研究課題/領域番号 |
22K00051
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藪 敏裕 岩手大学, 教育学部, 教授 (20220212)
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研究分担者 |
劉 海宇 岩手大学, 平泉文化研究センター, 客員教授 (70649441)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 『安徽大学藏戦国竹簡(一)』 / 『詩経』 / 秦儒 / 儒教 |
研究開始時の研究の概要 |
古文系とされる『毛詩』のテキストや『毛伝』『毛序』による詩解釈が先秦から存在したことを無前提に容認し、これらの詩理解に基づいて楚簡・漢簡を読解する従来の方法を打破することを目指す。申請者は先秦の伝世文献の引用詩についての検討などから、戦国期本来の詩解釈が『毛伝』などにより一部変更されていることを明らかにしてきた。本研究は、『安徽大学藏戦国竹簡(一)』所収の詩を取り上げ、近年進展する最新の漢字研究の成果により厳密に解釈し、これを『毛伝』などの解釈と比較し、これらの解釈がどの程度先秦からの解釈によるものかを部分的に明らかにし、戦国期から漢代の『詩』の実態を明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
『安徽大学藏戦国竹簡(一)』の『詩経』には、周南・召南・秦風等の六国風が収められている。この『安大簡』には、各竹簡に通し番号が附されている。また各国風の最後にはそこに属する詩篇の篇数も書かれており、たとえば周南の最後には「周南十又一」とあり、この記述から周南が十一篇であることがわかる。また、その篇数の欠落状況から、秦風の次ぎに竹簡が発見されていない名称不明の国風があったことも推定されている。ところで、『安大簡』では秦風が周南・召南の次に置かれており現行本『詩経』とは国風の順序が異なるが、これは何を意味するのであろうか。 秦については、『荀子』彊国篇に「則其殆無儒邪」 とあるように儒者がいなかったとする説もあるが、一方『史記』によれば、秦の孝公の宰相蔡澤は儒家的な素養を持つ人であったらしく、また漢の博士となる山東出身の儒者叔孫通は一時期秦の博士であったし、漢代に『尚書』を世に出した山東出身の儒者伏生も秦の博士でもあった。さらに『尚書』秦誓が秦の穆公に言及すること、『詩経』秦風・黄鳥篇が穆公の家臣を哀憐する詩であること、『礼記』大学篇が秦誓と黄鳥篇を引用することなど既存の文献にも秦儒の活動の痕跡はある。『安大簡』『詩経』は四世紀半ばの成立とされているが、楚に伝わる以前に秦において成立したかあるいは加筆された可能性もあり、秦・孝公期の儒者の活動が傍証される。また、現行本『毛詩』が秦風を後半に置き、かつ周南・召南の次ぎに三衛風を置く理由も再考されなければならない。これらの『詩経』学上の問題について、最新の漢字研究の成果を踏まえ『安大簡』所収の 『詩経』等を読解し、この解釈を漢儒による解釈と比較することにより、戦国期の楚や秦における『詩』理解の実像を明らかにし、この『詩経』への孔子の関与如何、秦漢期における儒者の活動、『毛詩』編纂の意図などの『詩経』学史上の一端を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疑古派の創始者とされる顧頡剛により金文や『尚書』と並んで中国最古の歴史資料とされた『詩経』は、漢儒の附会や虚飾を剥ぎ取れば当時の民衆の生の心情に触れることが可能で、当時の歴史の真実に迫ることができるとされる。しかし、漢儒の附会と先秦期の事実の弁別は容易ではない 。 本研究は、新出の『安徽大学藏戦国竹簡(一)』所収の『詩経』について、近年進展する楚簡等を用いた漢字研究の成果を援用しその本文を厳密に解釈した上で、これを『毛伝』『毛序』伝世文献等の解釈と比較することにより、戦国期の『詩』 理解の実像を明らかにすることを目指す。こ れにより、一見恋愛詩に見える『詩』が後世為政者に対する賛嘆や批判とされ、また『尚書』などと同じ事件に関わるとされる原因を解明し、『詩』三百篇が編纂された時代や孔子刪詩説の当否、『毛詩』の伝来とその性質などの『詩経』学史上の重要な問題について、検討を進め儒教成立の一端を明らかにする。 令和4年度は周南と召南について、如上の方法論による読解を進めた。その成果については、本年度9月の中国清華大学における学会において公開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、『安大簡』の研究者を招聘し『安大簡』の概況及び近年の研究の進展状況を検討する研究会を実施する予定であったが、コロナのため実施することができなかった。一方、『安大簡』所収の『詩経』六国風については、令和4年度に周南・召南について検討を行った。令和5年度は秦風ほか二風を、令和6年度に残りの二風をそれぞれ取り上げ、最新の漢字研究の成果を踏まえつつ研究代表者と分担者による定期的な輪読会により可能な限り厳密に読解する予定である。この際には、『安大簡』以外の他の楚簡が引用する『詩』や『毛伝』『毛序』等をも取り上げ、検討する。令和7年度には、この『安大簡』読解を踏まえて、この成果を『毛伝』等の傳世文献の詩理解と比較することにより、その差異の理由を検討し、戦国期から秦漢期の『詩』解釈の実態と『詩経』 学上の思想史的意味を明らかにするとともに、秦が『安大簡』の『詩経』の成立にどの程度関与しているかについても検討する。
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