研究課題/領域番号 |
22K00029
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
秋元 ひろと 三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | カント / 因果論 / 形而上学 / 神と人間 / スアレス / ヒューム |
研究開始時の研究の概要 |
デカルト以降の近世の哲学者たちの因果論は,スアレスによって近世に伝えられたスコラの形而上学的な因果論を継承することを通じて形成されたといっても過言ではない。この流れに転機をもたらしたのはヒュームであり,彼の因果論の特徴は,因果性の形而上学から認識論へと転回を成し遂げた点,すなわち,スコラの形而上学的な因果論を批判して認識論的な因果論を展開した点にある。それではカントの場合は,どうであったのか。本研究では,スアレスにその集大成が見出されるスコラの因果論を参照してヒュームとカントの因果論を比較検討し,そうすることを通じて,ヒュームとカントの因果論の哲学史的位置づけと意義の見直しを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,スアレスにその集大成が見出されるスコラの因果論を参照して,ヒュームとカントの因果論を比較検討し,両者の哲学史的位置づけと意義の見直しを行うことである。 研究2年目である令和5年度は,前年度の前批判期カントについての研究を踏まえつつ,批判期の代表作である『純粋理性批判』や『プロレゴメナ』の読解作業を進めることによって,前批判期と批判期のカントの関係について,つぎのような研究成果を得た。 前批判期の形而上学によれば,世界の秩序は,実体間の相互依存的な結合関係として,神の知性の働きによって成立しているものである。それに対して批判期の形而上学によれば,世界の秩序は世界の側にあらかじめ成立しているものではなく,人間の知性の働きによって構成されるものである。このように二つの形而上学のあいだの隔たりは大きく,両者のあいだにはたしかに断絶が認められる。 しかし両者のあいだには連続も認められる。二つの形而上学は,世界秩序の成立根拠をどこに求めるかという課題を共有しつつ,一方はそれを神の知性の能動性に,他方はそれを人間の知性の能動性に求めている。これはカントがライプニッツ批判を徹底した結果である。前批判期のカントは,ライプニッツの予定調和説を退けつつも,世界を構成する実体間の結合の根拠を媒介者としての神に求める点では,ライプニッツ説を部分的に受け入れていた。それに対して批判期のカントは,媒介者としての神も退けて,結合の根拠を人間の知性の能動性に求めたのである。このように批判期の形而上学は,ライプニッツの予定調和説を退ける文脈を引き継いで,前批判期の形而上学の延長線上に成立したものである。ここに両者のあいだの連続が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
批判期カントの因果論の概要を,関連著作(『純粋理性批判』や『プロレゴメナ』)に即して明らかにし,前批判期と批判期のカントの関係を把握するという本年度の目的を達成し,関連する論文を執筆して発表することができた。 また次年度に計画しているヒュームとカントの比較にむけて,関連参考文献の検討作業も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,ヒュームとカントの因果論の比較検討を行う。その際に,カントの因果論は形而上学的であり,スコラ学以来の伝統的な因果論を引き継ぐという特徴をもつこと,それに対してヒュームの因果論は認識論的であり,伝統的な因果論からの離脱という特徴をもつことに着目する。 比較検討の作業は,具体的には,『純粋理性批判』『実践理性批判』『プロレゴメナ』など,ヒュームへの言及があるカントの諸著作の関連箇所の点検を通じて,カントがヒュームの因果論にどのように応答しているかを確認するとともに,もしヒュームがカントの因果論を目にしていたとすれば,ヒュームはそれにどのように応答したかを予想するという仕方で進める。
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