研究課題/領域番号 |
22H04979
|
研究種目 |
基盤研究(S)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分F
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
渡辺 賢二 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50360938)
|
研究分担者 |
武藤 倫弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30392335)
國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ヘルス・メディカル微生物研究センター, センター長 (80376615)
椙村 春彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00196742)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
184,990千円 (直接経費: 142,300千円、間接経費: 42,690千円)
2024年度: 35,880千円 (直接経費: 27,600千円、間接経費: 8,280千円)
2023年度: 36,400千円 (直接経費: 28,000千円、間接経費: 8,400千円)
2022年度: 40,950千円 (直接経費: 31,500千円、間接経費: 9,450千円)
|
キーワード | コリバクチン / 大腸がん / 遺伝毒性物質 / 発がんメカニズム / モノクローナル抗体 / 大腸菌 / 生合成 / 天然物 / がん化学予防法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、大腸がん予防法の確立に始まり、発症メカニズムの解明、大腸がんの治療法といった様々な分野に波及効果を及ぼすことが期待でき、社会に対して直接的に大きなインパクトを示すと確信する。コリバクチン研究で得られる知見は、腸内細菌が持つ毒素生合成遺伝子群の活性化といったヒト細胞と共生菌との間で働くシグナルおよびその伝達機構の解明にも役立ち、天然物(環境因子)がシグナル分子として介する疾患の誘因および悪化のメカニズムの解明へと繋がり、さらに予防へと貢献できるはずである。
|
研究実績の概要 |
コリバクチン産生菌感染の高感度検出法の確立のため、コリバクチン産生菌に特異的なモノクローナル抗体の取得を目指した。まずは我々がヒトの大腸がん組織検体より分離、培養に成功し、既報のコリバクチン産生菌と比較して約30倍もの高産生量を示したコリバクチン産生菌株(#50と表記)に対するモノクローナル抗体を作製した。得られた抗体を用いてスクリーニングを行い、#50に特異的で、高い反応性を持つ抗体を選別した。さらに、これらモノクローナル抗体のコリバクチン産生菌への特異性を様々な大腸菌株に適応することにより検証した。また、得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ、CDR配列を決定した。エピトープ決定のためエピトープと推定される繊毛タンパク質の過剰発現株のウエスタンブロッティング、エピトープマッピングを行った。並行して繊毛タンパク質とコリバクチン産生性との関係などさらなる研究につながる#50の繊毛タンパク質のノックアウト株の作製を行った。 #50を免疫したBALB/cマウスより脾臓および膝下リンパ節を採取し、P3U1細胞と融合させ、抗体産生ハイブリドーマを得た。1週間培養後の上清(それぞれ1920well)の#50に対する抗体価を測定した結果、OD490値が0.09以上の値を示す陽性が膝下リンパ節では6well、脾臓では96wellであった。これらを限界希釈し、モノクローン化した753株に対して#50の抗体価を測定したところ、641株の陽性細胞を得た。これら陽性細胞に対して、#50、#Aに対する抗体価を測定した。コリバクチン陰性大腸菌株である#AのOD490値が0.1以上のものを除外し、コリバクチン陽性大腸菌#50とコリバクチン陰性大腸菌#AのOD490値の差(ΔABS)を算出し、図1にまとめた。限界希釈後1週間培養した細胞上清において、#50と#AのΔABS(>0.50)が15株得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コリバクチン産生菌に対するモノクローナル抗体の獲得によるコリバクチン産生菌の画期的検出方法の構築、加えて当初研究計画通りコリバクチン産生菌の増殖抑制及びコリバクチン産生阻害因子を探索し、コリバクチン産生大腸菌#50は乳酸菌との共培養により増殖が抑制されることが確認された。そこで、コリバクチン産生菌の増殖抑制剤あるいはコリバクチンそのものの生合成阻害剤を見出すため、乳酸菌の2次代謝産物における大腸菌増殖抑制作用を有する物質の分離同定を行ったところ、乳酸菌株P1から抗菌活性物質を単離し、フェニル乳酸と同定した。さらに、フェニル乳酸は大腸菌増殖抑制作用を有することを確認した。さらに、化合物ライブラリーからコリバクチン生合成阻害剤を見出すことにも取り組み、静岡県環境衛生科学研究所が提供する化合物ライブラリー(69,520種類)を対象に大規模なスクリーニングを行った。その結果、化合物CB3313が一番強い阻害活性(66%)を示した。上位3つの阻害性化合物の構造を図3に示した。ClbP阻害活性を有する候補化合物CB3313を同定した。今後、スクリーニングで同定された化合物による阻害のメカニズムを明らかにしていく。
|
今後の研究の推進方策 |
コリバクチンによる体細胞変異シグネチャーの解析においても研究成果が得られている。バクテリア及び培養細胞にコリバクチン産生大腸菌を曝露させ、細胞毒性や遺伝毒性を指標としたコリバクチン暴露条件の設定に関する研究成果では、ヒト大腸腺がんLoVo細胞に対するE. coli-50株の遺伝毒性を小核試験で評価したところ、この株の大腸菌感染(MOI=50, 100)によって小核出現頻度が増加し、齧歯類細胞に対するのと同様に遺伝毒性を示すことが確認された。さらにこの株の生育状況が小核頻度にあたえる影響を調べたところ、対数増殖期初期よりも対数増殖期終期;飽和期初期で遺伝毒性が更に上昇することも明らかとなった。条件設定後にコリバクチンに固有の変異シグネチャー解析を開始に関する研究成果として、E. coli-50株がヒト大腸細胞にも遺伝毒性を示すことが確認された。そこで、LoVo細胞を用いてコリバクチンに固有の変異シグネチャー解析をすることにした。しかしならが小核試験と異なり突然変異の固定には数日間以上の培養が必要である。MOI=50や100で大腸菌を感染させると、LoVo細胞は増殖を停止あるいは細胞死を招くことが分かった。そこで変異シグネチャー解析に適用できる処理条件を探索した。その結果、MOI=10のややマイルドな条件において解析に必要な細胞を準備できることが分かった。このようにして準備した細胞のNGSを用いた変異解析を遂行中である。
|