研究課題/領域番号 |
22K00026
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荻原 理 東北大学, 文学研究科, 教授 (00344630)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 西洋古代 / 思い違い / 欺き / 古代 |
研究開始時の研究の概要 |
人は思い違いをする。四角い塔を見て円いと思ったり、些細なことを大事だと思ったり。ひとに思い違いをさせることが欺きだ。プラトンら古代哲学者は、思い違いや欺きについて様々の豊かな考察を展開した。例えば、思い違い・欺きのメカニズム、可能性の条件、倫理的・存在論的意味、また、どうすれば欺かれずにすむか、思い違いから抜け出せるかを考察した。 思い違い・欺きをめぐる古代哲学者の議論の内実を解明し、その意義を明らかにすることが本研究の課題である。 その作業は、プラトン哲学の全体にある重要な光を投げかけ、プラトンとアリストテレスのある対比点を浮き彫りにし、ヘレニズム諸派の興味深い側面を特徴づけるだろう。
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研究実績の概要 |
国際プラトン学会大会(2022年8月)発表からの選抜論文集の掲載を目指し、'The Sophist’s “Suspicion and Fear”: Plato’s SOPHIST 267e8-268a9'(ソフィストの欺きの本性・意味をめぐるプラトン『ソフィスト』の論を解明)を2023年1月に投稿したが、不採択。同論文を改訂しRevue de philosophie ancienneに投稿した。査読中。 2023年10月、カリフォルニア大学バークレイ校Joint Program of Ancient Philosophyでの講演 'Vague and non-straightforward for reasons: the argument in Plato's PHILEBUS 28c6-31a4'で、世界運行の秩序についての誤解や人間理性の力、をめぐる紛らわしい『ピレボス』の議論を解明。12月、中山大學開催の台灣哲學學會大会中のワークショップPractical Rationality and Reasonでの講演 'McDowell on practical rationality'で、実践的合理性の本性を見誤る一方式のマクダウェルの批判を検討。納富信留氏・田坂さつき氏主催のプラトン『政治家』読書会(オンライン)、西洋古典学会、ギリシャ哲学セミナー、哲学会の大会等に参加。以上の諸機会に研究展開のヒントを得た。 論文 'Omori Shozo’s “Scene-Emotions (fujo) and Emotions”'(感情が心の内にあるとする誤解の大森の批判を考察)を含むNoe, Keiichi and Lam Wing Keung (eds.), Feeling, Rationality and Morality: A Transcultural PerspectiveのBloomsburyでの刊行が決定した。 『ピレボス』の翻訳(光文社古典新訳文庫)はほぼ完成、近日中に入稿の予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界運行に秩序があるかないかについての「思い違い」を取り除くためのプラトン『ピレボス』の紛らわしい議論を解明した'Vague and non-straightforward for reasons: the argument in Plato's PHILEBUS 28c6-31a4'をカリフォルニア大学バークレイ校Joint Program of Ancient Philosophyで発表したのは重要な達成である。 また、実践的合理性をめぐる根強い近代的誤解に対するマクダウェルの古代ギリシャ的視点からの批判を検討した'McDowell on practical rationality'を台灣哲學學會大会中のワークショップで発表したこと、感情が心の内にあるとする誤解に対する、古代哲学に通じる大森の批判を考察した'Omori Shozo’s “Scene-Emotions (fujo) and Emotions”'を含む論文集のBloomsburyからの刊行が決定したことも有意義な成果である。まだ成果と呼べる形は取っていないものの、『ピレボス』の翻訳がほぼ完成し、入稿間近であることも記すに値する。 しかし、ソフィストの欺きの本性と(ソフィスト自身の存在にとっての)意味をめぐるプラトン『ソフィスト』の分析を解明した、本研究課題にとって非常に重要な'The Sophist’s “Suspicion and Fear”: Plato’s SOPHIST 267e8-268a9'を本年度中に公刊できなかった。したがって、本研究課題の進捗はやや遅れていると言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
Revue de philosophie ancienneに投稿中の'The Sophist’s “Suspicion and Fear”: Plato’s SOPHIST 267e8-268a9'が不掲載の場合は、別のジャーナルに投稿する。 日本西洋古典学会第74回大会(神戸大学)で6月2日、「人の理性は〈原因〉の類にほぼ属する――プラトン『フィレボス』28c6-31a4解釈」(2023年10月にカリフォルニア大学バークレイ校で口頭発表した'Vague and non-straightforward for reasons: the argument in Plato's PHILEBUS 28c6-31a4'を改訂した日本語版)を発表する。当該学会の慣例により、この発表原稿を改訂したものを『西洋古典学研究』に投稿する。また、同論文の英語版をジャーナルに投稿する。 『ピレボス』の翻訳を完成させ、できれば本年度中に光文社古典新訳文庫より刊行する。 プラトン『テアイテトス』を主題とする国際プラトン学会第14回大会(Symposium Platonicum) (マドリッド、対面式は5月5-9日、オンラインは5月19-21日)にて対面式の部で発表する権利を得るために、審査用の発表要旨(9月30日締切)を提出する。本研究課題の視点から産婆術について考察する予定。 欺かれることと関連する魂の隷属(そして自由)について考察した新プラトン主義にも視点を拡げる。これとの繋がりで Ursula Coope, FREEDOM AND RESPONSIBILITYの書評を『西洋古典学研究』に寄稿する(8月31日締切)。 本研究課題を総括すべく、来年度東北大学を会場とする国際シンポジウム開催をすべく、準備を進めている。
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