研究課題/領域番号 |
22K00059
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
石川 美恵 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (80385963)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | チベット仏教 / 現観荘厳論 / 般若学 / パトゥル・リンポチェ / 超宗派 / 語義解釈 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀のチベット仏教における超宗派(リメー)運動の実践家であるパトゥル・リンポチェ(1808-1887。以下、パトゥルと略称)の、三種の『現観荘厳論』注について校訂・和訳並びに術語の収集を行う。ゾクチェン・マスターとして名高いパトゥルだが、『現観荘厳論』の解釈についてはゲルク派宗祖のツォンカパの影響が大きい。本研究では両者の解釈を比較することで、パトゥルの解釈をチベットの学的系統の中に位置付け、修行道についての異同を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、19世紀のチべットで興ったリメー(超宗派運動)の実践家であり、ゾクチェンの加行をわかりやすく解説した『クンサン・ラマの教え』の著者で遊行の成就者でもあったパトゥル・リンポチェ(以下「パトゥル」と略称)、即ちオギェン・ジクメ・チューキワンポの、ハリバドラによる『現観荘厳論 小註』の3種の複註のうち、特に『語義解釈』を中心に、(1)テキストデータを入力し、(2)校訂するとともに、(3)和訳を通して、(4)本文に織り込まれた詳細な内容見出し(科段)と術語を抽出した上で、(5)パトゥルが手本としたツォンカパの解釈と比較し、異同を整理することを目的とする。テキスト校訂に用いる版として2点の洋装本と1点の写本(BDRC掲載のニンマ・スンラプ版)を得ているが、本年度は公益財団法人・東洋文庫所蔵の河口慧海将来写本、昨年度末に入手した、現パトゥル・リンポチェ(ゾクチェン・ラニャク・パトゥル・リンポチェ)監修による最新版の全集(2020年発行)も加えた計5点の校訂作業を進め、これを完了した。 パトゥルの著作集の全体像の把捉は未着手の分野であるため、パトゥルの思想を理解する基礎作業として、最新版の全集にも収載されているパトゥルの弟子のジュ・ミパムによる著作目録の和訳を行うとともに、現在入手しうる三種の全集(ニンマ・スンラプ版、四川版、最新版。三種とも『語義解釈』を含む)を比較し、収載する著作の有無と掲載順の異同をページ(フォリオ)数を添えてリスト化した。ミパムによるパトゥルの著作集の構成は、19世紀のニンマ派およびリメー(超宗派運動)における教義と修行の階梯を伝えており、その思想の一端を明らかにした。 『語義解釈』の和訳に関しても、全体の5/6を終えており、今後はこの和訳を完了するとともに、パトゥルの独自の解釈とツォンカパの影響を抽出・整理していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 『小註 語義解釈』の、入手した5点によるテキスト校訂をすべて終え、見直し作業に取り掛かっている。和訳も5/6完了しており、予定よりやや遅れているが、定期的に研究協力を得られるインフォーマントだけでなく、現パトゥル・リンポチェやニンマ派の学匠からも助言を得られる環境も整い、必要に応じて教示を受けながら進めているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に完了した校訂テキストを用い、次年度には『小註 語義解釈』の和訳を終え、成果物を完成させる予定である。引き続き定期的にインフォーマントに助言を受けるだけでなく、現パトゥル・リンポチェやニンマ派の高僧達に対する質疑応答の結果も、テキスト校訂と和訳に反映させていく。これらをもとに術語の抽出を行い、術語ごとに整理する作業も進める予定である。
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