研究課題/領域番号 |
22H04931
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分A
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
磯田 昌岐 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 教授 (90466029)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
171,600千円 (直接経費: 132,000千円、間接経費: 39,600千円)
2024年度: 33,410千円 (直接経費: 25,700千円、間接経費: 7,710千円)
2023年度: 31,850千円 (直接経費: 24,500千円、間接経費: 7,350千円)
2022年度: 42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
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キーワード | 社会的認知機能 / 他者 / 行為 / 神経基盤 / マカクザル |
研究開始時の研究の概要 |
社会的な相互交渉では他者の行為を手がかりにその心を推測する。霊長類動物を用いた実験心理学的研究により、大脳の前頭葉において他者の行為に選択的に応答する神経細胞が発見されている。しかしその活動が、他者行為に関するどのような情報を表象し、どのような認知行動学的要因で規定され、実際の社会的相互交渉にどのように寄与するのかは、これまで明らかにされていない。本研究では、独自に開発した社会行動の評価系、最先端の脳活動計測・解析手法、神経路選択的遮断法などを組み合わせ、これら未解明の問題に取り組む。本研究は、社会的相互交渉に質的障害をきたすとされる神経発達障害などの脳特性を理解する上で重要な知見を提供する。
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研究実績の概要 |
マカクザルをモデル動物とする実験心理学的アプローチにより、5項目からなる研究開発を推進し、計画通りの(一部については当初計画を上回る)進捗を得ることができた。研究項目1に関しては、他者の行為を表象する前頭葉ニューロンの他者応答特異性を規定する認知行動学的要因、とくに視空間要因と時間要因を明らかにすることを目的として、行動タスク遂行中の神経活動を計測し、他者行為を表象するニューロンの空間応答性および他者依存性を明らかにした。研究項目2に関しては、他者行為の前頭葉内表象の文脈依存性を明らかにすることを目的として、他者行為の視覚的アクセス性を操作できる行動タスクを遂行中の神経活動を計測し、他者行為の実行情報、予測情報、および予測誤差情報が異なる大脳皮質層において処理される可能性を示唆する結果を得た。研究項目3に関しては、研究項目2の進展を受けて、令和6年度から開始する予定であった、ウイルスベクター二重感染法を用いた神経路選択的遮断実験を前倒しして実施することとし、ウイルスベクター開発と標的脳領域への注入をおこなった。研究項目4に関しては、自由行動環境下において自発的に発現する社会的相互交渉の特徴とその神経回路基盤を明らかにすることを目的として、ウイルスベクターの二重感染法による神経路選択的遮断をおこない、他者指向行動の減少と自己指向行動の増加を引き起こす効果を確認した。研究項目5に関しては、他者の意図性や互恵性が他者行為の神経表象に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、行動タスク遂行中の神経活動を計測し、利他的な報酬分配行動の発現と、自己および他者の行動選択に関連するニューロンを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5項目の実施計画のうち、令和6年度から着手することとしていた1項目については前倒しして実施した。それ以外の4項目については、当初の計画通り順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の5項目について、当初の計画に従い研究を推進する。研究項目1に関しては、他者の行為を表象するニューロンの他者応答特異性を規定する認知行動学的要因として、とくに時間要因に着目した研究を推進する。研究項目2に関しては、他者行為の実行情報、予測情報、および予測誤差情報の処理を担うニューロン実態を同定するための研究を推進する。研究項目3に関しては、ウイルスベクターによる標的神経路遮断中のタスク遂行成績と神経活動を解析し、研究項目2の結果から導かれる機能仮説を因果的に検証する。研究項目4に関しては、自由行動環境下での神経路選択的遮断実験を継続するとともに、生理活性物質を投与した際の社会行動の特徴(変化)を解析する。研究項目5に関しては、標的脳領域から神経活動計測を継続し、互恵性関連神経活動の特徴を明らかにする。現時点において、研究遂行上の問題は生じていない。
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