研究課題/領域番号 |
22K00037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
的場 千佳世 (藤井千佳世) 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 助教 (10569289)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | スピノザ / 様態 / 愛 / 短論文 / エチカ / ストア哲学 / 協働 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、伝統的に倫理学が拠り所としてきた「自律」概念や、「責任主体」に変わる新しい倫理学的主体の可能性を、スピノザ哲学体系における様態概念に探る。人間を様態とみなすスピノザの考え方は、スピノザ倫理学の貧困さとして哲学史においてしばしば批判の対象になってきた。本研究では、スピノザ哲学の生成史的研究及びストア哲学との比較研究から、スピノザの様態概念の倫理学的射程を明らかにした上で、「他者との協働」という観点からスピノザ倫理学の現代的意義について検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、スピノザ様態概念の倫理的射程を、思想生成史的研究及びストア哲学との比較によって明らかにすることである。2年目は、1年目の研究成果について整理し、鹿児島哲学会令和5年度研究会にて発表した。発表では、2022年12月と2023年3月に刊行された『スピノザ全集』III巻とV巻における新しい邦訳の特色を紹介しつつ、スピノザ初期の著作『神、そして人間とその幸福についての短論文』(以下『短論文』)と主著『エチカ』において、「変様(modificatio)」および「変状(affectio)」という概念の使用にどのような変化が生じているか整理した。また、『短論文』、デカルトの『情念論』、『エチカ』のそれぞれにおける愛の定義を比較することから、『エチカ』の愛の定義の特徴を浮き彫りにした。以上のスピノザ哲学における「変様」および「変状」概念と愛の概念の生成的研究を通して、哲学史的には、人間の自由の余地を認めない考え方として批判されてきたスピノザの様態概念を、全体に対する部分の位置づけについての考え方の刷新という観点から、倫理的に積極性をもったものとして解釈する可能性を示した。 また2023年12月に東京大学にて開催された第73回スピノザ研究会に参加し、スピノザ哲学の生成的研究や、現代フランス哲学におけるスピノザ哲学の受容に関し、専門の研究者と討論を行なった。スピノザ哲学と現代フランス哲学の交差点を新しい角度から検討し直すことは、本研究課題とも深く関連する。このテーマに関しても、文献を広く収集・整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目は1年目の研究において明らかになった点を整理し、発表した。研究計画において示した、1/スピノザ様態概念に対する批判点の整理、2/スピノザ哲学の生成史的研究、3/スピノザ哲学とストア哲学の比較研究、4/スピノザ様態概念の現代的意義という4つの研究目的のうち、2と4の研究を前進させることができた。また、1年目にできなかった、スピノザ様態概念に特化した研究を進めることができた。しかし2022年末から2023年にかけて、スピノザの著作の新しい邦訳が多く出版されたため、従来の翻訳との比較など、準備的な研究に時間が費やされた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目は、スピノザの初期思想におけるストア哲学受容の可能性について1つの解釈を提起した。2年目は、スピノザの様態概念に関し、初期思想から主著にかけての連続性/断絶に関する生成史的研究を行った。3年目は、主著『エチカ』における様態および愛の概念に関するストア哲学との比較研究を進める。スピノザ様態概念の現代的意義に関する研究も進め、両方の研究成果をまとめ、関連学会や研究会で発表を行いつつ、論文投稿を進める。また、本研究のもう一つの課題であるシモンドン研究も進め、シモンドンの科学技術と人間の関係に関する倫理学的見解を整理し、学会発表および論文としてまとめる作業を進める。
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