研究課題/領域番号 |
22H04968
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
グン 剣萍 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (20250417)
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研究分担者 |
中島 祐 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (80574350)
印出井 努 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (30420409)
野々山 貴行 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (50709251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
193,440千円 (直接経費: 148,800千円、間接経費: 44,640千円)
2024年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2023年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2022年度: 46,280千円 (直接経費: 35,600千円、間接経費: 10,680千円)
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キーワード | DNゲル / 代謝 / 力学刺激 / メタボリック材料 / 破壊と再生 / 高分子網目 / メカノラジカル / メカノケミストリー |
研究開始時の研究の概要 |
生物は,外部から栄養を取り入れ,力学刺激で内部構造の破壊と再形成を繰り返すことで日々成長し、環境適応性を獲得していく。本研究では,この生物の成長の仕組みに範を得 た力学トレーニングによる「自己進化」材料構築の原理を提案する。本研究では,外部から自身の原料(栄養)を取り込む能力を有し,力学刺激による内部構造の破壊と再形成反応によってその質量,体積,形状,強度,機能などを大きく向上する材料を創出する。これまでの材料の概念を静的から動的へと大きく展開し、新しい学術を切り拓く。
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研究実績の概要 |
基礎研究班は、反応支配因子の制御に関して、破壊素過程を研究した。Stem材料となるDNゲルの主鎖・架橋点の構造(結合エネルギー)を変化させ、ゲル延伸時に発生するラジカル濃度を調べた。結合エネルギーは計算化学者との共同研究によって求めた。結果、ゲルのラジカル発生量は原則として主鎖・架橋点の結合エネルギーが小さいほど大きくなることが分かった。一方で、ゲルの力学特性は結合エネルギーにあまり依存しなかった。ここから、DNゲルの主鎖・架橋点に適度に弱い結合を導入することにより、ゲルの力学特性をあまり落とさずに、伸長時のラジカル発生量を向上させることが出来た。 また、一般的なDNゲルは一度延伸するとラジカル発生能を失ってしまうが、網目鎖間に強い引力的相互作用を導入することにより、繰り返しのラジカル発生能を持つDNゲルを創製した。本ゲルは、延伸するたびにラジカルを発生させることが可能であるため、構造更新・機能化プロセスを複数回行うことが可能である。 機能開拓班は、例えば形態的成長に関し、DNゲルの分子縫合を実現した。複数枚のDNゲルにモノマー・架橋剤を導入し、重ねて圧縮することで、多数のゲルを接着・一体化させることに成功した。複数枚のゲルに跨って新しい高分子網目が重合されることにより、複数のゲルゲルが分子的に縫合された結果である。その接着力は十分に高く、導入するモノマー・架橋剤の組成の最適化により、DNゲルのバルク引裂強度を超える接着力を得ることが出来た。また本方法を応用し、複数のゲル部材を一体化させることで複雑な形状を実現すること、また任意の物質(例えば砂のような粒子など)を内包したDNゲルを得ることなどが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
構造更新反応の基礎研究・機能開拓は当初スケジュール通りに進行している。基礎研究班はこれまでに、ゲル内部におけるモノマーの拡散挙動解析、力誘起ラジカル重合の成長・停止反応速度解析、ゲルの網目構造・化学種と発生するラジカル濃度との関係などを解明した。また機能開拓班は、構造更新により、ゲルの力学特性を導入モノマーによって多様に制御すること、ゲルに様々な形状を付与すること、複数のゲルを接着させること、ゲル上で細胞の配列・分化を制御することなどを達成している。 上記に加え、本課題遂行に際し、ゲル内の網目構造を同定することを目的として、透過型電子顕微鏡による高分子網目構造の直接観察技術が開発出来た。ゲルの特性を決めているのはその網目構造であるにもかかわらず、ゲル網目構造を同定することはこれまでほぼ不可能であった。本研究はゲル網目構造を初めて可視化するものであり、ゲルの基礎から応用研究のための基礎技術として、多方面に大きな影響力が期待出来る。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究班では引き続き、反応素過程の完全理解を目指す。最終目標は、構造更新反応を統合的に理解し、本反応を再現するシミュレーションを実装することである。すなわち、各素過程を司る制御因子を見出し、その因子と各種物性パラメーターとの関係を実験によって明らかとし、定式化する。これを3つの素過程全てにおいて行い、統合したシミュレーションを作成し、構造更新反応をin silicoで再現する。 機能開拓班では、本システムの原理を応用して新コンセプト材料の創製に取り組む。例えば、自己に加わった力の履歴を記憶・学習して最適力学構造を自発的に形成するインテリジェント部材を開発する。また、使用していると強靭化するが、不要になると退化して分解するような材料を創製する。さらに、現在は嫌気環境でしか起こらない構造更新反応を空気中で引き起こす仕組みを開発する。
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