研究課題/領域番号 |
22K00010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
瀬口 昌久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40262943)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ウィトルウィウス / 建築書 / 軍事技術 / 兵器 / 技術者倫理 / 軍事技術者 / 弩砲 / ローマ軍 / リベラルアーツ / 建築倫理 / 工学倫理 / キケロ / 義務について / 高潔 / 強・用・美 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、建築倫理が他の分野の技術者倫理と異なる特質をもつかという問いを念頭におき、建築理論の古典であるウィトルウィウスの『建築書』を倫理の観点から捉え直すことで、建築倫理の基礎を再検討し、より堅固な建築の倫理的基盤を見出す試みである。ウィトルウィウスの建築論のなかで哲学・倫理学が果たしている役割を検討し、ストア派の倫理学と古代原子論や自然哲学がどのような影響を与えているかを解明する。次に、彼の「強・用・美」の建築の三原則が、古代から近世に至る主たる思想家や建築家によっていかに受容されたかを跡づける。そして、三原則と技術者倫理を比較検討し、『建築書』が今日の建築倫理にもつ意義を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
ウィトルウィウスは,古代ローマの建築家としてだけではなく,軍事技術者とみなされている.彼の『建築書』には,彼がローマ軍のため弩砲などの兵器の供給や修理をしたこと,および兵器の解説が記されている.『建築書』には,建築家や技術者の教育や徳の重要性が説かれているが,もしもそれが軍事技術者の理想だということになるのなら,同書が今日の技術者倫理教育にとってもちうる意義にも少なからぬ影響を与えると考えられる.そのため2023年度は,ウィトルウィウスにとって,軍事技術は技術全体の中でどのような位置づけが与えられていたのかを中心に考察した. まず『建築書』における軍事技術に関わる記述から,ウィトルウィウスにとって建築や工学技術の中で占める軍事技術の比重と位置づけを調査した.ウィトルウィウスは,『建築書』において,平和で恐怖のない時代に,市民の福利と喜びのために用いる技術と,危機に対して防御し,安全のために発明された技術と明確に区別したうえで,前者について詳しい説明を展開し,後者については巻末で必要最小限の説明(著作全体の6%の分量)にとどめている.軍事技術の解説は,『建築書』で建築のすべての部門を説明するためには,取り入れざるを得ないものであり,その意味において不可欠であった.しかしながら,その軍事技術の記述において,建築家は防御戦のための機械兵器を設計・製造するよりも,市民の防御のためにこそ知恵を働かせるべきものとして描いている.そのために選ばれた事例は,きわめて選択的であり,独自のものである.防衛や自衛のための軍事兵器の開発や製造を推奨せず,防衛兵器の技術的説明を省略していることは,軍事技術についてのウィトルウィウスの考えをきわだって特徴づける.軍事技術についての記述を最小限に切り詰めていることの中に,ウィトルウィウスの軍事技術への評価と彼が重視する技術本来の目的を見出すことができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
技術者倫理の観点から,ウィトルウィウスの軍事技術に対する評価について調査し,研究結果を論文にまとめることができた.ただ,当初の研究計画では予想されていなかった軍事技術についての考察が必要となったために,全体としては若干の遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は自然哲学との関連について考察をすすめ、ルクレティウスやエピクロス派の哲学が、ウィトルウィウスの『建築論』にどのような影響を与えているかに焦点をあてて調査と分析を進めるとともに、研究全体の包括的なとりまとめを行う。
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