研究課題/領域番号 |
22H04950
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分C
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40451786)
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研究分担者 |
後藤 真宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主席研究員 (00343872)
李 禮林 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40850714)
ムテルドゥ ティモテ・マリ・フランソワ 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40912530)
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90435644)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
190,970千円 (直接経費: 146,900千円、間接経費: 44,070千円)
2024年度: 24,570千円 (直接経費: 18,900千円、間接経費: 5,670千円)
2023年度: 99,190千円 (直接経費: 76,300千円、間接経費: 22,890千円)
2022年度: 18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
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キーワード | 不秩序構造 / フォノン輸送 / 質量輸送 / ナノ構造 / メタフォノニクス |
研究開始時の研究の概要 |
静的および動的な不秩序ナノ構造を創製することで熱伝導の制御性の大幅な拡大を狙う。静的な系としては、非晶質材料から成る超格子などを作製する。一方、動的な系としては、構成元素の一部が動き回る「超不秩序材料」を創製する。例えば、2次元層状材料へのイオンや水の複合的インターカレーションを通じて、質量輸送とフォノン輸送が共存して相互作用する材料を実現する。それらに対して非弾性散乱実験によってフォノンの状態および緩和を直接計測するとともに、フォノン輸送と動的構造を同時に計測できる新手法を開発してその相関を評価する。さらに、これらを解析することで超不秩序系の熱輸送の新しい学理(メタフォノニクス)を構築する。
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研究実績の概要 |
静的な不秩序系の研究については、均一的な窒化シリコン系の非晶質材料を主な対象として、コンビナトリアルスパッタ成膜によって様々な組成や構造を有する試料を作製し、熱伝導率の評価を行った。その中で、重元素を添加すると、非晶質構造でも伝播するフォノンモードであるPropagonが散乱され得ることを見出した。さらなる展開を見据えて、数百nm厚レベルのナノ構造制御材料を実現するべく、コンビナトリアルスパッタ成膜とパルスインジェクションを組み合わせた新規概念の実験装置を開発した。 グラファイトに塩化マンガンと塩化鉄を同時にインターカレーションする方法を偶然見出し、この複合的なインターカレーションによって面直方向の熱伝導率を大きく低減することに成功した。微細構造解析により、多くの観察箇所で3層毎に分子層が1層導入されるStage3構造を有し、導入層の多くが塩化マンガンから成り、それ以外は頻塩化鉄から成ることが明らかになった。フォノン気体運動論モデルから、面直方向のフォノンの実効平均自由行程が層間距離の数倍まで小さくなっていることが分かった。 動的な不秩序系の研究については、グラファイトや六方晶窒化ホウ素ナノチャネルにおけるフォノンと水流動の相互作用を検証するための、グラフェンの加工や転写などの2次元材料ナノチャネルの作製工程を確立した。加工の際、電子線描画などのプロセスを洗練させて効率的ナノ構造作製を可能にした。グラファイトや六方晶窒化ホウ素界面における水の構造を解明するために、和周波発生分光測定を試行した。これらの現象の数値解析系を整備するべく、固体薄膜に挟まれた有機分子膜の熱輸送特性を分子動力学シミュレーションによって解析した。特に有機分子の構造や動的挙動による影響を明らかにするため、有機分子密度や薄膜間圧力を変化させた計算系により界面熱輸送特性を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
静的および動的な構造不秩序性を利用して熱輸送の新たな制御性を見出すことを目的として研究を進めるなかで、ユニークな静的不秩序を作製することに成功し、熱伝導率の大きな制御性を得ている。また、動的な不秩序構造については、ナノチャネル作製ができるようになるとともに、動的構造の新たな評価方法も試行している。これらの理由により、研究は順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
静的な不秩序系の研究については、非晶質構造でも伝播するフォノンモードであるPropagonが重元素などに散乱されるメカニズムについて、分子シミュレーションも交えて、より詳細に検証する。また、熱伝導率が拡散されるフォノンモードであるDiffusonに支配され、Propagonの寄与が小さいとされる非晶質酸化シリコンを用いて同様の計測を行うことで、熱伝導率低減のメカニズムを同定する。さらに、独自に開発した超不秩序材料作製装置によるサンプル作製実験を行い、有機/無機ハイブリッドナノ構造体作製を試みる。その熱伝導率、および、構造解析を行い、当該手法の有効性確認を試みる。 塩化鉄のグラファイトインターカレーション系についは、分子動力学法を利用して、フォノンの波動性の寄与も含めたより微視的な視点でのメカニズムを明らかにする。また、本研究で見出した複数のイオンを同時に層間に導入する複合的なインターカレーションにより熱伝導率の制御性をさらに高める可能性を追求する。 動的な不秩序系の研究については、グラファイトの層間に流動可能なゲスト分子を導入する研究を進める。固体に隣接する水の構造を理解するために、和周波発生分光測定や増幅ラマン散乱によって、閉じ込められた水の動的構造に関する情報を得る。さらに、水を封入したチャネルを作製し、液体と固体の相互作用の熱輸送特性への影響を評価する。その際、基板上に設けた2次元チャネルの熱伝導率を計測する必要があり、そのためにラマン分光のポンププローブ法を利用したIn-Situ分光式熱拡散率測定顕微鏡装置を導入する。なお、当該装置は静的な不秩序系の面内熱伝導率計測にも役立つ。それと並行して、分子シミュレーションを用いて、固体薄膜間に挟まれた液体の物質拡散を制御しながら界面熱輸送特性の解析を行い、物質拡散と界面熱輸送との相関性を明らかにする。
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