研究課題/領域番号 |
22H04955
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分C
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
鵜澤 佳徳 国立天文台, 先端技術センター, 教授 (00359093)
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研究分担者 |
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (00617417)
牧瀬 圭正 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (60363321)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
194,350千円 (直接経費: 149,500千円、間接経費: 44,850千円)
2024年度: 35,100千円 (直接経費: 27,000千円、間接経費: 8,100千円)
2023年度: 32,500千円 (直接経費: 25,000千円、間接経費: 7,500千円)
2022年度: 88,530千円 (直接経費: 68,100千円、間接経費: 20,430千円)
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キーワード | SISミキサ / 非相反回路 / ジョセフソン発振器 / 集積回路 / 量子コンピュータ |
研究開始時の研究の概要 |
超伝導体―絶縁体―超伝導体(SIS)ミキサを周波数アップコンバータおよびダウンコンバータとして用い、各ミキサへ印加するミリ波帯局部発振波(LO)や信号を移相回路で制御する斬新な非相反集積回路素子を開発する。このために、導波管を用いた移相回路やSISミキサなどで非相反回路を設計・試作し、実験と理論解析を行うことで、性能追及のための基礎動作特性を明らかにする。LO源を集積化するためにジョセフソン発振器を開発すると共に、非相反集積回路を実現するための超伝導ミリ波平面回路設計・作製技術を開発する。最終的にモノリシック集積化した革新的な非相反回路素子の性能実証を行う。
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研究実績の概要 |
初年度の2022年度は、SISミキサによる非相反回路動作としてジャイレータの原理実証を目指した。このために、2つの導波管SISミキサと移相器を用いた実験系の整備を行い、実験を進めた結果、0.01-5GHzで進行波と後進波に180度の位相差が生じる広帯域ジャイレータ動作を世界で初めて実証することに成功した。SISミキサ間にはインピーダンス不整合による定在波を抑圧するために6dBの減衰器が挿入されているが、減衰器無しで整合を取ることが出来れば利得も期待でき、将来の方向性増幅器の実現可能性も示した。 SISミキサのLO源として用いるジョセフソンアレイ発振器については、基本動作の確認を目的として検出器一体型100GHz帯発振器を設計、試作した。同発振器は、31個のジョセフソン素子を超伝導マイクロストリップ線路共振器内の半波長毎に配置し、ACジョセフソン効果による個々の発振出力を位相合成している。検出器で見積もられる発振電力として、約100GHzの発振周波数において約0.2μWが得られ、設計の妥当性を確認した。 上記に用いる超伝導デバイス開発に加えて、SISミキサにおいては、動作周波数の広帯域化のために、高臨界電流密度のNb/Al-AlN/Al/Nb接合の開発を行っている。これまで27kA/cm2の臨界電流密度を有し、リーク電流の小さな高品質の接合が得られている。 新たな展開として、2つのミキサ間の位相遅延がπ/4+mπのとき、2つのミキサへの局部発振波の位相差がπ/4+nπであるとアイソレータ動作になることを世界で初めて見出した(ジャイレータの場合はそれぞれπ/2+mπとπ/2+nπ)。室温実験系で動作確認を行い、特許出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体計画は、以下の通りである。導波管を用いた移相回路やSISミキサなどで非相反回路を設計・試作し、性能追及のための基礎動作特性を明らかにする。集積化に適したジョセフソン発振器を設計・試作し、LO源としての性能を理論と実験により検証する。非相反集積回路を実現するための超伝導デバイス作製技術を開発し、最終的にモノリシック集積化した革新的な非相反回路素子の性能実証を目指す。このため研究課題を (1)ミリ波帯SISミキサを用いた非相反回路設計技術の開発、(2)SISミキサを励起するミリ波帯超伝導発振器の開発、そして(3)これらに必要な超伝導デバイス作製技術の開発の3つに分け、研究分担者、研究協力者と共に5年間で研究を実施する。 初年度である2022年度は(1)において、非相反回路の実験に必要なミリ波帯SISミキサや移相回路などの導波管モジュールの設計、試作を行い、SISミキサによるジャイレータ動作の実証に世界で初めて成功した。 (2)においては、量子論的周波数変換利得を得るために必要となる100GHz帯の発振周波数となるよう、検出器一体型ジョセフソンアレイ発振器を設計、試作し、約100GHzにおいて約0.2μWの発振電力が得られた。また、(3)においては、(1)、(2)に必要な超伝導デバイスを供給するだけでなく、SISミキサの広帯域化に資する高臨界電流密度のNb/Al-AlN/Al/Nb接合の作製にも成功している。 上述の成果を、Applied Superconductivity Conference等の国際会議や国内会議で発表を行った他、学術論文にまとめて投稿し、IEEE Trans. Appl. Supercond.に掲載となるなど、計画通りの進捗があったと言え、さらに2つのミキサによるアイソレータ動作の発見など、新たな展開も見せている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2023年度は、2022年度に新たに実証に成功した室温マイクロ波コンポーネントによるアイソレータ動作(特許出願済み)について、SISミキサを用いて原理実証を行う。このために、研究課題(1)においては、これまで構築した非相反回路の実験に必要なミリ波帯SISミキサや移相回路などの実験系を発展させ、専用の導波管ブロックの設計、試作を行う。 研究課題(2)においては、昨年度設計したジョセフソン発振器の試作、評価を継続して行い、W帯(75-110GHz)あるいはD帯(110-170GHz)の発振を目指す。また、研究課題(1)に用いることを想定した導波管発振器モジュールの設計、試作に着手する。 研究課題(3)においては、昨年度に引き続き、SISミキサの広帯域化のために、高臨界電流密度を有する高品質Nb/Al-AlN/Al/Nb接合を用いたミキサチップの作製技術を開発し、研究課題(1)に提供すると共に、低電流密度のNb/Al-AlOx/Nb接合を用いたジョセフソン発振器デバイスを研究課題(2)に提供する。各種評価の精度を高めるためにマニュアルプローバ等を導入する。 得られた成果を順次取りまとめ、国内外の学会発表や論文発表を行う。2023年度は、イタリア・ボローニャで開催される16th European Conference on Applied Superconductivity (EUCAS2023) や他の国内外の学会等で成果発表を行う。
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