研究課題
奨励研究
先行研究では,SCDに対するバランス練習を中心としたリハにて運動失調やバランス機能の改善を認めることが明らかとなっている.SCDは病型や重症度によって小脳変性を中心とした機能障害に代償機転も含まれた非常に複雑な病態を呈している.病態が複雑であるがゆえに,病型に基づいた効果的なリハが提供できているとは言い難い. そこで我々は,姿勢振戦に着目した.小脳変性疾患において約 3Hz のピーク周波数を認めると言われており,この周波数の姿勢振戦は病態を把握するのに有用と考えられている.しかし,この研究は横断研究であり,リハにおける姿勢振戦の変化を経時的に示したデータはない.
本研究の目的は,理学療法前後の姿勢振戦を比較し,理学療法の効果と姿勢振戦の関連を明らかにすることである.1症例を対象に入院時および退院時に姿勢振戦を測定した.理学療法はバランス練習を中心とし週5回,1回40分実施した.結果として,理学療法前後でバランス機能の改善を認めた.一方で,3Hz前後の姿勢振戦のピーク値および総和は著明な変化は認めなかった. 脊髄小脳変性症のバランス機能改善は,小脳領域ではなく関連領域の賦活による影響が大きい可能性が示唆された.
脊髄小脳変性症に対するバランス機能改善過程を明らかにした報告は少ない.本研究の結果では,薬物療法と理学療法によるバランス機能改善は,小脳領域ではなく関連領域の賦活による影響が大きい可能性が示唆された.この結果より理学療法のプログラムを再考する一助になり得る可能性が示唆された.
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