研究課題/領域番号 |
22H04996
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分I
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
広田 亨 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 部長 (50421368)
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研究分担者 |
伊藤 武彦 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90501106)
サンペトラ オルテア 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50571113)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
192,530千円 (直接経費: 148,100千円、間接経費: 44,430千円)
2024年度: 39,130千円 (直接経費: 30,100千円、間接経費: 9,030千円)
2023年度: 35,880千円 (直接経費: 27,600千円、間接経費: 8,280千円)
2022年度: 45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)
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キーワード | 染色体不安定性 / クロマチン高次構造 / 異数体 / Auroraキナーゼ / がん幹細胞 / 染色体動態 / Aurora Bキナーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
染色体不安定性は、進行がんで典型的にみられる性質で、染色体の数や構造が多様に変化した異数体細胞を作り出す。がん細胞の異数体化は、がんの生物学的悪性度と相関することが知られるが、一方で、実験的な異数体化の誘導は、細胞増殖を強く抑制するために、異数体化ががんの病態にどのように関与するのか不明である。本研究では、染色体不安定性のレベルが可逆的に変化するがん幹細胞を用いて、細胞の増殖性と関連する染色体構造を探索する。特に、染色体不安定性のレベルを操作することによりその可塑性の意義を追求して、異数体化がみられるがんはなぜ悪いのかというがん生物学に残された命題に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本年度は、まず、核型のパターンによってクローン化したがん幹細胞について、染色体不安定性のレベルと増殖性を調べた。得られたクローンの核型を解析したところ、10.5%がもともとのがん幹細胞(Tumor Stem、TS細胞)と同様な核型分布を保ち(Parent-likes)、10.5%が多倍体となり(Hyperploids)、残りの79%が二倍体であった (Diploids)。これら3グループに分けられた各クローンについて、M期の染色体動態と、セントロメアにおけるAurora B機能を解析したところ、TS細胞と同程度に、Parent-likesとHyperploids は染色体分配エラーの頻度が高く、Aurora B 基質のリン酸化レベルが低下していた。このことから、TS細胞のAurora B活性が高くなりうること、二倍体の染色体不安定性が低い細胞が、異数体化する染色体不安定性が高い細胞よりも増殖に有利であることが示唆された。これらの観察は、がん幹細胞の染色体不安定性のレベルが可塑的であることを再確認する結果である。またこれらのクローンについて、低リード数でのDNAシーケンスデータを~5Mb枠で区切るKaryo-seq解析を行い、ゲノムワイドにその量的変化を検討した。そして各クローンで発現している遺伝子をトランスクリプトーム解析によって調べたところ、染色体不安定性レベルの高低を説明しうる変化が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の構想どおり、がん幹細胞の染色体不安定性のレベルが可塑的であることと、その可塑性はAurora B活性の変化によってよく反映されることを再確認する結果が得られた。これをもとに、経時間的な変化を調べるための実験を当初の計画に沿って進めている。
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今後の研究の推進方策 |
がん幹細胞(TS細胞)とそのクローン9系統(Diploids、Parent-likes、Hyperploidsの各3クローン)について、細胞の増殖性と染色体不安定性のレベル、遺伝子発現プロファイルを、 長期間培養して追跡する試験管内での変化と、マウスの脳実質に同所移植して、生体環境での変化を解析する。
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