研究課題
奨励研究
肺は外界と通じる臓器のため免疫系が発達しており,肺移植後には他の臓器移植後よりも強い免疫抑制が長期間必要とされる. そのため,肺移植患者は他の臓器移植と比べて術後サイトメガロウイルス(CMV)感染症のリスクが高いと考えられている.これまで,京都大学医学部附属病院にて肺移植を受けた患者を調査した結果,肺移植後にCMV感染が認められた症例において抗CMV薬であるガンシクロビル(GCV)又はバルガンシクロビルを有害反応により使用中止していたことが判明した. 本研究では,GCVによる有害反応発現のリスクと血中濃度との関連について調査を実施した.
肺移植後はサイトメガロウイルス(CMV)感染のリスクが高いため、バルガンシクロビル(VGCV)の投与が必要とされるが、重篤な白血球減少によりVGCV投与の継続が困難となる場合がある。本研究では、VGCVの活性代謝物であるガンシクロビル(GCV)の血中濃度と副作用との関連を調査した。その結果、重篤な白血球減少を予測するGCV血中トラフ濃度は872.0 ng/mL以上であることが判明した。また、母集団薬物動態解析により再肺移植とクレアチニンクリアランス(Ccr)がGCVクリアランスの共変量として抽出された。再肺移植やCcrの低い患者ではTDMに基づいたVGCV の個別化投与設計が有用と考えられた。
CMVは肺移植後の感染症の中でも重要な病原体の一つであり、肺移植後のCMV感染症は慢性移植肺機能不全や侵襲性真菌感染症のリスク因子となる。そのため肺移植後はVGCVの予防投与が必須であるが骨髄抑制が問題である。特に重篤な白血球減少が発現した場合には、禁忌に該当するためVGCVを中止せざるを得ず、中止後にCMV感染を発症する症例が報告されている。CMV感染を含む感染症は肺移植後の死因1位であることから、安全性と治療継続性を高めるためのVGCV予防投与法の確立は重要である。本研究結果は、副作用発現によるVGCV治療継続が困難な症例が減少し、肺移植後のCMV感染防止に大きく貢献すると考えられる。
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