研究課題
基盤研究(B)
●抗ウイルス薬の進歩した現在において、肝発癌はなお十分に低下していない。本研究では、“老化“を中心とした炎症にフォーカスした視点から発癌メカニズムを検討、申請者らが行ってきた次世代遺伝子解析による肝癌組織ゲノム・ウイルスゲノム情報を加えて統合的に解析、老化関連分子と肝発癌・進展の関連を明らかにすることを通じ、効果予測が困難な免疫チェックポイント阻害剤(ICI) ・マルチキナーゼ阻害剤(TKI)の反応性に対する有用なバイオマーカーを同定・確立することを目指してゆく。
1.血液サンプルを利用した炎症・老化関連バイオマーカーの同定と確立:老化・炎症に関連して血液中に検出することが想定される老化関連サイトカイン/ケモカイン等について、特にC型肝炎の抗ウイルス治療である直接抗ウイルス剤(DAA)製剤投与後のCXCL9、CXCL10、CCL5の動態について、炎症・線維化・年齢等との関連について検討を行った。興味深いことに、肝炎ウイルスによって炎症が持続しているときは、これらのケモカインはALT等の炎症マーカーと関連するものの線維化や年齢との関連は明らかではなかったが、ウイルス排除後の血中濃度は線維化マーカー・年齢、両者とも有意に相関し、特にCXCL10において相関が顕著で、高度線維化症例や高齢者ほど高値となった。一方、多変量解析にてCXCL10と独立して関連するのは年齢であった。また同じ高齢者でもこれらケモカイン値が高いほど発癌率が上昇していることが示され、C型肝疾患におけるSASP因子としてのCXCL10の重要性が示された。2.次世代1分子シークエンスを用いたウイルスゲノムの解析:ウイルス陽性/排除後の両者を背景にした肝癌に対する老化関連因子の関与を明らかにすることは、炎症性発癌を理解する上で重要である。本年度は、rolling circle amplificationを応用した一分子シークエンスにより、完全長ウイルスゲノムのdeep sequenceシステムをC型肝炎ウイルス(HCV)、さらにB型肝炎ウイルス(HBV)において確立した。またHCVにおいては全長ウイルスゲノムを型分けするハプロタイピングシステムを構築した。
2: おおむね順調に進展している
特にC型慢性肝疾患に関連してケモカイン動態が、肝疾患に加えて老化に伴う炎症を反映する可能性を示したことや、HBV、HCV共に全長の一分子シークエンシングシステムを構築し得たことは大きな進展と考えられる。
肝癌・非癌部周囲組織を用い、間葉系細胞も含めて老化関連分子の発現する部位と細胞腫を検討することにより肝組織病態と老化関連分子の関連を明らかにすること、ウイルスゲノム構造と老化関連分子の関連を明らかとすること、分子標的治療薬の反応性と老化関連分子との関連を明らかとすること等を予定している。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (32件)
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