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人工磁気圏を反物質トラップとして活用する電子・陽電子プラズマの実現と物性解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H04936
研究種目

基盤研究(S)

配分区分補助金
審査区分 大区分B
研究機関東京大学

研究代表者

齋藤 晴彦  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60415164)

研究分担者 檜垣 浩之  広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (10334046)
満汐 孝治  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10710840)
佐藤 直木  核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (60872893)
柳 長門  核融合科学研究所, 研究部, 教授 (70230258)
研究期間 (年度) 2022-04-27 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2025年度)
配分額 *注記
196,950千円 (直接経費: 151,500千円、間接経費: 45,450千円)
2025年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2024年度: 31,070千円 (直接経費: 23,900千円、間接経費: 7,170千円)
2023年度: 67,730千円 (直接経費: 52,100千円、間接経費: 15,630千円)
2022年度: 79,950千円 (直接経費: 61,500千円、間接経費: 18,450千円)
キーワード反物質プラズマ / ダイポール磁場 / 電子・陽電子プラズマ / 低速陽電子ビーム / 高温超伝導 / 非中性プラズマ / 高温超電導 / 磁気浮上
研究開始時の研究の概要

イオンと電子から構成される通常のプラズマに対して,電子とその反粒子である陽電子から構成される電子・陽電子プラズマは,構成粒子の質量が等しいという著しい特徴を持つ.プラズマの波動や安定性等の特性について,質量の対称性が引き起こす興味深い性質が理論的に予測され,また電子・陽電子プラズマは宇宙環境に広く存在すると考えられている.このため電子・陽電子プラズマは長年の理論及びシミュレーション研究の対象となってきたが,実験的には実現されていない.本課題では,磁気浮上ダイポール装置による人工磁気圏を反物質閉じ込め装置として活用することで電子・陽電子プラズマを実験室に生成し,その性質を実験的に検証する.

研究実績の概要

2022年度当初に立案した計画は,装置製作の遅れと追加で発生した検討等の実施のために繰越を行い2023年度に完了した.陽電子及び電子・陽電子の捕獲を行う磁場閉じ込め装置の開発に関して,陽電子蓄積数の増大を目指す5Tマグネットとトラップ電極を製作し,定格磁場での運転試験を経て,陽電子実験を行なう産総研ビームラインに導入した.超高真空環境を実現するための排気系とGM冷凍機の導入を終えて電子ビームによる閉じ込め試験を開始しており,陽電子蓄積実験に向けた準備を進めている.一方,磁気浮上ダイポール装置の製作には遅れが生じており,新たに決定した製作会社と共同で技術要素の試験を行い検討を進めた結果,当初よりもコンパクトな構造の磁気浮上装置を製作可能な見通しが得られた.ヘリウムガス循環に依らない直接冷却方式かつ超伝導コイルに近接して熱遮蔽を持つ装置の設計を終え,こうしたダイポール磁場装置は,反物質に限らず各種のプラズマ実験への活用が可能である.装置の基本的な設計に基づいて,装置製作に必要とされる超伝導線材や低温装置制御系等の導入を2023年度に完了した.また期間中に,当初の予定よりも早期の陽電子実験を,磁気浮上装置に代わり永久磁石ダイポールにおいて実施した.産総研ビームラインのバッファガストラップから供給される低速陽電子を使用することで,ダイポール磁場中に捕獲した陽電子数を従来の記録よりも大幅に増大し,広い意味で集団現象と呼べる挙動を観測することに成功した.理論面では,ダイポール磁場に閉じ込めた電子と陽電子からなる無衝突ペアプラズマの平衡状態を,粒子運動の断熱不変量に着目した最大エントロピー状態として定式化したモデルを提案した.また,永久磁石に代わり超伝導磁気浮上コイルを使用したダイポール磁場装置における粒子入射について軌道解析を進め,高効率で入射可能な複数の経路が得られた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

陽電子実験やペアプラズマ生成シナリオの解析に一定の進展が得られている一方で,一部の装置開発には遅れが生じ,対応策を進めている段階にある.装置開発の計画に変更が生じたことから,陽電子実験を永久磁石装置を用いて前倒しして実施して新しい成果が得られている.実験では,バッファガストラップを持つビームラインから供給される陽電子ビームを永久磁石ダイポールに入射し,捕獲陽電子数の大きな飛躍が得られた.また消滅ガンマ線を中心とした計測により,トロイダル方向の一様化を可視化し,広義で陽電子群の集団的と言える現象を観測することに成功した.これらの成果は,本課題の研究組織に加えてドイツのマックスプランク・プラズマ物理研究所の研究者と共同で実施したものであり,国際共同研究を通じて計測や解析方法について新しい知見が得られたことも大きな成果と考えられる.また,理論面でもペアプラズマの平衡の理解に大きな進展が見られた.一方,概要での記述の通り,一連の荷電粒子トラップ装置のうち,磁気浮上ダイポールの製作が当初の計画通りに進まない問題が発生しており,装置構成及び製作会社の変更を経て新しい設計を進めた.新装置の完成とそれを用いた陽電子実験に遅れが生じているが,検討と予備的な試験を通して大きな技術的課題をクリアし,発生した問題を解決して磁気浮上ダイポール装置を開発する目処が立ったと考えられる.また,もう一つの閉じ込め装置である超伝導マグネットは順調に製作が完了し,大量陽電子の蓄積に必要とされる軸方向に60cmの領域に5Tの磁場を発生する定格通りのトラップが完成し,初期実験を開始している.以上まとめると,計画の中で一部の装置製作に遅れが生じたために対応策を進めているが,おおむね順調に計画が進んでいる.

