研究課題/領域番号 |
22H04969
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学研究科, 教授 (50217428)
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研究分担者 |
近藤 梓 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30645544)
是永 敏伸 岩手大学, 理工学部, 教授 (70335579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
198,250千円 (直接経費: 152,500千円、間接経費: 45,750千円)
2024年度: 26,780千円 (直接経費: 20,600千円、間接経費: 6,180千円)
2023年度: 25,220千円 (直接経費: 19,400千円、間接経費: 5,820千円)
2022年度: 92,430千円 (直接経費: 71,100千円、間接経費: 21,330千円)
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キーワード | 不斉合成 / 有機分子触媒 / 水素結合 / 塩基 / 触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで触媒としての利用がほとんどなされていなかった超強塩基性有機分子に着目し、これらの触媒としての機能開拓を図るとともに、不斉認識や分子認識など基質認識能を付与した基質認識型・超強塩基性有機分子触媒の設計開発を目的としている。高度分子変換に要求される「高い触媒活性の実現」「直截的な分子変換」「鏡像異性体の選択的合成」「立体化学の自在制御」「触媒の回収再使用」を実現しうる超強塩基性有機分子触媒を革新的な設計概念のもとに開発することで先例のない触媒反応系を開拓し、医薬品等の開発におけるプロセス化学にイノベーションをもたらす高度分子変換法を確立することが最終的な目標である。
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研究実績の概要 |
本研究で開発する二塩基協調型という独自の設計概念のもとで開発する基質認識型・超強塩基性有機分子触媒は超強塩基性を実現することが可能である。従って、従来の塩基性有機分子触媒では活性化が困難であったプロ求核剤を利用した触媒反応系の広範な開拓が期待され、これまで未踏領域となっていた変換反応を実現する高いポテンシャルを秘めている。そこで2023年度は主に旧来のキラル超強塩基触媒ビス(グアニジノ)イミノホスホランも活用しながら触媒反応系の探索を中心に行うととともに、「電気的に中性」ならびに「アニオン性」の二塩基協調型触媒群とともに、「電気的に中性」と「アニオン性」を組み合わせた触媒系のライブラリーの構築を進めた。 触媒反応系の探索では、当研究室で精力的に開発研究に取り組んできた[1,2]-phospha-Brook手に反応の不斉触媒化を検討し、不斉プロトン化に成功した。この成功を受け、[1,2]-phospha-Brook転位を活用して発生困難なカルバニオン種の触媒的な生成と引き続く炭素―炭素結合生成反応の開発をアキラルな超強塩基を用いて行った。その結果、ジアリールメチルアニオン種などの触媒的な発生が極めて困難なアニオン種の発生と引き続く変換反応の開発に成功した。 旧来のキラル超強塩基触媒ビス(グアニジノ)イミノホスホランを用いた不斉触媒反応系の開発でも一定の成果を挙げることができた。具体的にはシアノヒドリン誘導体をプロ求核剤とした不斉触媒反応の開発において、多官能性でかつ2つの不斉炭素を新たに生じる炭素-炭素結合生成反応の高度な立体化学制御に成功した。タンデム反応の開発にも高度な立体化学制御に成果を挙げている。 遠隔位不斉制御では、新たに生じる2つの不斉炭素の制御法がそれぞれ異なるにも関わらず、二塩基協調型・超強塩基触媒を用いることで高度な立体化学制御に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二塩基協調型・超強塩基触媒を用いた不斉触媒反応の開発という観点からは、実現している触媒反応系が限られており、当初の研究計画からはやや遅れているとみられる。一方、触媒反応系の開拓という観点からは、[1,2]-phospha-Brook転位を利用した触媒反応系の有用性を示すことができた。特に、ジアリールメチルアニオンを触媒的に発生することができたことは、今後の更なる展開が期待できる利用価値の高いアニオン種の発生法を見出すことができた。当初の研究計画には予定していなかった触媒反応系であったことを考慮すると、この発見は大きな進展と考えることができる。 旧来の基質認識型・超強塩基触媒を用いてではあるが、タンデム反応の開発ができたことは重要な知見であると考えている。タンデム反応の形式は多様であり、本研究の主題である二塩基協調型・超強塩基触媒の強力な塩基性があれば、更なる展開が期待できると考えられる。この例では分子内/分子間の連続反応であったが、分子間/分子内の連続化など組み合わせは多様である。一つの触媒で複雑な分子骨格を一挙に構築することが可能なタンデム反応の利用価値は高く、今後の展開が期待される。 一方、酸性度の低いプロ求核剤を用いた触媒反応系においても難易度の高い1,3-位遠隔立体化学制御に二塩基協調型・超強塩基触媒が優れた触媒となることを見出したことは大きな収穫である。「各種触媒誘導体の合成の容易さ」「触媒の分子構造や置換パターンの多様性」「超強塩基性のチューニングの容易さ」を目指した二塩基協調型・超強塩基触媒のポテンシャルをもってすれば、更なる遠隔不斉誘導、例えば1,4-位の立体化学制御を実現する触媒反応系へと展開することが可能と考えている。 以上を踏まえると新たな触媒反応系の展開や遠隔位不斉誘導など今後の展開が期待される成果を挙げており、概ね順調ということができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発する二塩基協調型という独自の設計概念のもとで開発する基質認識型・超強塩基性有機分子触媒は超強塩基性を実現することが可能である。従って、従来の塩基性有機分子触媒では活性化が困難であったプロ求核剤を利用した触媒反応系の広範な開拓が期待される。そこで2024年度以降も引き続き、「電気的に中性」ならびに「アニオン性」の二塩基協調型触媒群とともに、「電気的に中性」と「アニオン性」を組み合わせた触媒系にも触媒探索の幅を広げ、下記の三つの計画を実施する。 計画1:新たな設計概念のもとに開発する「電気的に中性」な二塩基協調型触媒の各種誘導体をキラルジアミン・リンカーで「超強塩基性官能基部位」と「基質認識部位」を連結して収束合成した触媒ライブラリーを構築する。 計画2:アニオン性二塩基協調型触媒も同様に多様な触媒ライブラリーの構築が容易であり、この特徴を活用して酸性度の低い一群のプロ求核剤を用いた新規触媒反応系の開拓を推進する。この際、アニオン性の「超強塩基性官能基」はウレエートから、グアニジンの共役塩基であるグアニジエートやより単純なアルコキシドなども候補官能基として検討する。アニオン性の「基質認識部位」もSchiff塩基に限定されるものではなくカルボキシラートやホスフェートなども導入を検討し、組み合わせによる触媒分子設計は多様性を活かした触媒開発を検討する。 計画3:「超強塩基性官能基」と「基質認識部位」に”電気的に中性な官能基”と”アニオン性の官能基”を組み合わせた触媒設計。「アニオン性/中性」および逆の組み合わせ「中性/アニオン性」をもつ触媒の設計開発に着手する。 これら計画1~3で構築した触媒ライブラリーを用いて酸性度の低い一連のプロ求核剤を用いた新規触媒反応系の開拓を検討する。また、これらの触媒群は性質の異なる二塩基協調型触媒であることから相補的に探索を進める。
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