研究課題
奨励研究
がんサバイバーにとって抗がん剤治療に伴って生じる中長期的的な有害事象への対策は、その後の日常生活における質向上において重要な課題である。抗がん剤誘発性末梢神経障害は繰り返しの抗がん剤治療によって難治化することが知られており、治療終了半年後では約30%の患者がしびれや痛みに悩まされることになる。現在、鎮痛薬などの対象療法以外に有効な治療法は存在しない。本研究では、ヒトに関する疾患・薬剤情報が多く集積された医療データベースを解析基盤とすることによって、臨床情報に立脚した基礎薬理学的検討から抗がん剤誘発性末梢神経障害に対する支持療法の開発を目的とする。
オキサリプラチン、パクリタキセル対するHMG-CoA還元酵素阻害剤併用の影響について、データベースを用いて、抗がん剤投与後の末梢神経障害の発現・全生存期間を指標に解析した。スタチンが投与されている患者は、多くの疫学研究において末梢神経障害リスクを複数保有している可能性が指摘されているが、非スタチン併用群と比較して末梢神経障害の発現頻度の増加は認められず、生存期間も有意な短縮は示されなかった。以上から、末梢神経障害の高リスク群において末梢神経症状を抑制していることが示唆された。
抗がん剤誘発性末梢神経障害の機序は未だ不明な点が多く、有効な治療標的も不足している。よって、①新規薬剤を開発すること、②その薬理作用の詳細な機序を明らかにすることで治療に有効な標的を探索することを目的に、市場化された薬剤の中から抗がん剤誘発性末梢神経障害抑制作用を有する新たな薬剤の探索を行った。薬剤の探索のみならず新規薬理作用標的の導出に向けた基礎的知見の集積は、本有害事象克服に向けた新たなアプローチとなることが期待される。
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