研究課題/領域番号 |
22H04984
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
秋山 修志 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (50391842)
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研究分担者 |
成田 哲博 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (30360613)
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, デジタルグリーンイノベーションセンター, 教授 (20311128)
古池 美彦 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (70757400)
向山 厚 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (80647446)
近藤 孝男 名古屋大学, 理学研究科, 名誉教授 (10124223)
藤原 悟 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 専門業務員 (10354888)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
191,100千円 (直接経費: 147,000千円、間接経費: 44,100千円)
2024年度: 41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2023年度: 41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2022年度: 23,140千円 (直接経費: 17,800千円、間接経費: 5,340千円)
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キーワード | シアノバクテリア / 概日時計 |
研究開始時の研究の概要 |
シアノバクテリアの概日時計研究は、複雑かつ多様な振動現象から冗長性を削ぎ落として単純化する「複雑多様性の単純化」の流れに沿って進展してきたが、研究の舞台が分子~原子スケールに到達した現段階で、更なる単純化を阻む3つの壁に直面している。単純化指向型アプローチにより、時計タンパク質KaiCの構造、活性、そして進化における複雑多様性を単純化し、概日時計の生理学的性質を裏打ちする機能構造相関を解明する。
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研究実績の概要 |
野生型KaiC、単一リン酸化型KaiC変異体、現生型KaiCホモログ、祖先型KaiCを対象としたクライオ電子顕微鏡による単粒子解析およびX線結晶構造解析に着手した。野生型KaiC、単一リン酸化型KaiC変異体の溶液条件(緩衝液、濃度等)の最適化、グリッド凍結条件の検討により電子顕微鏡像を取得し、新規なKaiC六量体の構造多型を検出した。現生型KaiCホモログ、祖先型KaiCを対象とした広範囲の結晶化剤探索の末、新規な結晶化条件を見出した。 KaiCに結合したヌクレオチドの種類を特定し、それらの量を正確に決定するための手法開発を行った。一連の改良により、各種ヌクレオチド(ADPやATPなど)の識別・検出感度が飛躍的に向上し、各種ヌクレオチドの寿命の温度依存性や、変異導入に伴う寿命変化を定量的に議論できるようになった。 概日時計の同調機能とKaiCのATPase活性との関連を明らかにするため、温度刺激に対するATPase活性リズムの応答を調べた。ATPase活性リズムの高精度測定中に温度を急激に変化させる独自の技術を用いることで、KaiCのATPase活性が温度変化後、位相応答曲線と相関して直ちに変化することを発見した。一方、KaiCのリン酸化状態は温度変化後すぐには変化しないことから、ATPase活性の急激な変化が位相変化を引き起こす可能性を見出した。 蛋白質ダイナミクスのより詳細な特徴づけを可能とする中性子準弾性散乱スペクトルの新しい解析法を検討した。また、今後の構造解析で重水素化KaiCを利用する可能性に鑑み、安定的な蛋白質重水素化法を確立した。これらの手法は今後の測定・解析の基盤となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に計画していた研究計画(1)~(4)について概ね予定どおりの進捗が見られたため。(1)多様性分布解析については、野生型と単一リン酸化型の混合振動子を様々な比率で再構成し、それらの機能を生化学的に解析した。(2)クライオ電子顕微鏡による単粒子観察については、緩衝液や試料濃度の実験条件を最適化した。最適化された条件下でリン酸化状態が異なる試料について観察したところ、これまでに報告例の無い構造多型を見出した。空間分解能についても想定を上回るものであった。(3)KaiCの分子内ヌクレオチドの寿命定量については、計測方法および各種プロトコルを確立した。また、変異体を含む複数種の試料を用いて寿命を評価したところ、当初予期していなかった新たな発見があった。(4)他種現生型KaiCについては、4つある系統集団のうち2つについてリズム生成能の評価を実施し、統計的分析に耐えうる信頼水準90%まで観察例を増やすことができた。祖先型KaiCの表現型を、各々の系統集団が概ね継承していることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究計画(1)~(4)を進める。(1)多様性分布解析については、アリズミック型と単一リン酸化型の混合振動子を様々な比率で再構成し、それらの機能を生化学的に解析する。(2)クライオ電子顕微鏡による単粒子解析については、2022年度に見出した新規構造多型の再現性を確認するとともに、空間分解能の向上、新たな構造多型の探究に取り組む。(3)KaiCの分子内ヌクレオチドの寿命定量については、周期変異体および温度依存型変異体を対象に解析を進める。(4)祖先型KaiCについては、その性質に応じて、X線結晶構造解析もしくはクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を行う。構造情報を機能解析の結果と照らし合わせて、概日時計としての機能や構造を獲得した時期を絞り込む。
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