研究課題/領域番号 |
22K00019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
稲村 一隆 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (40726965)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | アリストテレス / 倫理 / 方法 / 分類 / フェミニズム / 機能主義 / 分業 / 政治的動物 / 技術 / 農業 / 気概 / 友愛 / 互恵性 / 自然主義 / 財産権 / 生存権 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的はアリストテレスの生物学の視点を社会規範の説明に利用する際の意義と問題点について検討することである。アリストテレスは生物体がその生命と種を維持していく営みを自然とみなす見解から、人間が財を所有し、使用し、家族と社会を形成する営みを説明している。この視点が生存権や財産権や善き統治に関する考え方を形成すると同時に、女性、子ども、他の人種を支配する正当化の論拠を与え、正戦の概念を形成してきた。社会規範を進化生物学に即して理解するタイプの自然主義研究が盛んになっているが、本研究では人間を社会的政治的動物として捉えて家族や社会のあり方を説明する試みの意義と問題点について検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的はアリストテレスの生物学の視点を社会規範の説明に利用する際の意義と問題点について検討することである。本年度は主に以下の二つの作業を行なった。
第一に、アリストテレスがプラトンの分割の技法を倫理学の方法論でどのように利用しているのかを考察した。プラトンの分割の技法は、生物種の分類の技法との関連が推測されてきたが、アリストテレスはプラトンの技法を批判している箇所もあり、それをどのように受容しているのかは謎となってきた。本研究はアリストテレスの『エウデモス倫理学』の一節に着目し、分割の技法は多様な種類の分類というよりも、一つの概念の明晰化のために利用していることを明らかにした。これにより、倫理の内容の面だけでなく、分析の手法の面においても、アリストテレスの倫理学は生物学の議論から一定の影響を受けていることが判明した。この点については研究論文がCambridge Classical Journalに掲載された。
第二に、アリストテレスの生物的な見解はフェミニズムから批判されているので、その点の妥当性を検証した。スーザン・オーキンらのフェミニストは、アリストテレスが男女の分業を擁護し、女性を家父長的な社会の道具として理解していると批判してきた。従来のアリストテレス研究の世界では、こうした保守的な見解は古代ギリシアの社会を反映したものにすぎず、アリストテレスの哲学とは関係がないとされてきた。これに対し本研究は、アリストテレスが文明の発展の基礎として社会分業を擁護しており、また生物的な特徴も踏まえて倫理的要求を定めているため、保守的な倫理観が提示されていることを明らかにした。これにより、フェミニズムの観点からでもいくぶんかはアリストテレスを理解できるように背景を明らかにした。この点は2024年の政治思想学会で発表することになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づいて、英語論文を一つ公表し、国際的な学会報告も一つ行い、次年度に向けて研究成果の公表に努めているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画に基づいて作業を進める。論文の執筆と学会報告を行うが、本研究の最終目標である単著の本の出版を常に意識して研究を進める。研究成果がすぐに公表されないものであっても粘り強く地味な作業に取り組む所存である。
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