研究課題/領域番号 |
22H04919
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水島 昇 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (10353434)
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研究分担者 |
小嶋 良輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (10808059)
塚本 智史 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 本部 安全管理部, 課長 (80510693)
森下 英晃 九州大学, 医学研究院, 教授 (90783499)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
619,450千円 (直接経費: 476,500千円、間接経費: 142,950千円)
2024年度: 135,980千円 (直接経費: 104,600千円、間接経費: 31,380千円)
2023年度: 111,280千円 (直接経費: 85,600千円、間接経費: 25,680千円)
2022年度: 26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
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キーワード | 細胞内分解 / 生体膜 / 細胞小器官 / オートファジー / ホスホリパーゼ / リソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物の細胞内には膜で囲まれたオルガネラが大量に合成されている。一方で、それらは分解・処理されているが、その一連の過程や生理的意義は体系的には解析されていない。そこで本研究では、主要な細胞内分解系であるオートファジーや最近私たちが発見したホスホリパーゼPLAATによる新しいオルガネラ膜分解系などを主な対象として、膜構造の分解を基軸とした細胞内分解のダイナミクス、メカニズム、生理的意義の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
ユビキチンはプロテアソームでのタンパク質分解を導く標識としてよく知られているが、今回ユビキチンが細胞小器官の脂質であるホスファチジルエタノールアミンとも共有結合することを明らかにした。これがエンドソームにおける腔内小胞の形成に関わり、液胞またはリソソームでの膜分解の一端を担う可能性を示唆した。オートファジーに関しては、三次元光―電子相関顕微鏡法を用いて、オートファゴソーム膜と他の小器官との接触頻度、オートファゴソームが内包する小器官の種類を網羅的に解析し、小胞体との接触、小胞体の取込みが特に多いことを定量的に示した。また、オートファジー活性の定量的測定方法として、HaloTagを用いたプロセシングアッセイ法を開発し、それが小器官分解や非選択サイトゾル分解の測定に有用であることを報告した。本法は、感度、定量性、客観性に優れており、今後オートファジー研究のスタンダードになると考えられる。 オートファジーによる小器官分解の代表として小胞体オートファジーがある。これまで、オートファゴソームによって認識される小胞体上のタンパク質(小胞体オートファジーレセプター)が複数同定されてきたが、小胞体内の環境がどのように感知されているかは不明であった。今回、CCPG1という小胞体オートファジーレセプターの内腔ドメインが、小胞体内部の変性タンパク質などを認識し、その部分をオートファジー分解に導いていることを明らかにした。 フェリチンはマクロオートファジーとミクロオートファジーの2つの経路で分解されることが知られていたが、そのためにはフェリチンはNCOA4というタンパク質と共に液―液相分離を起こすことが重要であることを見出した。この成果は、腔内小胞の分解に利用することが可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、膜分解を中心として細胞内分解のメカニズムと意義を明らかにすることを目的としている。膜分解は主にリソソーム内でおこるものと、サイトゾルでおこるものに分類される。前者については、エンドソームの膜脂質がユビキチン化をうけて、リソソーム(酵母では液胞)での分解に導かれることを発見した。これはオルガネラ恒常性に関する新しい発見であると同時に、タンパク質と脂質の共有結合の新しい様式の発見でもあった。また、小器官の分解については、オートファジーによる小胞体内腔環境の感知機構の発見や、さまざまな小胞体オートファジーに利用できるHaloTagを用いた定量方法の開発などが達成され、今後の小胞体を含む小器官オートファジーの研究を大きく推進するものであると考えられる。広域三次元光―電子相関顕微鏡法も順調に稼働しており、多くのオートファジー構造体の定量的解析に威力を発揮している。今後も継続して活用しうるものである。さらに、フェリチン分解の研究を介して、ミクロオートファジーの可視化系が構築されつつあり、今後より一般的な方法の開発へと展開しうる。以上の成果は論文として発表した。その他、論文発表には至っていないが、膜の標識方法、サイトゾルホスホリパーゼPLAATによる水晶体小器官分解のメカニズムの解析、マウスモデル構築なども予定通り進捗している。以上のことか、本研究課題は順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジーによる細胞小器官の認識についてはこれまでさまざまな受容体やアダプターが取得されてきたが、それらがどのように効率よく大きな小器官を分解に導いているかは完全には明らかになっていない。そこで、マイトファジーの際にオートファゴソームとミトコンドリアの間に観察されるOPTNなどのシート状液滴の形成機構と生理的意義を明らかにする。また、これまで主体的に行われてきたマクロオートファジー(オートファゴソームを介する経路)に加えて、ミクロオートファジーの検出系も構築し、細胞内分解を総合的に解析できる体制を整備する。それらを用いて、リソソームにおける膜分解の実態把握へと進める。 オートファゴソーム内膜分解の研究については、三次元光―電子相関顕微鏡法を用いて分解状況を超微形態学的に解析する。また、これまでにATG結合系不全細胞では内膜分解が遅延することを見出しており、その原因をリソソームとの融合の強度の観点から明らかにする。 膜の検出については、膜脂質を低分子化合物やタンパク質によって標識する方法の開発を引き続き行い、膜構造のダイナミクスや分解経路を解析する。膜の分解や損傷を感度良く検出するプローブの構築と、その検出メカニズムについても計画通り行う。 サイトゾルリパーゼPLAATによる水晶体小器官分解については、PLAATのリクルート機構、その上流シグナルについて解析を進める。現在のところ、ユビキチンの関与が示唆されている。さらにPLAATファミリーの多重ノックアウトマウス作製も進める。
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