研究課題/領域番号 |
22H04961
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 浩之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70216753)
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研究分担者 |
百瀬 敏光 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (20219992)
関野 正樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20401036)
羽場 宏光 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (60360624)
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
島添 健次 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70589340)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
184,210千円 (直接経費: 141,700千円、間接経費: 42,510千円)
2024年度: 44,330千円 (直接経費: 34,100千円、間接経費: 10,230千円)
2023年度: 47,710千円 (直接経費: 36,700千円、間接経費: 11,010千円)
2022年度: 46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
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キーワード | ガンマ線 / 蛍光体 / 核医学 / イメージング / MRI / 同時計数 / 時間幅信号処理 / DPECT |
研究開始時の研究の概要 |
従来のMRI(Magnetic Resonance Imaging)は、感度不足のため特定核種の詳細挙動を得ることは難しかった。本研究は2本のガンマ線を続けて放出する核種に着目し、これらの時間・空間相関を用い、コリメータを工夫して配置することで画像再構成不要の革新的なイメージング法を確立するとともに、外部電磁場を加えた多次元空間における高次の相関計測により、核スピンを介して生体深部でのpHやプローブ核種の化学結合状態などの計測を行う新しい多光子相関イメージング法の研究を行うものである。核医学とMRIの原理の真の融合により、医用イメージングの新たな潮流を先導することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、時間・空間・電磁場の多次元空間における高次相関を利用して、トレーサーとなる放射性核種の量・それらの置かれた環境についての局所情報を得ることを目指し、DPECT撮像システムを製作し、外部磁場発生・共鳴用のRF発生装置を組み込み、DPE-MRIを構築する。そこでIn-111等の放射性核種の核磁気共鳴・核スピン緩和時間を利用し、局所的な環境に関する情報、具体的には対象核種周辺の電場の強さ、化学状態、生体深部でのpH等の情報を得るものである。5つのサブテーマを設定し研究を進め、本年度は次の成果を得た。1) 磁場環境下コリメータ一体型シンチレータ開発:コリメータ一体型シンチレータとして、磁場に不感な金属としてタングステンを選択し、高さ30mmのタングステンコリメータ内にシンチレータを配置した構造のパラレルホール型のシンチレータモジュールを設計し、製作した。2) 画像再構成不要二光子イメージングとDPEシステム構築:パラレルホールコリメータとスリットコリメータの2種類のコリメータを組み合わせた測定系を組み上げて、マイクロチューブの測定を行い、空間分解能として、5.5 mmの値が得られ、パラレルホールコリメータ・パラレルホールコリメータの組み合わせで得られる空間分解能と同等の値となった。また1.5 Tまでの強磁場中での動作の実証も行った。3) DPE-MRI電磁場設計・製作と緩和時間計測:超常磁性酸化鉄ナノ粒子を用いた実験により、世界で初めてIn-111を用いたT2緩和時間の測定に取り組み、原理実証に成功した。4) DPE-MRI放射性核種の探索と合成: Yb-169の合成と精製を進めるとともに、新たに見出した陽電子放出核種の合成に成功した。5) DPE-MRIシステム評価:DPE-MRIシステムの評価を行うためのファントムの製作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は順調に進展しており、当初期待していた以上の成果が見込まれると考えている。原理実証の点では、2つのガンマ線光子の相関に注目し、平面コリメータと直線コリメータの2種類のコリメータを用いた計測を行い、検出器で測定された2個のガンマ線から平面と直線の交点として放出されたRIの位置を求めるという、画像再構成不要のイメージング法を開発し、実際にIn-111とLu-177を用い、画像再構成不要のイメージングに成功し、位置分解能として、5 mm強の値が得られた。また、In-111とLu-177という2種の異なる核種の同時測定を行い、エネルギー情報を用いて、これら2種の核種を分離し、独立に評価することが可能であることを示した。 MRIとRIのイメージング原理の融合においては、横緩和時間の計測を磁性ナノ粒子を用いて実験的に評価し、核種In-111を用いて、磁性ナノ粒子の量が増えると横緩和時間が短くなるという結果が得られた。これは核種In-111を用いたf-MRIの可能性を拓く結果であるが、当初は令和6年度に実施する予定であった成果を既に先行して実現した。さらに、核種の製造においては、当初想定していなかった核種としてTe-118の開発に成功した。これを用いて抗体やペプチドを標識することにより、体内動態を長期にわたって、PETの高い画質で計測することを可能とするため、セラノスティクスにおいて大変有用な核種となるものであると期待される。この核種の利用については抗体関連の研究者を必要とし、本研究の対象範囲を超えるものであるため、現在、本研究とは別に研究計画をたてることを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のように研究を推進していく予定である。 コリメータ一体型のシンチレータについてはYAPシンチレータを封止した構造のシンチレータを製作し、高分解能システムの実現に向けた開発を行う。検出器システムについては、コリメータ一体型シンチレータと組み合わせて、2 mm 分解能の全体システムの構築を行い、その後、0.8 mm分解能システムの基本設計とシステム構築を行い、磁場中で動作させる。緩和時間計測については、RFパルスを照射する機構を装置に導入することによって核スピンをマニピュレーションして、T1緩和時間の計測を行う予定である。本原理検証については、3 mm分解能のシステムを用いて実施する。緩和時間計測における磁場配置・RFの最適化を図り、マウスを用いた実験系の設計を行い、実験を実施する予定である。核種合成については、これまでに合成に成功したYb-169に加えて、Cu-67などの合成に取り組むとともに、新たな候補核種の探索を行いながら、新規核種の分離精製法の改良を続ける。なお、新規に見出したTe-118については、別途、研究体制を構築して実施することを検討している。ファントムについては、2 ㎜分解能システムの試験評価、0.8 mm分解能システムを用いた評価実験を実施する予定である。 最終的には以上の成果をとりまとめて、全体報告書を作成する予定である。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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