今後の研究の推進方策

電子・陽電子プラズマの生成と物性解明という研究の最終目標に向けて,装置製作及び陽電子実験,理論及び軌道解析等の数値計算を進める計画である.陽電子入射実験については,2023年度に完成した5T強磁場マグネットにおいて,バッファガスから供給される陽電子を繰り返し入射し,10^9個以上の大量蓄積を目指す.磁気浮上ダイポール装置の製作状況から,強磁場トラップから供給される大量陽電子を,まずは永久磁石装置において実施する計画で進めている.永久磁石装置では陽電子入射方法の自由度が高く,ビームラインに対して水平方向に配置したトラップにドリフト入射法を適用し,消滅ガンマ線と電流の直接計測による捕獲陽電子数の評価と,揺動や閉じ込め特性の計測から非中性プラズマとしての波動特性の解明を目指す.またダイポール装置においては,タングステンフィラメントから供給される電子と陽電子の同時閉じ込め実験を実施する.先行研究で観測された特定の揺動モードを示す傾向について,周方向に分割した電極を用いて静電揺動の印加実験を行い,径方向の運動と結合可能なモードの探索を行う.装置開発については,前年度までに進めた検討に基づいて磁気浮上ダイポール装置の製作を進める.装置は,超伝導線材から構成される浮上コイル及び励磁用コイル,浮上用の引き上げコイル,浮上制御系等から構成され,それぞれの製作を2024年度中に完了して実験に供する計画である.軌道解析については,電場印加によるドリフト入射方法の最適化を行う他に,閉じ込め領域で電子と陽電子の分布を重ねるためにカオスを用いた混合を行うことを目的に軌道解析を進めており,カオスの出現条件と混合の効果を数値計算と実験を通して明らかにする計画である.

評価記号
中間評価所見 (区分)

A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる

報告書

(4件)
  • 2024 中間評価(所見) ( PDF )
  • 2022 研究概要(採択時) ( PDF )   審査結果の所見   実績報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] マックスプランク・プラズマ物理研究所/ミュンヘン工科大学(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] The Buncher and the Magnetic Lens for the LINAC Based Low Energy Positron Beams at AIST2023

    • 著者名/発表者名
      HIGAKI Hiroyuki、MICHISHIO Koji、ISHIDA Akira、OSHIMA Nagayasu
    • 雑誌名

      Plasma and Fusion Research

      巻: 18 号: 0 ページ: 1406023-1406023

    • DOI

      10.1585/pfr.18.1406023

    • ISSN
      1880-6821
    • 年月日
      2023-04-27
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Maximum entropy states of collisionless positron-electron plasma in a dipole magnetic field2023

    • 著者名/発表者名
      Sato Naoki
    • 雑誌名

      Physics of Plasmas

      巻: 30 号: 4 ページ: 042503-042503

    • DOI

      10.1063/5.0135659

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 電子陽電子プラズマ生成に向けたダイポール磁場中への陽電子の入射と捕獲法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤晴彦
    • 学会等名
      物理学会2022年秋季大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Chaotic motion of positrons in a planned compact levitated dipole experiment2022

    • 著者名/発表者名
      H. Saitoh and I. Tanioka
    • 学会等名
      13th International Workshop on Non-Neutral Plasmas
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ダイポール磁場中の電子・陽電子プラズマ生成計画と磁気圏現象の実験研究2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤晴彦
    • 学会等名
      SGEPSS(地球電磁気・地球惑星圏学会)秋学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Creation and investigation of antimatter plasmas2022

    • 著者名/発表者名
      H. Saitoh
    • 学会等名
      31st International Toki Conference (ITC31)
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] RT-1におけるBdotループと電気光学センサを用いたホイッスラー波の磁場揺動計測2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤晴彦,西浦正樹,森敬洋,上田研二,仲川涼介,大沢隆二
    • 学会等名
      第39回 プラズマ・核融合学会 年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 電子・陽電子プラズマの実現に向けたダイポール磁場装置の開発状況2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤晴彦,柳長門
    • 学会等名
      第39回 プラズマ・核融合学会 年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] RT-1における磁気圏プラズマ波動現象の実験室研究の現状2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤晴彦,仲川涼介,上田研二,森敬洋,釼持尚輝,西浦正樹,吉田善章
    • 学会等名
      実験室・宇宙プラズマにおける波動粒子相互作用 研究会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 磁気圏型配位RT-1でコイル着地運転時に観測される磁場揺動の特性2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤晴彦,西浦正樹, 森敬洋, 上田研二, 仲川涼介
    • 学会等名
      物理学会2023年春季大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-28   更新日: 2025-06-20  

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