研究課題/領域番号 |
22K00001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 康二 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10292484)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ラッド=フランクリン / アリストテレス論理学 |
研究開始時の研究の概要 |
クリスティーン・ラッド=フランクリン(1847-1930)は男性中心と考えられてきた現代の哲学・論理学の歴史の中で、様々な女性差別と戦いながら、画期的な業績を残したアメリカ最大の論理哲学者の一人である。本研究は、アリストテレス論理学から現代論理学への移行期に活躍したラッド=フランクリンの論理思想を解明し、その再評価を行う。また、彼女の思想の中に現在では見失われてしまったアイディアを見い出し、それをより発展させることを通して、論理についての今とは異なる新しい見方を提供することを目指す。
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研究実績の概要 |
クリスティーン・ラッド=フランクリンの論理思想を、アリストテレス論理学を完成させた論理思想という点に焦点を当てて研究し、以下の成果を得た。 (1)アリストテレス論理学は19世紀になってオーガスタス・ディ・モーガンとジョージ・ブールらによって新しい研究段階に入ったのだが、ラッド=フランクリンがそれをどのように継承し、発展させたのかを明らかにした。特に、いわゆる無限判断を三段論法理論の中にどのように取り込んだのかを明らかにした。 (2)ラッド=フランクリンはすべての妥当な三段論法を一個の図式に還元したのだが、その詳細を解明した。また、スーザン・ラシノフによるこの還元が正しいことの証明を改良して、ヴェン図を用いたより直観的にわかりやすい証明を与えた。 (3)アリストテレスとその後継者たちも妥当な三段論法を「バーバラ」と呼ばれる一個の三段論法に還元させることを試みていたのだが、この「還元」とラッド=フランクリンの「還元」の違いがどこにあるのかを明らかにした。ラッド=フランクリンが行ったことは、一つの図式を母体として、そこからすべての妥当なシロジズムを自動的機械的に発出させることである。これに対して、アリストテレスの「還元」では、バーバラ、および、他のいくつかの推論規則を用いて、バーバラ以外のシロジズムが妥当であることを論理的に証明しているのである。 (4)ラッド=フランクリンが還元の際に使用した推論は「アンチロジズム」と呼ばれる特殊な形態の推論であるが、彼女はこれが人間の発達過程において早い段階で生じることを経験的に観察していた。この観察に示唆を得て、一般に論理的でないと言われる人々も、三段論法のような論理学で標準とされる推論が苦手なだけで、実は論理的な推論を実践していると言えるのではないかという指摘を行った。これは、今後の発展的な研究につながる検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で5つの研究段階を設定し、各々の段階を一年かけて達成させるとしていたが、今年度は、その内の一つである「ラッド=フランクリンがいかなる意味でアリストテレス論理学を完成させたと言えるのかを検討する」という段階を完成させることができた。よって、順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画で5つの研究段階を設定し、その内の一つを今年度において達成できたので、予定通り、残りの4つの研究に取り組む。すなわち、(1)ラッド=フランクリンがどのようにしてウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の真理関数論を先取りしていたのかの解明、(2)19世紀のオーガスタス・ディ・モーガンとジョージ・ブールらによるアリストテレス論理学の新たの展開の検討、(3)ラッド=フランクリンとラッセルの論理学の比較検討、(4)ラッド=フランクリンとプラグマティズムの知識論の比較検討、の順に研究を進めていく。
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