研究課題/領域番号 |
22H04975
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉本 直己 甲南大学, 学長直属, 特別客員教授 (60206430)
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研究分担者 |
松浦 和則 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60283389)
沼田 圭司 京都大学, 工学研究科, 教授 (40584529)
遠藤 玉樹 甲南大学, フロンティアサイエンス研究科, 准教授 (90550236)
高橋 俊太郎 甲南大学, フロンティアサイエンス研究科, 准教授 (40456257)
建石 寿枝 甲南大学, フロンティアサイエンス研究科, 准教授 (20593495)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
197,340千円 (直接経費: 151,800千円、間接経費: 45,540千円)
2024年度: 27,690千円 (直接経費: 21,300千円、間接経費: 6,390千円)
2023年度: 28,340千円 (直接経費: 21,800千円、間接経費: 6,540千円)
2022年度: 83,070千円 (直接経費: 63,900千円、間接経費: 19,170千円)
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キーワード | 核酸構造 / 細胞内環境 / エネルギーデータベース / 熱安定性予測 / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「遺伝情報の保持」と「情報発現の制御」に関与する任意の核酸構造(二重らせん構造および非二重らせん構造)が、細胞内でいつ、どこで、どのように形成し機能するのかを予測する。そのために、細胞内の時空間的な分子環境の変動を考慮して核酸構造の安定性をエネルギーレベルで予測できる、汎用的なパラメータを得る。最終的には生命現象を「可視化」から「数値化」することを念頭に、核酸構造の安定性が生体反応(遺伝子発現など)に与える影響を、その分子機構と共に定量的に解析する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、当初の研究計画に従い、細胞内の時空環境による核酸構造への影響を【知る】研究、および任意の時空環境での安定性を予測できるSETUPパラメータを【得る】研究を中心に研究を展開した。 RNA/DNAから形成されるハイブリッド二重らせん構造について、NMRによる二重らせん構造の解析を国際共同研究として行い、配列に依存したエネルギーパラメータの違いを構造学的観点から詳細に解明した。さらに、細胞内でハイブリッド二重らせん構造の形成を直接観測し、予測される安定性と細胞内で形成されるハイブリッド二重らせん構造の割合とが相関する結果を得た(J. Am. Chem. Soc., 145, 23503 (2023))。細胞内の空間的な分子配置を維持したまま核酸構造の物理化学的な解析ができる新たな実験系を構築し、試験管内と細胞内ではカリウムイオンと四重らせん構造の親和性が大きく異なることを示した(J. Am. Chem. Soc., 146, 8005 (2024))。 【知る】研究、【得る】研究で計画以上に研究が進展したため、2023年度はさらに計画を前倒しし、予測した任意の核酸構造の安定性と生体反応への影響との相関を【示す】研究にも着手した。高濃度の分子イオン(コリンイオン)存在下での核酸構造の安定性を解析し、転写反応の活性と相関させて細胞内イオンによる核酸の構造と機能への影響を明らかにした(ACS Omega, 239, 5675 (2024) )。さらに、がん関連遺伝子であるBCL2のプロモーター領域の配列が形成するi-motif構造に低分子化合物であるクリスタルバイオレットが結合し、i-motif構造に依存した転写反応の調節やi-motif構造の細胞内検出に利用できる可能性を示した(Sci. Rep., 13, 14338 (2023))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞内の時空環境による核酸構造への影響を【知る】研究として、既に、DNA/DNA、RNA/RNA、RNA/DNAという全ての組み合わせの二重らせん構造の安定性を予測できる統合的なエネルギーデータベースを構築し、世界に先駆けてそのデータベースを公開した。本研究課題で構築したデータベースは、核酸の相補性を利用した様々な技術開発を加速的に発展させることができる。本研究課題においても、RNA/RNAの二重らせん構造のエネルギーパラメータを取得した成果(J. Am. Chem. Soc., 145, 23503 (2023))では、共存溶質が存在する環境を想定して予測した二重らせん構造の安定性を基に、細胞内での転写反応やゲノム編集反応の効率、核酸医薬品による遺伝子発現抑制の効率を推察できた。 任意の時空環境での安定性を予測できるSETUPパラメータを【得る】研究においても、当初の研究計画に従い、細胞内の分子配置を維持したまま物理化学的な核酸構造の安定性解析ができる実験系としてSHELLを構築した。この実験系を用いることで、がん疾患の進行に伴う特異的な環境変化が核酸構造の安定性に及ぼす影響を定量的に明らかにした。さらに、このような核酸構造形成とがん疾患の進行度に相関が見出されつつあることから、この成果は非標準核酸構造を標的とした創薬研究を飛躍的に発展させ得る可能性がある(J. Am. Chem. Soc., 146, 8005 (2024))。 以上のように、本研究課題では当初の研究計画に沿って順調に研究成果を発信している。また、ATリッチ配列やGCリッチ配列が形成する二重らせん構造の水和状態が標準的な二重らせん構造とは異なることなど、当初予見し得なかった興味深い成果も得られている。さらに、非二重らせん構造の細胞内での新たな役割なども明らかになりつつあり、本研究課題は期待以上の研究成果を挙げつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は、これまでに進めてきた、細胞内の時空環境による核酸構造への影響を【知る】研究、任意の時空環境での安定性を予測できるSETUPパラメータを【得る】研究に加え、予測した任意の核酸構造の安定性と生体反応への影響との相関を【示す】研究も同時並行で進める。特に、【示す】研究過程では、これまでに得られたSETUPパラメータを用いて予測した核酸構造の安定性から、それぞれの構造による生体反応への影響まで予測できることを示す。さらに、同じ配列の核酸であっても、時空環境の違いで形成される核酸構造やその安定性が異なり、生体反応への影響も変動することを示す。 研究の一例として、細胞内でpHが異なる核内とミトコンドリア内(ミトコンドリア内は高いpHを示す)において、プラスミドとして導入するレポーター遺伝子の発現を比較する。そして、同じ配列であっても予測されるi-motif構造の安定性の違いで遺伝子発現への影響が異なることを示す。さらに本研究では、SETUPパラメータを活用し、ゲノム上のプロモーター領域で形成され得るグアニン四重らせん構造の安定性をカリウム濃度の影響も踏まえて網羅的に予測する。そして、がんの進行に伴う細胞内カリウム濃度の低下、およびそれに伴う四重らせん構造の安定性の変動により、遺伝子の発現を定量的に予測できることを示す。
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