研究課題/領域番号 |
22H04946
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
和田 道治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50240560)
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研究分担者 |
SCHURY P.H 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30462724)
森本 幸司 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (00332247)
加治 大哉 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 上級技師 (00391912)
石山 博恒 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (50321534)
小浦 寛之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 室長 (50391264)
羽場 宏光 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (60360624)
岸本 忠史 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (90134808)
西村 俊二 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 先任研究員 (90272137)
宮武 宇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (50190799)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
188,890千円 (直接経費: 145,300千円、間接経費: 43,590千円)
2024年度: 32,240千円 (直接経費: 24,800千円、間接経費: 7,440千円)
2023年度: 70,980千円 (直接経費: 54,600千円、間接経費: 16,380千円)
2022年度: 33,670千円 (直接経費: 25,900千円、間接経費: 7,770千円)
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キーワード | 重元素の起源 / 精密質量測定 / 短寿命原子核 / 超重元素 / MRTOF質量分光器 / 質量測定 / 速い中性子捕獲過程 / イオントラップ / 多重反射型飛行時間測定式質量分光器 / 高周波イオンガイドガスセル / 新同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
現代核物理学の重要課題の一つは、白金やウランなどの重元素の起源の解明であり、そのための原子核実験からの寄与は、元素の合成過程に関与する千種類以上の短寿命原子核の特性を網羅的に測定することである。理化学研究所の加速器施設において、革新的な低速R Iビーム生成装置と質量分光器を組み合わせることにより、世界でもっとも広範囲の短寿命原子核の質量を能率よく高精度で測定できる3箇所の装置群を開発してきた。これらをさらに改良して駆使することで、宇宙における爆発的元素合成過程の解明の鍵となる結果が期待できる。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、加速器の故障により後期に計画していた幾つかのオンライン実験は中止となった。一方、カリフォルニウムおよびキュリウムの自発核分裂片を利用したオフラインの質量測定は順調に実行され、セリウム、ジルコニウムの中性子過剰同位体において初質量測定を実施できた。 これらの測定は装置の性能の向上および診断にも有効であり、時間をかけてしっかりと測定することができた。特に、元素ごとの荷電状態(1価、2価、3価)の分布とその温度依存性の興味深い測定が実施できた。中には同位体間(あるいは核異性体間)で異なる分布がみられることがあり、その物理的理解を検討している。 高速RIビームを停止してイオントラップに捕集するガスセル装置の改良も進めた。ひとつは、ヘリウムガス中に含まれる不純物で除去しにくいアルゴンガスを除去するためのアルゴントラップの整備である。ガス導入ラインに16Kまで冷やせる冷凍機を設置することで、大きな除去効率が達成できた。また、ガスセル内でのイオンの輸送速度および効率向上のためのワイヤー式の高周波カーテンを導入するべく、ワイヤー装置組み立て装置を製作した。 GARIS装置で進めている超重元素の精密質量測定をより確実に実行できるよう、質量測定実験に先立ち、崩壊分光により実際に生成されている超重元素同位体の量を確認できるようにした。 これまでに測定した結果の解析も進み、ウランの中性子過剰同位体を40年ぶりに新発見できたこと、チタンやバナジウム同位体において中性子数N=34の魔法数性が消失していることの発見について論文を出版し、2件のプレスリリースを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は加速器の故障で後期の実験が延期になったが、その間を利用して、核分裂片線源による装置の改良およびその性能診断法を開発できたことは今後の実験の効率・性能向上に大きく役立つ。 具体的な性能向上として、不純物のさらなる除去が可能となり、これまで困難だった特定の質量荷電比(40, 80など)近傍の原子核も測定可能になった。さらに、短寿命核の引き出し速度および効率の向上のためのガスセル装置の大幅な改造も目処がたった。 BigRIPS-SLOWRIのMRTOF装置では、もともと上流の実験のパラサイトとして質量実験が可能だったが、それに加えてベータ・ガンマ・中性子分光ができるようにガスセル下流に崩壊検出器を整備した。 超重元素の質量測定装置では、生成された超重元素同位体を崩壊検出器で確認した上で質量測定を開始できるように可動式の検出器を整備し、加速器のビーム条件等による生成量の不安定性を排除できるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、改良したガスセル装置を用いたBigRIPS-SLOWRI装置におけるSn100近傍、希土類領域、N=Z領域という最も重要な原子核を初めて精密質量測定する予定である。同時に崩壊分光も実行することで、重元素合成過程のより正確な研究が可能になる。 GARIS装置においては、超重元素ドブニウムの測定をさらに進めて、核異性体と規定準位からの崩壊を同定する。また、多核子移行反応生成物の直接捕集による重い中性子過剰核の質量測定のパイロット実験も実施する。ニホニウム実験の実施のために継続的にCa-48同位体の分離技術を開発する。 KEK元素選択型同位体分離器においては、多核子移行反応によるウラン近傍領域およびN=126近傍の質量測定および質量測定と結合したベータ・γ分光、レーザー分光実験を遂行する。
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