研究課題/領域番号 |
22H04976
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分F
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大利 徹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70264679)
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研究分担者 |
小笠原 泰志 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20732986)
森田 洋行 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20416663)
濱野 吉十 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50372834)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
169,260千円 (直接経費: 130,200千円、間接経費: 39,060千円)
2024年度: 32,890千円 (直接経費: 25,300千円、間接経費: 7,590千円)
2023年度: 31,980千円 (直接経費: 24,600千円、間接経費: 7,380千円)
2022年度: 35,750千円 (直接経費: 27,500千円、間接経費: 8,250千円)
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キーワード | ペプチド / エピメラーゼ / シュードペプチド / 生合成 / ペプチドエピメラーゼ / ペプチドグリカン / リボソームペプチド / ポリグルタミン酸 / 異性化 / 天然有機化合物 / 放線菌 / ラッソペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
天然ペプチド化合物に構造・機能多様性をもたらす新規異性化酵素(1~4)の反応機構解明と2つのシュードペプチド生合成機構(5,6)の解明を行う。(1)ペプチドグリカン新規生合成経路の中間体(UDP-MurNAc-L-Ala-L-Glu)の末端L-Gluを異性化する酵素、(2)リボソームペプチドMS-271のC末端Trpを異性化する酵素、(3)リボソームペプチドsalinipeptinの複数のL体アミノ酸を異性化する酵素、(4)ポリグルタミン酸にD体アミノ酸を導入する異性化酵素、(5)lactacystinが持つ二置換アミノ酸構造の形成機構、(6)negamycinが持つヒドラジド構造の形成機構。
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研究実績の概要 |
天然ペプチド化合物に構造・機能多様性をもたらす以下の新規酵素と生合成機構に着目し解析を行った ①MurL;一部細菌は、ペプチドグリカン生合成で、MurLが中間体基質UDP-MurNAc-L-Ala-L-Gluの末端L-Gluを異性化する。MurL、ATPアナログ、基質との共結晶が得られ、解析の結果、基質のC末端Gluのカルボキシ基が酵素のCys側鎖とチオエステル結合していること、また塩基触媒として働くHis残基も推定できた。現在、これらアミノ酸残基のAla置換による検証を行っている。②GrmL;grisemycinはリボソームで生合成されるが複数のDアミノ酸残基を含む。grmA(プレカーサーペプチド)と機能未知の grmHとgrmLをS. lividansで発現させた結果、GrmHとGrmLが複合体を形成し、脱水(硫)と異性化反応を触媒することが分かった。③PgsA;昨年度、ポリグルタミン酸のD-Glu含有比率は生合成酵素複合体のなかのPgsAが決定することを実証した。D-Glu含有比率100%と60%のPGAを生産するPgsA酵素の推定活性残基周辺で異なるアミノ酸残基を相互置換した結果、1アミノ酸置換でD-Glu比率が10%以上変化した。④Negamycin;ヒドラジド(N-N-C=O)構造の生成機構を明らかにすることを目的に、昨年度、N-N結合形成には亜硝酸生成酵素が関与することを明らかにした。今回、negamycinの部分骨格を成すβリジンの生合成遺伝子を遺伝子破壊により同定した。⑤Lactacystin;異種宿主発現により計8遺伝子(A~H)からなるラクタシスチンの生合成遺伝子クラスターを同定した。また、組換え酵素を用いた機能解析も行い、OrfFが10N-formyl THFを用いてCoAをformyl化する新規酵素であることであることなどを明らかにした。⑥Acivicin;遺伝子破壊実験により8遺伝子からなるアシビシン生合成遺伝子クラスターを同定した。さらに破壊株を用いたco-synthesisにより4つの遺伝子について生合成反応の順番を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した4つのペプチド異性化酵素に関しては、リボソームペプチドMS-271のC末TrpをD体に異性化するエピメリ化酵素(MslH)の反応機構について完全解明した。また、ポリグルタミン酸に含まれるD体Gluは、伸長鎖に連結されたL-GluをPgsAがエピメリ化すること、さらに、PgsAのD体Glu含有率を制御する領域を同定し、本領域のアミノ酸置換によりD体Glu比率を上げることができることを示した。Grisemycinに関しては中国のグループに先を越されたものの、アミノ酸側鎖の脱水(硫)とD体アミノ酸へのエピメリ化は新規酵素GrmHとGrmLの複合体により触媒されることを明らかにした。また、ペプチドグリカンの生合成関与するMurLに関しては、結晶構造解析により反応機構解明のための重要な手掛かりが得られるなど順調に推移している。また、シュードペプチド生合成では、4つの化合物のうち、belactosinのアミノ酸側鎖のシクロプロパン構造の形成機構を完全解明した。残る3つ、Lactacystin、Negamycin、Acivicinについても全て生合成遺伝子を同定した。特にlactacystinに関しては、組換え酵素を用いた詳細な解析で生合成の概要を解明できており、順調に推移している。さらに、リボソームペプチドであるRES-701のC末Trpの水酸化に関与する新規ヘム酵素も見出しており、更なる成果も見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
特に大きな問題はないことから、当初の計画に基づき、①ペプチドグリカンの生合成に関与するエピメラーゼ(MurL)、④Negamycinのヒドラジド骨格形成機構、⑤Lactacystinのα,α-二置換アミノ酸骨格(omuralide骨格)形成機構、⑥Acivicinのイソオキサゾリン骨格の形成機構、最近見出したRES-701のC末Trp水酸化ヘム酵素の反応機構を解明する。
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