研究課題/領域番号 |
22K00016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 北海商科大学 |
研究代表者 |
見附 陽介 北海商科大学, 商学部, 准教授 (10584360)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 脱中心化 / 多元性 / 合理性批判 / 環境倫理 / フランクフルト学派 / 合理性 / モダニズム / ポストモダニズム / 多様性 / 倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究のテーマは、近代以降の一元的社会の問題を克服する“多元的合理性”の原理の解明にある。 合理性は、理性に沿うものの特性として、支離滅裂にならず首尾一貫性を持つと考えられ、それゆえに近代は統一された一元的秩序に合理性の実現形態を求めた。だが、20世紀はまさにこの一元的秩序の限界が明らかになった時代であった。他方で、これを批判し一元的秩序に還元されない秩序の探究に取り組む諸理論は、そこに対置されるべき“別種の”合理性について広く共有される原理上の理解を提起するには至っていない。本研究は、従来の諸理論の成果の比較検討を通じて、この“別種の”多元的合理性の原理の解明を目指すものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、近代社会の様々な問題の原因とされる近代合理性に対置されるべき“別種の”合理性を、近代合理性を批判する様々な理論の成果を比較し総合する観点から“多元的合理性”として提起することを目指す。 当該年度の研究においては、一つにはいわゆるフランクフルト学派による近代合理性批判を多元性という観点に重点をおいて捉え直す再確認作業を行なった。近代合理性がもたらす同一性と抑圧の問題を描き出したホルクハイマーとアドルノの著作『啓蒙の弁証法』のうちとくに第6章に基づき、その断章形式が持つ同一性批判と多元的構成への志向を、そこで論じられる社会批判の内容とともに検討した。 もう一つの取り組みとして、環境思想における二つの理論的傾向の比較を行い、別種の合理性の実践的可能性への見通しを探求した。具体的には、環境倫理学および環境に関する社会哲学の成果を、脱中心化された統合という多元性の原理に基づくポストモダニズムの思想の観点から捉え直す作業を行なった。 環境倫理および環境に関する社会哲学においては、しばしば環境保護を実践するための世界政府の必要が論じられる。これは、すなわち地球生態系を破壊しない範囲に人間の社会経済活動を規制するための地球規模での一元的な統治・管理体制の必要性を論じる議論であるが、当該年度の研究では、これに対置されうる多元的取り組みの可能性を、近年の環境経済学の議論を参照しつつ、市場を通じた合理的秩序の形成のうちに探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、近代合理性批判を展開する理論に関して検討を進めるとともに、そこに対置されるべき多元的秩序の原理に関する考察を進めることができた。またこれらの成果の出版を行うこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進計画として、次年度においても引き続き、近代合理性における問題の原理的解明と、他方の多元的合理性を実現する原理に関わると思われる諸理論の成果の探索を行う。 前者の作業においては、題材として超高齢社会の課題あるいは近代社会と障害者排除の課題などに重点をおいて、合理性がもたらす抑圧と排除の仕組みをより詳細に解明していく予定である。 後者の作業においては、市場メカニズムと合理性との関連に関する原理を、おもに経済学の理論的成果に依拠しつつさらに究明していくことになる。
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