研究課題/領域番号 |
22H05003
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分K
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 豊 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (90333640)
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研究分担者 |
平野 大輔 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (30790977)
真壁 竜介 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (40469599)
田村 岳史 国立極地研究所, 先端研究推進系, 准教授 (40451413)
溝端 浩平 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80586058)
中野 善之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 技術開発部, 副主任研究員 (20566103)
草原 和弥 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (20707020)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
193,570千円 (直接経費: 148,900千円、間接経費: 44,670千円)
2024年度: 32,630千円 (直接経費: 25,100千円、間接経費: 7,530千円)
2023年度: 34,970千円 (直接経費: 26,900千円、間接経費: 8,070千円)
2022年度: 65,130千円 (直接経費: 50,100千円、間接経費: 15,030千円)
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キーワード | 南大洋 / パラメタリゼーション / 氷床融解 / 物質循環 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、「南極氷床融解」の理解の遅れは気候変動予測のボトルネックとなっている。 このため、以下の項目を実施し、次世代の南大洋海洋観測に対するパラメタリゼーション(経験的関数化)技術の開発と展開を行うことで、南大洋における氷床融解の理解を深め、氷床融解と海洋生態系物質循環の相互作用の包括的な実態解明を目指す。 研究項目(1):南大洋全域に対応可能な炭酸系物質・栄養塩類のパラメタリゼーションの開発 研究項目(2):氷床融解量の新規見積り法(化学海洋学的見積り法)の開発と評価 研究項目(3):南大洋における氷床融解量のマッピング 研究項目(4):南大洋における時空間高解像度な生態系物質循環像構築と変動把握
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研究実績の概要 |
南大洋での厳しい気象・海象条件による観測データの時空間的な乏しさが、同海域の生態系・物質循環の研究に大きな不確かさをもたらしている。これらの問題点を克服するために、本研究は、斬新なパラメタリゼーション(経験的関数化)技術とアイデア、そして観測によって、南大洋の氷床融解を深く理解し、海洋生態系・物質循環との相互作用の包括的な実態解明を世界に先駆け、この解明の扉を開くことを目指すため、2023年度は以下の項目を実施した。
●研究項目(1):線形重回帰法(MLR)とニューラルネットワーク(NN)法のハイブリッド型による炭酸系物質・栄養塩類の南大洋全域に適用できるパラメタリゼーションの開発に成功し、Argo等への適用を実施した。 ●研究項目(2):項目(1)に基づき氷床融解量の新規見積りを進め、リュッツホルム湾における淡水化全量の30%が氷床融解であることを突き止めた。さらに、トッテン氷河沖において、海洋物理観測・係留系観測・衛星観測・数値モデルの統合解析により、外洋域からの暖水と氷床との相互作用のプロセスを明らかにした。 ●研究項目(3):項目(2)で開発したパラメタリゼーションを南大洋全域に適用し、高精度な南大洋の氷床融解量マッピングを実施し、南大洋全体での氷床融解量は268 ± 50ギガトン/年であり、太平洋海盆領域での淡水化が著しいことを明らかにした。 ●研究項目(4):項目(1)で開発したパラメタリゼーションをArgoに適用することで、南大洋の純群集生産量(NCP)と、深層から海洋表層への炭素の再回帰量(Restoration)の詳細な分布を描き出した。さらに、NCPが既に年率0.8% で減少しつつあることも見出している。この結果は学術論文に掲載され、南大洋におけるNCPの詳細な分布とその変動を世界で初めて描き出したもので、今後の南大洋の国際的観測を牽引する成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
●研究項目(1):炭酸系物質と栄養塩類のMLR-NNハイブリッド法によるパラメタリゼーション技術の開発はほぼ終わり、今後の海洋観測データ群によってその精度向上を狙う段階まで到達している。2023年度末現在で既にその一部は学術論文として掲載済あるいは投稿中の段階である。 ●研究項目(2):氷床融解量の新規見積り法に基づき、リュッツホルム湾における淡水化全量の30%が氷床融解であること突き止めた成果が得られており、今後の南大洋の国際的観測を牽引する成果として現在投稿中である。 ●研究項目(3):項目(2)で開発した新規見積り法を適用することで、より高精度な南大洋の氷床融解量マッピングを行い南大洋全体での氷床融解量を定量化するとともに、近年、太平洋海盆領域での淡水化が著しいことが明らかにした。これらの成果は学術論文として投稿中である。 ●研究項目(4):項目(1)のパラメタリゼーションをArgoに適用することで、南大洋の海洋生態系・物質循環像の構築の一環として、純群集生産量(NCP)と再回帰量(Restoration)の詳細な分布を描き出した。この成果は、南大洋におけるNCPの詳細な分布とその変動を世界で初めて描き出したもので、今後の南大洋の国際的観測を牽引する成果である。さらに、本研究で開発したパラメタリゼーションを全球のArgoデータに適用することで、全球海洋における海洋生態系を通した物質循環像を描き出した[。この成果もまた、南大洋を起点とする全海洋の生態系・物質循環像を世界で初めて描き出したもので、今後の南大洋の国際的観測を加速・牽引するものである。
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今後の研究の推進方策 |
●研究項目(1):本研究で開発した炭酸系物質・栄養塩類のパラメタリゼーション技術を応用し、全球海洋にシームレスに適用可能で高精度な炭酸系物質・栄養塩類のパラメタリゼーションの開発・展開を目指す。 ●研究項目(2):化学海洋学的見積り法(氷床総融解量)と衛星データ見積り法(海氷生成量)の差分を用いて、南大洋での氷床の正味の融解量の見積りの高精度な定量的見積りを図り、これらの結果を海洋・氷床モデル結果と比較することで、極域全般に適用可能な化学海洋学的見積り法の展開を目指す。 ●研究項目(3):Argoデータ群を用いた南大洋縁辺海域における時空間的に詳細でリアルタイムな氷床融解量の実態を把握する観測システムの構築を引きつづき行う。 ●研究項目(4):炭酸系物質・栄養塩類の統合データ群を基盤に、南大洋全域にわたり緯度経度1度格子・海底面まで10m毎の氷床融解量・海洋生態系物質循環像の構築ならびにこれらの時系列変動解析を引きつづき行う。この結果を、国立極地研究所が保有する同海域の生態系時系列データ群(分画クロロフィル・植物動物プランクトン現存量)と比較し、南大洋の淡水化変動と海洋生態系変動の先駆け的研究を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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