研究課題/領域番号 |
22K00002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
檜垣 良成 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10289283)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | カント / 良心 / 真とみなすこと / ドイツ啓蒙主義哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
「信仰」において主体性が重要であることは言うまでもないが、カントにおいては「知ること」、そして「善く生きること」においても自己との関係が重要であることを、彼が独自に展開した「真とみなすこと」の概念に即して明確にすることによって、カント哲学の全体像をより首尾一貫したものとして理解する。
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研究実績の概要 |
1. カントは『弁神論におけるあらゆる哲学的試みの失敗に関して』(1791年)および『道徳の形而上学』(1797年)において「誤る良心などというものは不条理物である」という同じ言葉を残している。マルティン・スティッカーは、良心の本来的機能が、不正である危険を冒して何もなさない慎重さの吟味にあると考え、良心は誤りうるものであり、両テクストには不整合もあると主張する。これに対して、両テクストの間に本質的な思想の相違はなく、良心に関する一連のテクストにでてくる「良心」概念は、一番核をなす「正しいと私が実際に信じているという意識」から「裁く理性」までグラデーションをなしているという解釈を提示した。「誤りえない」のは真偽がない故であるから、厳密に言えば、この表現は不適切であるが、カントは、罪のあるなしは、判定の真偽ではなく、良心に従って行為したと意識しているかどうかにあるという点を重視したいので、「良心が誤る」とは言わないのである。こうした点を明らかにして、日本カント協会第47回学会で発表した。
2. カントが1770年代に開講した「一般実践哲学と倫理学」講義のテクストを再検討した。既に小西国夫、永野ミツ子両氏の翻訳が『カントの倫理学講義』のタイトルで1968年に三修社より出版されているが、これはパウル・メンツァーが編集したEine Vorlesung Kants ueber Ethik(1924)に基づくものである。その後、発見されたケーラーのノートに基づくヴェルナー・シュターク編のVorlesung zur Moralphilosophie(2004)をも参照して、今回各テクストを徹底的に読み直し、当時のカントの講義内容を正確に理解することを試み、その成果を訳注として活字化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体調の問題から若干、研究の進展は緩やかであった。 それでも、カントの「真とみなすこと」という視点が生かされた「良心」概念について、一見不整合に見えるテクストを精査し、それらの整合的解釈を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、主にマルティン・スティッカーの問題提起に答える形で考察を進めたが、今後、この考察によって明らかになった各論点をさらに精査する。このことによって、カントが「真とみなすこと」という視点を重視した意味がいっそう明らかになるはずである。
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