研究課題/領域番号 |
22H02880
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 (2023) 国立感染症研究所 (2022) |
研究代表者 |
村松 正道 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(副センター長・部長クラス) (20359813)
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研究分担者 |
加藤 孝宣 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (20333370)
五十川 正記 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 室長 (50723201)
塩田 智之 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (80616144)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | ウイルス / B型肝炎 / 発癌 / 慢性感染 / 肝細胞癌 / ウイルス発癌 / マウスモデル / B型肝炎ウイルス / 肝細胞がん / ウイルス複製 / ジェノタイプ / 慢性肝炎 |
研究開始時の研究の概要 |
日本人に感染するB型肝炎ウイルス(HBV)は主にジェノタイプA,B,C型(GT-A, B, C)の3つが知られているが、このうちGT-Cの発癌誘発活性が高い。しかしそれがなぜかは不明である。本研究ではGT-C感染がどのように高発癌表現型に結び付くか、培養系、動物モデルを駆使して、ウイルス側の因子に絞りその同定を目指す。
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研究実績の概要 |
日本人に感染するB型肝炎ウイルス(HBV)は主にジェノタイプA,B,C型(GT-A, B, C)の3つが知られているが、このうちGT-Cの発癌誘発活性が群を抜いて高い。しかしそれがなぜかは不明である。 本研究ではGT-C感染がどのように高発癌表現型に結び付くか、ウイルス側の因子に絞り、その同定を目指す。低発癌表現型を示すGT-Bと比較しつつ、野生型や変異型HBVレプリコン、HBVの4つの遺伝子発現プラスミドを、マウスあるいは培養細胞に遺伝子導入し、どの配列が高発癌表現型を生み出すかを系統的に詰める。さらに同定した配列について、GT-CとBの間でキメラウイルスを作成し、高発癌表現型を産み出す責任配列を実験的に検証する。さらに可能なら責任配列を狭め、その配列に紐付けされる分子機構として宿主因子の同定を目指す。日本人を癌に至らしめるGT-Cの高発癌誘導性の分子機序に迫り、発癌を防ぐ方法や予後予想するための分子基盤情報を取得する。本年度はA, B, Cジェノタイプからそれぞれ2,2,3株のウイルスゲノム配列を準備し、細胞に遺伝子導入するとウイルスの複製を誘導できるレプリンコンHBV1.2倍長プラスミド合計7つを構築した。さらにそれらをマウスの肝臓に遺伝子導入できるpAAVベクターに移し替えたものも同様に準備した(合計14プラスミド)。構築したHBV GT-Cのプラスミドを用いて、培養細胞系でGT-Cのトランスフェクションにより増殖の亢進を観察できることががわかり、遺伝子型間の差を評価する基盤的アッセイ系の構築までは少なくとも達成された。代表者の所属施設変更に関わる調整も概ね大きな支障なく進んだ。 ウイルス側のどの配列が最も発癌誘導活性と関連が深いかを知ることは、将来の発癌予防や治療薬の開発につながる可能性があるだけに、本研究の結果がまたれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B型肝炎ウイルスには様々なジェノタイプ(遺伝子型)があり、日本人に感染しているのはC型(GT-C)が多く、ついでAやB型感染が多いことが知られている。これらの感染のうちGT-CがGT-AやBより発癌しやすいとされており、本研究計画は、その分子機序をウイルス側の要因から探索する。主な手法としては、GT-C感染を動物や培養モデルでプラスミドトランスフェクションの系で再現し、AやBのものと比較し、発癌に寄与するウイルス配列を絞りこむこみ責任配列を決める。本年はA, B, Cジェノタイプからそれぞれ2,2,3株のウイルスゲノム配列を準備し、細胞に遺伝子導入するとウイルスの複製を誘導できるレプリンコンHBVプラスミド合計7つを構築した。さらにそれらをマウスの肝臓に遺伝子導入できるpAAVベクターに移し替えたものも同様に準備した。 発癌の指標としては、まずは細胞の増殖率の増加を選択し試行し、発癌の一側面を捉えられるか検討した。まずはGT-Cのウイルスゲノム遺伝子導入の有無で不死化肝細胞の増殖が増加するか検討したところを顕著な増殖亢進を観察した。今後これをHBVウイルス感染によって増殖が亢進することが観察できる評価系とする。一方マウス評価系は、代表の所属施設の移動もあり、感染動物実験室の整備から開始する必要があったため、移動先での研究(神戸)が多少遅延しているが、移動前(感染研)の動物実験室との連携をしながら、pAAV-HBV ウイルスゲノムのレプリコンの遺伝子導入を進めている。予備的実験結果では、pAAV-HBV ウイルスゲノム依存的な肝腫瘍の発生を肉眼で確認しており、今後GT-CとGT-A, B間で差がみられるか検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
発癌イベント、現時点では、培養系では細胞の増殖スピードの増加、マウスの系では腫瘍形成をHBV発癌の評価として研究を進めている。昨年度には、HBV複製に依存した細胞増殖スピードの亢進、及び、マウスでHBV複製に依存した腫瘍形成が観察できているが、次にそれらがGT-Cでより顕著に起こるかを決める必要がある。 GT-Cでより発癌活性が強いと想定されるが、他の遺伝子型でも発癌は起こることが知られているため、ジェノタイプ間の発癌活性の差を検出できるようになるには、正確で緻密な評価系が必要である。そのため本年度は増殖の評価を96穴プレートにて比色で測定する系を導入する。 これによりスループットが上がり、より僅かな差も捉えることができると期待される。細胞増殖は一般に様々な細胞培養条件で左右されることが知られているため、発癌の評価として遺伝子変異といった決定的変化を捉えることができるか検討したい。肝細胞癌で変異率が高いとされるTP53遺伝子座の変異検出を簡便に見る実験系を検討する。また発癌に相関するバイオマーカーの導入も検討する。 動物モデルでは、腫瘍形成にかかる時間を短縮することで、より実験の生産性が改善できるため、CRISPR多重遺伝子欠損の系を導入することで発癌に至る時間の短縮を目指す。これによりGT-CがGT-AやBより効率に動物モデルにおいても発癌誘導するか決めたい。
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