研究課題/領域番号 |
22H04972
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50195781)
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研究分担者 |
北之園 拓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50755981)
山下 恭弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90334341)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
193,960千円 (直接経費: 149,200千円、間接経費: 44,760千円)
2024年度: 35,880千円 (直接経費: 27,600千円、間接経費: 8,280千円)
2023年度: 35,880千円 (直接経費: 27,600千円、間接経費: 8,280千円)
2022年度: 50,440千円 (直接経費: 38,800千円、間接経費: 11,640千円)
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キーワード | 有機化学 / 水中 / アクアケミストリー / 固体触媒 / 不斉反応場 / 反応有機化学 / 水溶媒 / ルイス酸触媒 / 塩基触媒 / 固体塩基触媒 / 自己修復 |
研究開始時の研究の概要 |
有機化学・有機合成化学は、有機溶媒を用いることを前提として体系化され社会にも貢献してきたが、有機溶媒は多くが環境や人体に有害であり可燃性で危険なものも多い。一方、水は環境や人体に対して無害で安全かつ安価でもあることから、水を有機溶媒の代わりに用いることができれば環境面からも経済面からも理想的である。本研究はこのような背景のもと、これまで代表者らが進めてきた水中での有機化学・有機合成化学の研究を大きく発展させるものである。これまでの有機溶媒を用いる有機化学・有機合成化学とは異なる、水を中心とする新しい有機化学・有機合成化学(アクア有機化学・有機合成化学)を展開し、新学問領域の創成を目指す。
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研究実績の概要 |
これまでに水中で機能する試薬を探索し、亜硝酸 2-メトキシエチルがラジカルニトロ化反応を水中で進行させ、有機溶媒中とは異なった化学選択性を与える優れた性質を明らかにしている。更に検討を進めたところ、2 位置換インドール類との反応において、オキシム化された生成物が良好な収率で得られることを見出した。有機溶媒中においては 3 位のニトロ化が支配的であり、本反応の水中特異性を明らかにした。合成された新規化合物群の化学的反応性を利用し、β位にオキシム骨格を有するαアミノ酸に誘導することもできた。水の特異性が顕著であることから、反応機構をDFT計算を参考に検討したところ、中間体としての3-ニトロソインドールからの1,2-Hシフトが架橋水分子によって大きく促進されることが示された。また、水中で重要な骨格構築反応を実現するための触媒戦略にも取り組み、塩基を用いない水中ミセル触媒が直截的不斉アルドール反応の立体選択性の発現に有効であることを見出した。プロピオフェノンに対する不斉制御はこれまでに成功例はほぼない。 有機金属試薬を用いる反応は、多くの場合化学量論量の金属試薬を必要とする。そこで金属イオンを電気化学的還元によって電極上で0価金属に再生させる触媒サイクルを考案し、不均一系触媒を電極として用いる電解反応を設計した。これまで有機電解反応にほとんど用いられてこなかった窒素ドープカーボン担持単原子金属に着目し、その強い金属―窒素相互作用によって担持した金属種を大きく安定化し、金属漏出を抑制する役割を期待した。臭化アリルを用いるイミンのアリル化反応を行ったところ、反応が高収率で進行し、亜鉛種の漏出も大幅に抑制できることを明らかにした。本系を含め、水を用いる反応条件の実生産への展開を見据え、水溶液を送液しながらも触媒活性を維持できる連続フロー合成技術の開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した研究課題は着実に進展しており、研究成果が実を結びつつある。DFT計算で当初の想定以上に水の役割を記述できており、水中での分子挙動理解の一助となっている。フロー法への展開についても、水溶液中での耐久性を得るための触媒設計に関する知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
水中に反応場を構築しその特異性に着目することに解決の糸口を見出しており、有効な反応場を構築できる触媒分子や触媒系の構築を進める。具体的には水中での特異な反応性を見出すべく、ナノチューブ、界面活性剤一体型触媒、酸化物、水酸化物などの不溶性金属塩を軸に多様な分子変換を試みる。また、これらの特異性の理解を深めるべく、各種測定、計算化学、多変数解析などの活用を図りたい。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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