研究実績の概要 |
本研究は、酸化物で構成するNaイオン全固体電池の開発を推進している。これまでにレーザーを用いた局所加熱によって、リン酸鉄ナトリウム正極活物質へのレーザー局所加熱による構造変化の評価および活物質と固体電解質の接合界面を制御する研究を通して、従来の高温条件で加圧するプロセスに対し、無加圧で瞬間的に一体化する新規酸化物全固体電池作製プロセスを提案・実証した。NaFePO4という網目形成剤となるリン酸塩が非常に少ない組成の材料をガラス化し、固体電解質と一体化できたことから、網目形成剤を含まない層状酸化物NaMO2(M:遷移金属)のレーザー局所加熱による溶融急冷および固体電解質との一体化も期待される。そこで、本年度は、正極活物質にβ-NaFeO2(理論容量:242mAh/g)を選択し、レーザー照射により局所加熱した際の構造変化の評価および固体電解質との一体化を行った。 レーザーにはファイバーレーザー(λ=1064 nm)を用いた。β-NaFeO2に対して2次元的にレーザー照射(出力30 W, レーザー径50 μm, 走査速度500 mms-1)した。レーザー照射後のβ-NaFeO2の構造変化をXRD 、SEM、TG-DTA,EBSD,交流インピーダンス法により評価した。その結果、レーザー照射によりβ-NaFeO2を溶融急冷すると、粒界が減少して緻密化され、ナトリウムイオン伝導性が向上することがわかった。レーザー照射したβ-NaFeO2は結晶性が低くなり一部非晶質化している可能性が高く、再熱処理により異なる結晶を選択的に得られることを明らかとした。また、固体電解質セラミックス基板上のβ-NaFeO2をレーザー照射で溶融固化することで固体電解質に無加圧で接合でき、緻密な界面を得ることができた。この結果は、今後の全固体電池の研究において活物質の材料選択の幅を広げ、焼成では困難な界面抵抗の低減が期待できる。
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