研究課題/領域番号 |
22H03721
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石塚 紳之介 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 特任助教 (20817788)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
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キーワード | エアロゾル / 液液相分離 / 潮解 / その場観察 / 微小不均質 / 光感応剤 / 透過型電子顕微鏡 / 光ピンセット |
研究開始時の研究の概要 |
地球の大気中には、エアロゾルと呼ばれる液相・固相の微粒子が漂っています。太陽光の吸収と散乱,および雲 (水滴) が形成するのを助けることで、地球の温度を上げたり、下げたりすると考えられています。気候影響を評価する上で、エアロゾルが大気中の水分子とどのように相互作用するのか理解する必要があります。本研究では、地球の気候に多大な影響を与える0.01-10 μmの無機塩と有機物の混合エアロゾルに着目し、粒子内部に生じるナノサイズの不均質構造が大気中のガスとの相互作用をどのように変化させるのか解明することを目指します。
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研究実績の概要 |
大気中の有機分子は光化学反応によって酸化し,エアロゾルの生成,成長,変質に寄与すると考えられている.近年,エアロゾル中や海洋表面などに広く存在すると考えられている有機物層 (マイクロレイヤー)内部での光化学反応においては反応物の直接的な光励起が難しく,光感応剤が必要となることが指摘されている.しかし,どのような物質が光感応剤として働くのか明らかになっていない.申請者は,光ピンセットを用いてアミノ酸の一種であるグリシンの水滴を捕捉し,その体積変化と捕捉光強度の関係を調べ,本来グリシン水溶液が吸収帯を持たない捕捉光 (532 nm) との相互作用によって,水滴の体積が減少していることを明らかにした.また,光散乱強度パターンの変化から,液滴内部で液液相分離が起こっていることを示した.グリシン水溶液に生じる,微小不均質構造は532 nmに対して吸収を持つことが,先行研究によって示されており,本研究では液液相分離によって生じた微小不均質構造が光感応剤として働くことで,本来不活性なグリシンの光化学反応が起こったと考えられる.微小不均質構造が光感応剤として働くことを提案した初めての研究である.微小不均質構造は糖などの様々な水溶液中に普遍的に観察され,エアロゾルやマイクロレイヤー中での光化学反応をコントロールしている可能性があるとして,新たな光化学反応経路として提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小不均質構造が光感応剤として働くという結果は予想を超える発見であり,地球大気中で普遍的に起こり得る現象であると考えられるため当初の期待以上の発展が期待される.しかし,研究代表者ががんに罹患したため,プロジェクト半ばで帰国となり,また8か月間の入院となったため,期待通りの発展的研究が行えていない.そのためおおむね順調とした.
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今後の研究の推進方策 |
微小不均質構造が光感応剤として働くことの普遍性を物質を変えて調べる.例えば界面活性度が異なるアラニンやバリンとの比較を行うことや,微小不均質構造が生成されることが明らかになっている糖の水滴の体積減少のメカニズムを調べることで現象の普遍性を調べる必要がある.また,微小不均質構造の生成メカニズムを透過型電子顕微鏡を用いて明らかにすることができれば,本現象の物理化学的な起源や,大気モデルにおける定量的な扱いに大きく近づくことができる.
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