研究課題/領域番号 |
22K00034
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
舟場 保之 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (20379217)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | カント的共和主義 / 自由の秩序 |
研究開始時の研究の概要 |
法的体制を自由が秩序づけられている体制として理解し、そうした秩序づけられた自由を保障するものとして当該体制を正当化するという考え方は、近代の社会契約論者の時代から現代の体制論に至るまで、きわめて一般的な見解であると言える。こうした考え方は大きくふたつに分けることができる。カントに源流をもち道徳的自由に重点をおく自由主義的立場と、ルソーにさかのぼることができ政治的自由に重きをおく共和主義的立場である。両者には一長一短があるため、「カント的共和主義」(ハーバーマス)を手がかりとして、ふたつの自由をともに等しく保障できるような<自由の秩序>の構想を新たに試みることとする。
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研究実績の概要 |
本研究は、自由主義的な立場からも共和主義的な立場からも等しく距離をとって<自由の秩序>を正当化する仕方として、「カント的共和主義」の立場がもつポテンシャリティを明らかにすることを目的としている。 そのために、まず、自由主義的な立場を代表するヘッフェやケアスティングが、<自由の秩序>を構想する際に、政治的自由に対して道徳的自由を、公的自律に対して私的自律を、人民主権に対して人権を、それぞれ優先するのはなぜなのか、どのようなロジックにもとづいてこうした優先が行われるのかを考察し、それがカントの体制論にとってどのような意味をもちうるかを、とりわけカント『永遠平和のために』を中心に明らかにした。個別国家をひとつの道徳的主体として理解するような問題構成では、諸国家に共通するひとつの法を考えることは原理的に不可能であるから、諸国家はなおそれぞれが正しいと考えることを行う権利を所持したままであり、諸国家は自然状態にとどまっていることになる。こうした状況において平和を構想しようとすれば、ハーバーマスが批判的に指摘するように、「自然」の助力をあてにせざるを得なくなってしまう。 また同時に、「カント的共和主義」の代表的な主張者であるハーバーマスの体制論をそのEU論を中心に考察し、議論の特徴を明らかにした。EUという体制が正統性をもつには、2つの革新が必要であり、とりわけヨーロッパ市民と加盟国の国家市民とによる主権の分有という2つ目の革新が、理論上必要不可欠であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、自由主義的な立場からも共和主義的な立場からも等しく距離をとって<自由の秩序>を正当化する仕方として、「カント的共和主義」の立場がもつポテンシャリティを明らかにすることを目的としているが、目的を果たすためには、自由主義的な立場および共和主義的な立場のそれぞれの特徴を明らかにする必要がある。今年度は、自由主義的な立場を代表するヘッフェとケアスティングの議論を考察し、それらがカントの体制論に対してもちうる意味をカント『永遠平和のために』を中心に吟味した結果、自由主義的立場から体制を論じる場合に克服すべき課題が明確になったため。また、「カント的共和主義」を主張する代表的な論者であるハーバーマスの体制論をEU論に見出し、そこでどのような仕方で体制の正統化が果たされているかを考察することによって「カント的共和主義」の特徴の一端が明らかになり、本研究の目的を果たすうえで、貴重な成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、自由主義的な立場からも共和主義的な立場からも等しく距離をとって<自由の秩序>を正当化する仕方として、「カント的共和主義」の立場がもつポテンシャリティを明らかにすることを目的としているが、引き続き、自由主義的な立場がどのような特徴をもち、どのような体制論と結びつくことになるかを明らかにしつつ、ルソーおよびアーレントに見出すことのできる共和主義的立場のオリジナリティを明確化し、それがどのような体制論を可能にし、不可能にするのかを見定める。それと同時に、ハーバーマスによる「カント的共和主義」を考察の対象とし、ハーバーマスの論じる共和主義がもつ問題点を明るみに出すとともに、自由主義的立場および共和主義的立場からの知見を踏まえてこれを彫琢していく。
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