研究課題/領域番号 |
22K00005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
仙波 由加里 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 研究協力員 (00565872)
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研究分担者 |
久慈 直昭 東京医科大学, 医学部, 客員教授 (80169987)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 法整備 / 民法特例法 / 特定生殖補助医療法案 / 出自を知る権利 / 提供型生殖医療 / ボランタリーレジストリー / VARTA / 情報管理 / 提供者の匿名性 / 配偶子提供 / ドナー / レシピエント / 出生者 |
研究開始時の研究の概要 |
提供精子や提供卵子を使った生殖医療(提供型生殖医療)で非匿名のドナー情報を出生者に開示することになった場合に不可欠な、ドナーやレシピエント、出生者の情報の登録・管理機関の在り方や、情報開示において重要な点や配慮すべき点などを探り、それを提示することが本研究の目的である。研究方法は諸外国で提供型生殖医療での出生者にドナー情報を開示している地域を対象に、情報登録や管理体制の在り方、各機関の特徴や開示の際に問題となった事例等を文献調査や各地の研究者や関係者からの情報提供、現地調査を通して収集し分析する。本研究を通して、日本型の情報管理機関の在り方を検討する際の参考資料提供が可能となる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、特に本研究における学術的「問い」の中でも、日本におけるドナー・レシピエント・出生者の情報管理に関する法整備の動きに焦点をあてて研究をすすめた。 2020年12月に「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(以下、民法特例法と記す)が成立し、その法律の附則の第三条三項には、おおむね二年を目処に、他人の精子又は卵子を用いた生殖補助医療の提供を受けた者、当該生殖補助医療に用いられた精子又は卵子の提供者及び当該生殖補助医療により生まれた子に関する情報の保存及び管理、開示等に関する制度の在り方について法制上の措置等が示されるとあった。超党派議員連盟が2021年から生殖補助医療法案をまとめるべく検討をはじめたが、2022年度になっても、法案が提出されることはなかった。そして2023年11月にようやく議員連盟から「特定生殖補助医療に関する法律案たたき台」が公表されたが、生まれた人に開示されるドナー情報の内容はかなり限定的であり、これで生まれた人たちの出自を知る権利を認めたといえるのかという声が多く聞かれた。 そこで2023年度は、民法特例法成立からこのたたき台が出されるまでの動きや、日本産科婦人科学会や日本弁護士連合会をはじめとするさまざまな組織からの意見や提言等を収集・整理した。また日本の「特定生殖補助医療に関する法律案たたき台」に対する海外の意見等も収集し、これらの情報の分析をすすめた。 海外については、Donor Conception Australiaの代表Aimee Schackletonとオンラインで連絡を取り、オーストラリアの各州の法整備の動きについての情報提供を受けた。またベルギーとオランダについてはAstrid Indekeu(University of Leuven)の協力を得て調査をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度はオーストラリアでの現地調査を予定していたが、日本の円安や現地の物価高の影響もあり、現地調査を行った場合に研究費に占める調査旅費がかなりの負担になるため現地調査を取りやめた。そこで、オーストラリア調査は、オンラインやメール等を使った調査に切り替えた。調査形態は変更したが、研究計画で予定していた通り、Dr.Damian Adams(Flinders University)やDr.Fiona Kelly (La Trobe University)の協力を得て、調査のための関係者を紹介してもらい、オンラインと電子メールにて情報収集を行った。 ベルギーやオランダについては、主にDr. Astrid Indekeu(University of Leuven)に様々な資料とともに、情報提供してもらい調査を進めている。2024年7月、オランダのアムステルダムで、International Infertility Counselling Organization(IICO)主催のシンポジウム、及び、ESHRE(欧州生殖学会)の年次大会が開催されるため、その参加も兼ねてオランダ調査を予定していたが、円安や夏のホリデーシーズン及び学会シーズンで宿泊費も航空運賃もかなり高いために、海外出張を断念し、オンラインでの調査に切り替えることにした。こうした状況の中、Dr. Indekeuの協力は大きな助けとなっている 海外調査が難しかった分、国内における法整備をめぐる動きについての調査に力を入れた。法案作成に携わっている議員に話を聞いたり、当事者団体のメンバーと話をしたり、日本弁護士連合会や日本産科婦人科学会が主催した日本の法整備をテーマにしたシンポジウムにも参加した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、オンラインでのアメリカ調査を予定している。アメリカの第三者のかかわる生殖医療に関する問題の研究において第一人者であるDr. Naomi Cahn(University of Virginia School of Law)にはすでに連絡をとって、調査のための関係者を紹介してもらっている。紹介されたアメリカの関係者には、アメリカ各州での法的な動きについて情報提供を受ける予定である。またアメリカで現在注目されている、一人の精子ドナーから多数の子どもが生まれている問題や、ドナーの情報を偽って精子等を提供する生殖詐欺(Fertility Fraud)についての調査も行う予定である。 そして、2024年度は本科研事業の最終年度でもあるため、学会等での報告や論文の投稿に力を入れ、研究分担者とともに、研究の分析とまとめをすすめる予定である。また、2024年度には、「特定生殖補助医療に関する法律」が国会に提出されると言われている。日本の法制化の動向も注視しながら、日本の法律の評価等も研究の中で行っていく予定である。
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