研究課題/領域番号 |
22H04945
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
羽澄 昌史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 量子場計測システム国際拠点, 教授 (20263197)
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研究分担者 |
長谷川 雅也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (60435617)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
186,680千円 (直接経費: 143,600千円、間接経費: 43,080千円)
2024年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2023年度: 66,430千円 (直接経費: 51,100千円、間接経費: 15,330千円)
2022年度: 32,500千円 (直接経費: 25,000千円、間接経費: 7,500千円)
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キーワード | CMB / インフレーション宇宙 / ダークエネルギー / ポーラーベア2望遠鏡 / インフレーション / ポーラーベア2望遠鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の宇宙の加速膨張が発見され、宇宙極初期の爆発的な加速膨張の間接的証拠も得られている。重力は引力のみで、宇宙膨張を減速させる働きしかないと思われてきたため、なぜ宇宙が加速膨張するのか謎であり、物理学の根幹を揺るがす大問題である。さらに最近、早期の宇宙と最近の宇宙では、膨張率(ハッブル定数)が一致しないという問題(ハッブル問題)から、現在の加速膨張の背後にあるエネルギー(暗黒エネルギー)の時間変化が示唆されている。物理学の大革新が起こる予兆の中で、本研究では、代表者が中心となり開発したポーラーベア2望遠鏡により、世界に先駆けてCMB偏光度の新しい観測結果を示し、宇宙加速膨張の謎の解明に挑む。
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研究実績の概要 |
【ポーラーベア2フェーズ1観測】初期観測データを用いて装置の光学特性を評価し、ポーラーベア2が期待通りの無偏光(強度)・偏光特性を持つ事を確認した。2台目の観測装置が観測サイトに設置されて稼働を開始した。 【較正装置の性能アップグレード (スーパースティミュレータ)】検出器のゲインを定期的にモニターするために導入した較正装置(スティミュレータ)の信号強度を10倍向上し連続モニターを可能にするため、信号源をヒーター(黒体輻射)から周波数逓倍器を用いたコヒーレントソースに変更し、プロトタイプを組み立て、検証試験を行い、期待通りの性能を確認した。 【観測データの解析状況】本研究チームの茅根が解析チームの取りまとめを行って、生データにフィルターや較正等の処理を施し、モデル化する解析フレームワークの開発を進めた。また較正手法の一つとしてプランク衛星データとの相互相関解析等の準備も行った。さらに、データに含まれる系統誤差を実データから評価する「Nullテスト」のフレームワークも主導して構築した。 【ポーラーベアデータの再解析(原始重力波探索・偏光角の時間変動解析)】ポーラーベア観測データの再解析を行い、2つの成果を発表した。1)原始重力波の探索感度を2.7倍改良する事に成功し、チリ・アタカマ高地からの観測としては最良の結果を発表した。2)CMB偏光角の時間変動を精密に測定し宇宙複屈折の検出を目指した。複屈折がアクシオン起源であると仮定する事で超軽量アクシオンに対して厳しい上限値を得ることに成功して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症による渡航制限、米国研究機関のストライキ、および、世界情勢による調達などの困難により、装置のノイズ低減作業に遅れが生じている。それ以外の点では、ポーラーベア2 フェーズ1観測、較正装置の性能アップグレード (スーパースティミュレータ)、観測データの解析状況のいずれも順調に研究が進展している。以上から「一部に遅れがあるが、概ね順調に研究が進展しており、一定の成果が見込まれる」状態である。
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今後の研究の推進方策 |
【観測データの蓄積】引き続き観測を継続する。通常のCMB 観測に加えて、これまでの研究で明らかになった過剰な雑音に対する原因の究明と対処を行うため、2台の望遠鏡を連動して運用するなど新たな観測データも取得する。特に大気の変動による“視野角を超えた”検出器間のコモンモード雑音の理解は今後のB モード探索において必須であり、それらの予想される系統誤差源に対して先手を打って対処をしていく。また、超新星残骸(TauA)の結果を用いてアクシオンの信号を探索する観測・解析を行う。 【フェーズ2観測に向けた較正装置の開発】B モード観測に重要な低周波雑音の抑制を目指して、リアルタイムに検出器の応答性をモニターできる装置の開発を引き続き行う。すでに実験室における原理検証は済んでおり、望遠鏡に搭載するためのコンパクト化とDAQ との噛み合わせをおこなっていく。本研究グループはこの装置の前哨戦となる較正装置“stimulator”の開発実績があり、3年以上無事故・無故障で安定に運用して来た。現地観測サイトでの作業経験も豊富に有しており、計画通り開発・運用が進められる体制になっている。 【データ解析によるCMB 偏光の精密測定】本研究後半は観測と並行してデータ解析を精力的に進める。較正データ解析の自動化・安定化を行い、開発した解析パイプラインと組み合わせてデータ処理をおこなっていく。また、データに含まれる予期せぬバイアスや、解析手法による系統誤差を削減するために、本研究の研究者が主導して開発して来た”Null テスト”・”Matrix-based purification”等の実装を行なっていき、より深い系統誤差の理解・抑制を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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