本研究は半導体微細加工の学生実験で行われているリソグラフィーの工程を熱リソグラフィー技術の手法で行うため、半田ごてを加熱操作する装置の作製と描画条件の最適化及び金属蒸着を用いて半導体デバイスの構築を目的とした。 方法 熱に反応する特殊なレジストを塗布した試料を温度調整機能付きの半田ごてで任意の位置に安定して接触加熱するため、3軸方向の操作が可能な固定調整器具を作製した。描画に使用する半導体試料は、2cm角程にカットしたSi基板上に感熱レジストと犠牲層レジストを塗布して2層に積層させたものを作製した。先端の形状が違う半田ごてを数種類使用して、加熱温度、時間、触圧等の条件を変えて試料に描画を行い、描画した試料は犠牲層エッチング、洗浄を行い顕微鏡で観察と段差測定試験を行った。 研究成果 半田ごてを用いた熱リソグラフィー装置を作製し、Si基板上にラインパターンを描画することができた。また、学生実験のデモ実験として半田ごて熱リソグラフィーを行った。試料(Si基板)の表面に手動で半田ごての先端を接触させる方法のため、人によって触圧条件が変わり描画が不安定な結果となり触圧の調整に課題はあるが、はじめて体験する学生でも描画できることを確認した。AFM熱リソグラフィーでの半導体デバイスの構築は、AFMで描画に使用する特殊加熱探針と装置故障の都合上、期間内に作製まで至らなかったが、半田ごてを使用して作製した試料を用いてNiとAuGeの蒸着試験を行った結果、試料に蒸着できることを確認した。今後は、作製した試料の条件を参考にして数ミクロンサイズの電極パターンをAFM熱リソグラフィーを用いてデバイスの作製を行う予定である。
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