球が病態形成に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。最近になってAD患者の病変部においても好塩基球浸潤が検出されるという報告が相次いでなされヒトのAD病態形成においても好塩基球の関与が強く示唆された。いずれの場合も皮膚病変部に集積している好塩基球は浸潤細胞の2%以下とごく僅かであり、ごく少数の好塩基球が司令塔となって他の炎症性細胞を操作して重篤な炎症反応を引き起こすというシナリオが想定される。皮膚病変部から単離できる好塩基球がごく僅かであるため従来の手法を用いて機能分子を詳細に解析することは極めて困難であったが、最近、次世代シークエンサーを活用したシングルセルRNAシークエンス(scRNA-seq)が実用化され、1細胞ごとに転写産物を網羅的に解析することが可能となった。そこで今年度の研究では、まず2種のADマウスモデルを対象に皮膚病変部のscRNA-seqを実施し、皮膚病変部に集積している好塩基球を含むすべての細胞に関して遺伝子発現プロファイルを取得することができた。現在、得られたデータをもとに炎症誘導に関与する細胞・分子カスケードの解析を進めている。さらに、インフォームドコンセントを得たAD患者から採取した血液サンプルをフローサイトメトリ解析し、個々の患者における好塩基球の活性化状態、刺激反応性について健常人のサンプルとの比較解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
ADモデルマウスの皮膚炎症部位に集積している好塩基球を含むすべての細胞に関して遺伝子発現プロファイルを取得することができた。AD患者の血中好塩基球の活性化状態解析が順調に進んでいる。
インフォームドコンセントを得たAD患者から診断目的で採取した皮膚病変部生検サンプルの一部を使ってscRNA-seqをおこない、AD皮膚病変部に浸潤している好塩基球を含む炎症性細胞の遺伝子発現プロファイルを取得し、炎症誘導に関与する細胞・分子カスケードの解析を進める。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Allergy and Clinical Immunology
巻: 151 号: 3 ページ: 737-746.e6
10.1016/j.jaci.2022.11.009
Nature Communications
巻: 14 号: 1
10.1038/s41467-023-38356-1
皮膚科
巻: 3(2) ページ: 130-137
Frontiers in Immunology
巻: 13 ページ: 902494-902494
10.3389/fimmu.2022.902494
巻: 13 ページ: 900532-900532
10.3389/fimmu.2022.900532
J Gastroenterol Hepatol
巻: 37 号: 9 ページ: 1768-1775
10.1111/jgh.15964
https://immune-regulation.org