研究実績の概要 |
2022年度は、研究計画に基づき、2022年7月にルーマニア国ブラショブ市において1か月間の民族誌的調査を行った。内容は、2019年~2021年の期間で行った長期調査のフォローアップおよび、養子縁組家庭への新規インタビューであり、その両方を行うことができた。調査における成果の第一報は、すでに Asada, N., 2022. “Doing Household”: An Anthropological Study on Adoptive Family in Romania. NEOS, 14(2), Article 2.として論文投稿を行っている。 研究計画と照らし合わせて記すならば、ルーマニアという社会におきて、孤児が大人たちと家族関係を結んでいくにあたり(里親家庭、養子縁組家庭)、家庭(現地語でgospodarie)における協働が、彼らの関係性に「本当の」家族関係とするうえで重要な働きをしており、その中で、子どもたちが求められる役割、仕事をこなすことの必要性が判明した。 これは、いわゆる「子どもの権利条約」において定義される4つの子どもの権利(生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利)において、子どもは家庭(ないしそれに準ずる)環境を与えられ、そこで生き、育ち、守られたうえで、市民社会に参加していくというモデルに対し、そもそも与えられるべき「家庭」においても参加することが、子どものより健全な育成に必要不可欠であることを示しており、西洋近代が自明視する守られる存在としての子ども像に新しい観点を提供することができるものと考えられる。
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