研究課題/領域番号 |
22K00011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 教授 (20314073)
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研究分担者 |
大西 琢朗 京都大学, 文学研究科, 特定准教授 (50773529)
護山 真也 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60467199)
三谷 尚澄 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60549377)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | できなさ / ヴァルネラビリティ / コミュニティ / 道元 / Self-as-We / バルネラビリティ / 融通念仏 / 他力思想 / 共同体の思想 |
研究開始時の研究の概要 |
現代のバルネラビリティ(傷つきやすさ・可傷性)思潮と融通念仏思想を含む大乗仏教の「他力」思想を相互参照することで、「できること」ではなく「できなさ」を、個人としての「わたし」の尊厳・かけがえのなさのコアとして捉える人間観を再構築するとともに、そのような「できなさ」を抱えた「わたし」の共同体としての「われわれ」の意義をも再確認することを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は主に(1)「できなさ」を基軸に据えたコミュニティの哲学、(2)身体の「ヴァルネラビリティ(可傷性/脆弱性)」を踏まえた道元の座禅観の再構築、(3)現代の哲学的自己論を踏まえた「できなさ」「ヴァルネラビリティ」についての哲学的検討に取り組んだ。
(1) 研究代表者・出口と海外研究協力者・犬飼由美子が遠隔 (犬飼が来日時は対面) で定期的に研究会・ミーティングを重ね、分担者・三谷も京都滞在時にそこに加わり、主に仏教哲学の観点から、従来の「できること」を前提としたコミュニティではなく、むしろ「できなさ」を基軸に据えたコミュニティの可能性を検討し、韓国で開催された国際学会XIXth Congress of the IABS (オンライン参加)において口頭発表を行った。 (2) 出口、三谷および分担者・護山を中心に、道元思想を「できなさ」の観点から再解釈する試みに取り組んだ。遠隔での研究会を継続しつつ、2022年6月の比較思想学会シンポジウムで発表を行い、発表内容は同学会誌に論文として発表した。同誌の出口論文は中国語にも翻訳された。9月には出口がスミスカレッジを訪問し、同大学で発表するとともに海外研究協力者Jay Garfieldと議論を行った。12月には、道元についての国際ワークショップDogen on WE, I, Self & Other Enigmasを開催した。 (3) 上記以外にも、より広い現代哲学的な見地から「できなさ」「ヴァルネラビリティ」をベースとした自己論に取り組んだ。タイ・マヒドン大学での国際学会Wisdom of Asia 2022での口頭発表(オンライン参加)のほか、浅草寺での仏教文化講座や小田急のワークショップなど学界外での講演も行った。2023年2, 3月には、京都・パリで相次いで国際ワークショップを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は依然としてコロナ禍による一定の活動制限は存在したものの、遠隔・オンラインでの学会参加や研究ミーティングと、対面での活動を組み合わせて、効率的に研究を進めることができた。年度後半からは制限も一層緩和され、海外渡航や招聘も可能となり、より活発な国際共同研究に取り組めるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はまず、2022年度に行った研究を継続し、さらなる成果発表に取り組む。具体的には、上記(1)における「できなさ」を基軸とするコミュニティの哲学について寄稿を募り、国際誌の特集号として編集・出版を目指す。また、(2)における道元研究についても、2022年度の出版成果を拡張し、英語論文として国際誌に投稿、掲載を目指す。 次に、「できなさ」研究の新たな展開として、「障害」についての研究を行う。例えば出口はすでに、浜松市の知的障害を中心とする障害者サポートNPO「クリエイティブサポートレッツ」を訪問し、当事者研究・フィールドワークを含む今後の研究交流についての打ち合わせを行っている。このような研究交流を通じて、「できなさ」の積極的意義を明らかにし、「できなさ」を基軸とするコミュニティの提案につなげたい。
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